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    2009

03.04

「残される者たちへ」小路幸也

残される者たちへ残される者たちへ
(2008/12/18)
小路 幸也

商品詳細を見る

デザイン事務所を共同経営している川方準一のもとに、同窓会の招待状が届いた。もう既に廃校になってしまった母校の小学校。生まれてから小学校を卒業する手前まで、その小学校を敷地内に含む〈方葉野団地〉が僕の町で、世界のすべてだった。だが、苦い思いも、完全には消えていない。六年生の夏。父さんと初めて野球をした日に、父さんは僕と母さんを置いて失踪した。その夏が、生まれ育ったあの団地で過ごした最後の夏になった。

屈託のない笑顔。久しぶりに会った同級生への優しく温かいまなざし。幹事代表の押田明人は好意を身体全身で表現していた。押田明人。皆との会話からもその男が同じクラスだったのがわかった。けれども、記憶の中に、押田明人はいなかった。その名前も、顔も、口調も、笑顔も、なにひとつ覚えがない。一緒の団地でお向かいさんとして過ごしていたはずの押田明人。僕がどうかしているんだろうか。どういうことなんだ?

準一は、団地の幼なじみで精神科医になった藤間未香に、押田のことを考えるとパニックになること、彼だけがまったく記憶にないことを打ち明ける。未香は、現在〈方葉野団地〉に住む十四歳の芳野みつきの診療も行っていた。みつきは、自分を庇って死んだ〈母親の記憶〉を思いだし、それを懐かしいと感じている自分がいた。そして美香もまた、閉所恐怖症になった根っこにあるのが、団地だったような気がするという。

何がどう繋がっているのかはさっぱりわからない。けれども、偶然が何かを全て団地に集めようとしているような気がしてならない。覚えていない同級生も、準一も、未香も、みつきも、何十年ぶりかの同窓会も。何もかもが、〈方葉野団地〉へと向かっている。団地へ行け、と何かが言っているのか、呼んでいるのか。団地の探索に乗り出した準一と美香の二人は、そこで想像もしなかった“のこされるもの”に遭遇する。

デビュー作と同じ系譜を行くファンタジックな作品。つまり、同じであって、同じでないが存在する世界。その違いにざわざわを感じさせ、その正体に興味を抱かせつつ読ませていく作品になっている。また、関係のない人からすれば団地とは迷路のような異様な場所である。住んでいる人からすればそこは生活の場であるが、外の人が一歩入ると、そこは自分の環境とは違う異世界のような気がするものだ。

こういう感覚は大人にはないかもしれない。だが、自分の子供時代を思い出すと、そういう感覚はあった。それは、ひとつのコミュニティに紛れ込んだ異分子としての違和感だったのか。そういった、違うという想像力と、人智を超えた違うものが融合されて、思わぬ方向で団地と関係していく。この世には、人の目に見えないだけで、違うものや異世界があるのかもしれない。そういう不思議を突き詰めず、分からないものは分からないままにするからこそ、そこに面白味があるのかもしれない。

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小路幸也
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comments

こんばんは。
本当にわからないものはわからないまま。
そういう読書もたまにはいいですよね。

なな:2009/03/05(木) 21:27 | URL | [編集]

ななさん、こんばんは。
あれこれと説明されると、醒めてしまう自分がいます。
この終わり方は自分向きでした。

しんちゃん:2009/03/06(金) 18:07 | URL | [編集]

ああ、確かにあれこれ説明ないより、これでいいの!的な進め方もありますね。
私はタイムマシン系がそうかな。ここのポイントは時空間の入り口です!で終わった方が納得。時間のねじれがどうとかこうとか言われると、ますます訳分からなくなるので。
この小説は、ああ、そうでしたかって感じで。(まさかSFだと思ってなかったので)

じゃじゃまま:2009/04/04(土) 16:46 | URL | [編集]

じゃじゃままさん
SF設定の説明の是非は好みが別れますよね。
描けてないという人もいれば、いらんという自分タイプもいます。
自分は基本、SFが苦手な人だし(ぼそっ)

しんちゃん:2009/04/04(土) 19:50 | URL | [編集]

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『残される者たちへ』 小路幸也


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