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    2009

03.05

「天国はまだ遠く」瀬尾まいこ

天国はまだ遠く (新潮文庫)天国はまだ遠く (新潮文庫)
(2006/10)
瀬尾 まいこ

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主人公は二十三歳の千鶴。仕事も人間関係もうまくいかず、あせればあせるほど、追い込まれていった。毎日がだるい。身体の調子の悪さは、千鶴をどんどん落ち込ませた。何も楽しいことはなく、いつもだるかった。そんな毎日が延々と続いていた。早く解放されたいって、心身共に訴えていた。行く場所は決まっていた。誰も私を知っている人がいないところ。遠い海と濃い空を持つ日本海地方。夜の深さ。冬を前にした寒さ。北の気候は思っていたとおりだ。死ぬのには、ある種の勢いが必要だ。寒さ、暗さ、厳しさ。そういう空気が、私の背中を押してくれるだろう。

辿り着いたのは木屋谷という海のそばにある山奥の集落。民宿たむらの中から出てきたのは、まだ若い男だった。この男一人で暮らしているのだろうか。他に人がいる気配はなかった。めったに客は来ないので、どうしたらいいのかわからない、と言いつつ、男は部屋へ案内してくれた。そうだ。泊まれればいい。一晩のことだ。眠れる場所があれば、それでいいのだ。千鶴は睡眠薬を飲んで、すとんと眠りに落ちた。だが、目覚めは爽快。薬の影響はどこにもなく、爆睡したあとに訪れたのは、いつもよりも元気で、今までにないくらいにのんきな自分。そう、しくじってしまった。死ねなかったのだ。

自殺を諦めた千鶴は、毎日を同じように過ごした。朝、早く起き、男の用意した食事を食べ、自分の物を洗濯して、外へ出る。集落の周りをゆっくり回り、おばあさんにあいさつして、閉まったままの有機栽培のパン屋を覗く。集落を一回りしたら、原っぱでこれからのことを考えようと試みる。死ぬ気もなければ、何かを始める気も起きない。民宿の大雑把な田村さんとの交流を通し、そして、千鶴は本来の自分を取り戻していく。だが、どんなに居心地の良い場所でも、自分の居場所がここにないことに、千鶴は気づいてしまう。そして、自分の日常をちゃんと作るために、彼女は街へ帰る。

鬱々とした冒頭で嫌な気がしたが、これは想像したそういうお話ではなかった。日々の生活に疲れた主人公が、田村さんやのどかな自然を通して、ゆっくりと癒されていくという物語である。いい作品だ。特に個性的な田村さんには何度も笑わせられた。いい加減で、大雑把で、おとぼけで、適当で、吉幾三が好きで、それでいてさり気なく優しい。こんな人がそばにいたら、そりゃあ癒されるでしょ。また、のんきな主人公にも笑ってしまう。そんな二人のユーモアあるやり取りを楽しみつつ、それだけで終わらずに、自分の日常と向き合おうとする姿に勇気も感じさせられる。こういう人生の休憩も、本当に本当に疲れたら、ありかもしれない。そう思えた素敵な一冊でした。

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瀬尾まいこ
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comments

癒される、いいお話でしたね。
わたしだったらそのまま残ります。(^^)
千鶴が出発する時の田村さんのテレたぶっきらぼうな態度が切なかったです。
その後千鶴はまた民宿たむらを訪れるんでしょうね。
そのときはなんとかなってほしいなと思わずにいられません。

日月:2009/03/15(日) 00:29 | URL | [編集]

日月さん
自分も残ってしまいそうな・・・(笑)
個人的にですが、恋に発展しなかったところを評価したいです。
もしも好きうんぬんとなっていたら平凡な作品になっていたと思います。
二人には客と亭主の関係をくずさないで欲しいな~。

しんちゃん:2009/03/15(日) 20:17 | URL | [編集]

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