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    2009

03.14

「鬼の跫音」道尾秀介

鬼の跫音鬼の跫音
(2009/01/31)
道尾 秀介

商品詳細を見る

「鈴虫」「ケモノ」「よいぎつね」「箱詰めの文字」「冬の鬼」「悪意の顔」の六編を収録した短編集。

「鈴虫」
私と杏子とSは、大学時代の友人同士だった。私は杏子のことが好きだった。杏子とSはつきあうようになり、私は黒い思いを抱えながら、湿った日々を過ごしていた。そして明確な殺意が生まれた。私はSの死体を穴の底に埋めた。鈴虫の声に気がついたのは、Sの死体にすっかり土をかけ終えたときのことだった。私の犯罪を知っているのは、あのときの鈴虫だけだ。

「ケモノ」
祖母と父と母と妹。僕だけが、できそこないの穀潰しの駄目人間で、本当の意味で家族の一員ではなかった。刑務所作業製品だという椅子の脚がぽきりと折れてしまった。その脚の断面に、何か彫ってある。「父は屍 母は大 我が妹よ 後悔はない Sという名前」Sの名前でヒットしたインターネットのサイトは、猟奇事件の情報を集めたものがほとんどだった。

「よいぎつね」
逃げるようにしてこの街を出ていってから、もう二十年も経つのだ。私は怖かった。あの人の甲高い悲鳴。冷たい記憶の手が心臓を摑み上げようとする。私たちは仲間四人で、度胸試しと称して、小さな悪事を働いていた。首謀者は大抵Sだった。女を一人、陵辱する。それが、今回私たちが思いついた度胸試しだった。次はおまえだ。私は、わかった、とうなずいた。

「箱詰めの文字」
僕は書きかけの原稿を机の上に広げたまま玄関へと向かった。青年はいきなり僕に向かって深々と頭を下げた。ふた月前の泥棒は自分です。怖くて、中身には指一本触れていません。招き猫の貯金箱を青年から手渡された。しかしいかんせん、僕はこの招き猫に見覚えがない。これを僕の押入れから盗んだのだという。貯金箱を開けてみると、一枚のメモが入っていた。瞬間、僕の思考は停止した。

「冬の鬼」
神社へ行き、祈願成就した達磨を火にくべた。父の工場が焼け、併設されていた家屋敷が焼け、家族を失い、縁者もなく、一人きりになって途方に暮れていた私を見つけてくれた。Sは私のことを愛していると言ってくれた。小さい頃から私が好きで、私だけを好きで、いまでも好きなのだと言ってくれた。そして、私はこの家に来た。持ってきたのは、土地を売った現金と、あの達磨だった。

「悪意の顔」
Sが僕を攻撃しはじめたのは、今年の春の終わりからだ。Sはみんなに嫌われていた。Sのお母さんが死んだとき、僕はSが可哀相だと思った。慰めたかった。僕もお父さんがいないから、わかるよ――。Sが僕を攻撃しはじめたのは、その翌日からだった。その女の人は僕をじっと見ていた。うちに来れば、助けてあげる。言い終えるなり、女の人は玄関の引き戸の奥へ消えていく。誰かのことを、怖がっているのね?見えるのよ。


謎の人物Sが全編に登場し、不幸を予感させるカラスが現れたとき、淡々と語られた世界は恐怖へと一変し、主人公を奈落の底へと突き落とす。そう、物語はすべて負の方向へ向かっていく。そういう作品なので、読み手によって賛否は別れそう。自分は好きだった。叙述的な「鈴虫」で世界観引き込まれ、技巧に勝る「ケモノ」のラストで衝撃を受け、幻想に満ちた「よいぎつね」ではそうきたかと頷き、狂気溢れる「箱詰めの文字」では期待通りの展開に満足し、日記を過去に遡る「冬の鬼」のラストでは痺れ、最後の「悪意の顔」では暗転するラストにままならない思いを。長編にある「やられた感」はない。でも黒好きの黒っ子にはアリだった。

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道尾秀介
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comments

しんちゃん、こんにちは!

私はこの作品が初道尾作品でしたがすっごく好きな雰囲気で大満足でした。
不気味に淡々と負の方向へ進む様子がたまりません。
何よりも「ケモノ」が好き。

長編作品もこれから楽しみに読みます~(*^-^*)

リサ:2009/03/15(日) 14:48 | URL | [編集]

リサさん、こんばんは。
「ケモノ」のラストには意表を付かれました。
それを感じさせない技巧はすごかったですね。
「箱詰めの文字」と共に好きな作品でした。

しんちゃん:2009/03/15(日) 20:20 | URL | [編集]

「ケモノ」のラストは衝撃でしたね!青年の家の中の様子を想像したらやり切れなくなりました。
最後の「悪意の顔」も、結局どっちだったんだ?と考えると、ズシンと胸が重くなります。もしも女性の狂言だったとしたら、Sと少年の友情って?Sの本心は?って思うと、怖いです。

じゃじゃまま:2009/06/05(金) 23:09 | URL | [編集]

じゃじゃままさん
「ケモノ」のラストを受け入れてしまう自分がいました。やっちゃったか、と。
「悪意の顔」はぞくぞくしました。でもその一方で、逃げずに自分で立ち向かえよ、とも思いました。
気が強いんですよね。自分。欠点だと判ってます^^;

しんちゃん:2009/06/06(土) 22:09 | URL | [編集]

しんちゃんさん、こんにちは!
私にとっては、これが最初の道尾作品でした。とても面白くて、気に入っちゃいました。中学生の子供もおもしろい~って、なかなか楽しめたみたいです。

これは短編集ということで、道尾さんは長編の方が真骨頂なのでしょうか?
今、他の本もリクエスト待ち中なのですが、楽しみです。

latifa:2009/09/12(土) 15:04 | URL | [編集]

latifaさん、こんばんは。
これが最初ってある意味すごいかも。
一番、道尾っぽくない作品だと思います。
真骨頂はやはり長編でしょう。
今や伊坂と並ぶトリックスターですから。

しんちゃん:2009/09/12(土) 20:24 | URL | [編集]

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『鬼の跫音』道尾秀介


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