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    2009

01.23

「草祭」恒川光太郎

草祭草祭
(2008/11)
恒川 光太郎

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美奥という地が舞台。その地には、隣り合った異世界があった。「けものはら」「屋根猩猩(しょうじょう)」「くさのゆめがたり」「天化の宿」「朝の朧町(おぼろ)」の五編を収録。

「けものはら」
春の失踪は早くも教室で噂になっていた。雄也は誰も見ていないことを確認して、四年ぶりに水路へと降りていく。“けものはら”はまだあるのだろうか? 周囲を囲む崖。生い茂る雑草。注連縄の石。野原は変わらずにそこにあった。雄也はあの日の黒い化け物のことを思い出す。あれは現実だったのか。そのとき、背後から唐突に名前を呼ばれた。春だった。そして、彼を捨てた母親の死体が横たわっていた。

「屋根猩猩」
美和が怪しい少年に出会ったのは高校からの帰り道。男の子は猫のように屋根に駆け上がり、視界から消えた。数日後、路地の奥を猫が一匹横切るのが見えた。続いて、猫よりも大きな赤い毛に覆われた獣がさりげなくすっと横切った。振り向くと例の男の子が立っていた。そのタカヒロが案内したのは、瓦屋根の上。猩猩の載った屋根が並んでいた。タカヒロは、夢枕に猩猩が現れて以来、この地区で守り神をやっているという。

「くさのゆめがたり」
幼少の頃より、関心事は人よりも植物だった。叔父は山歩きの達人で、幼いころからよく一緒に山に入って手ほどきを受けた。毒や薬について教えてくれたのも叔父だった。ある夏、酒に毒を入れて叔父を殺した。僧侶の名はリンドウといった。私たちは叔父の死体を、庵のそばの花畑に埋め、リンドウの故郷へ落ち着いた。リンドウの娘、絹代を深く愛し、絹代の夫も、娘の花梨も深く愛した。その絹代一家が、山賊に襲われた。

「天化の宿」
家は冷え切っていた。友達のアミさんの最後の声が脳裏に甦る。飛んで戻ってくるまで、そこで待っていて――。それは線路だった。秘密の気配のようなものに誘われ、いつのまにか線路沿いに歩きはじめていた。その先に、着物姿の男の子が二人立っていた。双子に導かれたのは、クトキの館。苦しみを解くと書いて苦解きという。人間は、生きているときっと苦しくなる。苦しみが、心に根をはるようなものなら、苦解きが必要らしい。

「朝の朧町」
長船さんと一緒に暮らすようになって四年目。実は俺は町を持っている。その町に、行ってみる? 当然、最初は冗談だと思っていた。菜の花畑を私たちは歩いた。自分の影を見ると二つあった。長船さんの影も二つ。こんなところにこんな町があるとは知らなかった。誰もいなかった。朧な影の町に入り込んでいた。長船さんが子供の頃に岩棚の上で見つけた碧い珠。珠の中には青空があった。その下には町。長船さんの町。


幻想的で透明感あふれる文章。哀しさや切なさ、そして人の生々しさが残酷であり、反対に美しい世界でもある。現世と異世界の境界を越えるのは、心に闇を抱えている者なのか。妖しい気配に心の闇を委ねてしまえば、心地よく取り込まれてゆく。そこに留まることを選んだ者もいれば、心を強くして引き帰す者もいる。個人的には、「屋根猩々」「くさのゆめものがたり」「天かの宿」の三作品が良かった。読んだときの情感を大事にしたいので、個々の感想はあえてせず。あしからず。

作品とは別のことだけれど、この作家の作品は、寒い頃ばかりに読んでいるような気が…。

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恒川光太郎
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comments

美奥、不思議な町でしたね。
オロチバナを見てみたいって思いました。

なな:2009/01/24(土) 10:34 | URL | [編集]

ななさん
美奥は不思議の宝庫でしたね。
自分は猩猩を見つけたくなりました。
そして屋根上の散歩がした~い。

しんちゃん:2009/01/24(土) 17:59 | URL | [編集]

しんちゃん☆こんばんは
遠くから見ている時にはどうってことない場所だったのに、実際に行ってみるとまったく違うことってありますよね。
不思議な、だからこそ足を踏み入れてみたい場所に心惹かれてしまいます。
わたしの美奥はどこにあるのかしら?

Roko:2009/01/25(日) 23:26 | URL | [編集]

Rokoさん、こんにちは。
一話目を読んだ時は、足を踏み入れたくない場所でした。
だけど、読み進めると、確かに心惹かれてしまいます。
自分には戻ってこれる意志の強さがあるかな~^^;

しんちゃん:2009/01/26(月) 15:29 | URL | [編集]

これまでの作品の中では、ちょっと弱かった気がします。
といってもただ私が全体像を掴み取れなかったってだけなんですけど。
美奥、どこかで誰かが繋がっているのは分かっていながら、「天化の宿」と「朝の朧町」が苦手でした。
「くさのゆめがたり」は好きでした。

じゃじゃまま:2009/02/05(木) 13:29 | URL | [編集]

じゃじゃままさん
弱かったですか?短篇だからそう感じたのかな。
自分は問題なく楽しむことができましたよ。
本を読みつつ、表紙背表紙を見て。

しんちゃん:2009/02/05(木) 19:57 | URL | [編集]

不思議な世界に気づくと取り込まれてました。
楽しい読書時間でした。
そして私も屋根の上を歩く少年に心惹かれました。ってかその行為に??

ちきちき:2009/02/06(金) 23:19 | URL | [編集]

ちきちきさん
屋根の上を歩く少年と、その行為にもです(笑)
子供の頃に登って遊ばなかったですか^^;

しんちゃん:2009/02/07(土) 19:12 | URL | [編集]

そういやあそうですよね。晩秋から冬にかけていつも読んでいるような。なんとなく恒川さんの本には夏の鮮やかさは似合わないような気も……。沖縄在住らしいのに。不思議な感じですね。

-:2009/02/22(日) 00:21 | URL | [編集]

たまねぎさん
夏に読むホラーという作品でもありませんが、寒いときに読む作品だとも。
沖縄在住は今回はじめて知りました。
前から著者紹介に載っていましたっけ?

しんちゃん:2009/02/22(日) 19:34 | URL | [編集]

猩猩が見てみた~い♪でも高所恐怖症だから屋根の上の散歩は無理そう。(笑)
どれも好みだったけど「くさのゆめがたり」の印象が強いかなぁ~?
「天化の宿」のゲームもやってみたいけど怖いなぁ・・・(^^;ゞ
こういう雰囲気の作品とっても好みでした。(^^)

板栗香:2009/04/03(金) 13:19 | URL | [編集]

板栗香さん
ウィキペディアに画像がありました。
これを見たらあまり見たくないかも^^;

それぞれに違う味があってお得な作品でしたね。

しんちゃん:2009/04/03(金) 19:24 | URL | [編集]

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