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    2009

01.30

「オリンピックの身代金」奥田英朗

オリンピックの身代金オリンピックの身代金
(2008/11/28)
奥田 英朗

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昭和三十九年。米軍の士官宿舎が昨年日本に返還され、五輪選手村として使用するため、辺り一帯に舗装道路が走るようになった。代々木総合体育館は九割完成。渋谷公会堂とガラス張りの区役所も完成した。東京に初めてできた、緑と近代建築が居並ぶ風景だ。この通りを自分の車で走るのが、須賀忠の目下のお気に入りだった。赤いボディのホンダS600が千駄ヶ谷の自宅に届いたとき、警察官僚の父親はしばし絶句。旧華族の母はモダンガールで、忠は母親の影響を受けたと、父は決めつけた。兄は大蔵省の役人。姉は外交官の妻。最年少ゆえに甘やかされて育った忠は、テレビ局の制作部に配属され、舶来文化に詳しい若手局員として重宝がられている。

東京オリンピックまであと二ヶ月。成功を望まない国民は一人としていない。今年になってから世間はオリンピック一色だった。敗戦で打ちのめされた日本が、ようやく世界に認められ、一等国の仲間入りを果たそうとしている。あれから十九年、首都東京は完全に再生した。そんななか、警視総監宛に一通の封書が届いた。オリンピックのカイサイをボウガイします。その二日後、オリンピック最高警備幕僚長、つまり五輪警備の実質的な責任者である須賀警務部長宅がダイナマイトにより爆破された。その一週間後、今度は警察学校がまたもや爆破された。箝口令が敷かれた中で、捜査一課の落合昌夫は、公安部が指揮する特別捜査本部に召集された。

島崎国男は、東大の大学院生でマルクスを学び、資本主義が持つ非合理性を理解できるのは労働者階級しかないと、労働が知りたくて、出稼ぎ中の兄を亡くした現場で肉体労働を始めた。この国の労働者たちは我慢することに慣れきっていた。人権という概念すら持っていない。無理をしてでも先進国を装いたい国側にとっては、願ってもない羊たちだろう。そうした弱者からとことん搾取するのが資本主義のピラミッドなのだと、現実を日々突きつけられる。しかもオリンピック開催を口実に、東京はますます特権的になろうとしている。田舎は貧しく、東京だけが富と繁栄を享受するなんて、断じて許されない。こうして彼は、オリンピックを人質にして、身代金をいただこうと国家や警察と対峙することにした。

テロ犯となる島崎国男、彼を追う刑事の落合昌夫、島崎と大学でクラスが一緒だった須賀忠、といった三人の目線で描かれた「邪魔」「最悪」の系譜を行く超大型サスペンス。テロへと走る犯人の思考はまったく理解できないが、それでもこれは面白かった。その犯人を追う警察にしても刑事と公安が対立し、独自に追いかける元同級生は実家を爆破されている。事件の始まりは静かで、その中心にいるのは島崎でその他の人物たちの背景もしっかりと書かれているが、そういった反面で、ストーリーはなかなか遅々と進まない。だけど、気がつくと物語の世界に引き込まれていた。それぞれの人間ドラマがしっかりしているのだ。

そしてオリンピックというお祭りの裏側で、そのしわ寄せを食いながらも立ち上がることを知らない最底辺にいる労働者たち。そこら辺は勤労勤勉といわれる日本人らしいとは思うが、ちょっと大人しすぎるのは今も昔と変わりはない。かといって、権力に立ち向かうぞ、とそこいらにダイナマイトを仕掛けられると迷惑この上ない。それに反権力のはずが金銭まで要求するのはヒロポンで頭がいかれてしまったのか。そこに少々疑問を感じるのは単に書ききれていないのか、それとも頭がよくてもネジが一本抜けた人物にわざとしたのか、そこは自分には読み取れなかった。テロ犯となる島崎の内面がもっと描かれていると、もう一段上に行く作品だと思った。


