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    2009

02.23

「ピアニッシシモ」梨屋アリエ

ピアニッシシモ (講談社文庫)ピアニッシシモ (講談社文庫)
(2007/01/12)
梨屋 アリエ

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一方通行の狭い路地に、トラックがすっぽり停車していた。吉野松葉のアパートは、トラックの先の辻を曲がってすぐのところだ。部屋に入ると、路地のトラックが遠ざかっていく音がした。松葉の部屋の窓は、時子さんの家の北向きのキッチンに面している。松葉は、時子さんの家の音を聞くのが好きだった。家にひとりきりの夕暮れに、ここに人がいますよと遠慮がちにコトンと響く隣家の生活の音。そして、やさしいあの音色。

松葉は、あの音がもれてこないかと、耳をそばたてた。いやな予感がした。作業員が運び出した大きな不格好な荷物に、ひとつだけ心当たりがある。質素でこざっぱりした時子さんの家の中で、唯一大きな顔をして威張っていたのがグランドピアノだった。さっきのトラックはピアノの搬出作業をしていたのに違いない。松葉の予感は、外れていなかった。松葉はときどき耳にしていた時子さんのピアノの音が好きだったのだ。

悪趣味だとわかっていても松葉はそのピアノの行方を追い、新しい持ち主の紗英と出会う。紗英は、自信家で高慢。しゃべらなければ、絵画みたいにきれいな子だ。それに特別な存在だと思わせる雰囲気がある紗英は、才能豊かなピアニストの卵だった。一台のピアノが、結びつけた松葉と紗英。同い年でも、性格も家庭環境もまるで違うふたりの物語。

松葉のおとうさんは出世よりも趣味に熱心なサラリーマンで、いわゆる食玩コレクター。おかあさんは雑誌やテレビのランキングをチェックするのが大好きで、ブランドにはうるさい。そんなふたりの娘の松葉は、飛びぬけて出来がよくも悪くもなく、自慢できるような趣味や特技がないので本人もパッとしないと思っている。

そんなとりえのない松葉にとって、はやくから能力を発揮している人はうらやましい。自信家で気まぐれな紗英という人は、大人の顔色をうかがったり媚びたりせずに、自分の直感を信じて行動する。協調と同調のなかで生きてきた松葉には、紗英のきっぱりした態度は快く、怖さと同時にひかれる部分があった。

理想の大人とは思えない親や大人たち。そんな不満ある世界で暮らしている少女ふたり。自分に絶対の自信を持っている紗英は、やがて現実から逃げ出してしまい、自分の個性に自信のない松葉は、紗英への一方的な思いが通じなくなったとき、自分じゃない何かを演じて過ごすようになる。そこで少女はあることを経験し、幼い頃には楽しい世界に住んでいたことを思い出す。そこで得た結論は、正しい間違いは別にして、それが少女の等身大といえる姿ではないでしょうか。第33回日本児童文芸家協会新人賞受賞作。

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