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奥田

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comments

華やかなオリンピックの裏側で、過酷な労働に携わっていた人もいたんだなぁ~と気づかなかったところに気づかされた作品でもありました。
島崎と一緒に行動する老人(名前忘れました 汗)が良かったです。だから、最後の叫びにはぐっと来ちゃいました。

エビノート:2009/02/02(月) 20:09 | URL | [編集]

エビノートさん
調べたところ、老人の名前は村田でした。
ちょっとした盲点を突いてきた作品でしたね。
でも流行のプロレタリアは空回り気味に思えました。
個人的には、ヒロポンもちょっと・・・^^;

しんちゃん:2009/02/04(水) 17:18 | URL | [編集]

金銭の要求はなんで?と思いました。
一緒に行動を共にすることになった村田も嫌いではないのですが
金銭とヒロポンから余り好きにはなれず・・・。
この2人が父と子のようにも見えなかったので、疑問は残ります。

Yuki:2009/03/22(日) 22:57 | URL | [編集]

Yukiさん
なんで?ですよね。村田老人のためでしょうか。
それにヒロポン中毒も好きになれなかったです。
だけど、玄人受けするのか、吉川英治文学賞に^^;

しんちゃん:2009/03/23(月) 18:21 | URL | [編集]

こんにちは。
都心部と地方の格差に驚きました。
でもなぜ島崎が?っていうのは私も読みきれなくて
ずっとなぜ?なぜ?って思ってました。

なな:2009/03/30(月) 06:38 | URL | [編集]

ななさん、こんばんは。
島崎の行動心理は分かんないですよね。
簡単にテロ犯の心理なんて分からないでしょうが。
だけど、もっと人物像を掘り下げて欲しいと思いました。

しんちゃん:2009/03/30(月) 19:59 | URL | [編集]

田舎しか知らなかったオレは、あの当時の東京は外国だと思ってました。

それだけ、格差が大きかったんですねぇ。

まさにそんな当時の心情をうまく表現していると思います。

じゅずじ:2009/04/01(水) 13:59 | URL | [編集]

じゅずじさん、こんにちは。
こちらはまだ、影も形もありませんでした。
だから、知らないことの知識としては面白かったです。
でもヒロポンがちょっと・・・。どうやら自分は今の人みたいです。

しんちゃん:2009/04/01(水) 17:44 | URL | [編集]

兄の代りに労働者っていうのは彼にしか分からない動機だけど、その中で島崎がテロリストになっていく様子が伝わってきました。私もストーリー遅々として進まないことにイライラしてたんですけど、それこそが島崎の変化に大事なところだったんだと。
ヒロポンとか、あの当時、肉体を酷使していた人たちや、敗戦後這い上がってきた日本を思えば、時代背景としてすんなりと私は受け入れてました。島崎とはまったく違う人間だけど、この作品はよく書かれていて、納得してしまいました。

じゃじゃまま:2009/05/12(火) 14:35 | URL | [編集]

じゃじゃままさん
自分にとって島崎は最後まで理解できない人でした。
だから感情移入できなくてイマイチ乗れませんでした。
戦後の復興自体がピンと来ないし、ヒロポンの位置づけが分かんない。
なんたってガンダム世代だから^^;

しんちゃん:2009/05/12(火) 19:52 | URL | [編集]

こんばんわ。TBさせていただきました。
私も、島崎の内面は分からなかったです。
真面目なんですよね、だからこんな事を考えてしまった。
もったいないなぁと思いながら読んでいました。

苗坊:2010/02/23(火) 21:15 | URL | [編集]

苗坊さん、こんばんは。
間違っている方向に進むことはあります。
その時は反省をして、それを糧にすればいいと思います。
でも本書の場合、なぜ島崎は間違ってしまったのか?
読者の想像に委ねるのもいいですけど、もう少し親切でも良かったような~。

しんちゃん:2010/02/27(土) 21:58 | URL | [編集]

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