--

--.--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

スポンサー広告
トラックバック(-)  コメント(-) 

    2009

05.04

「うつくしい人」西加奈子

うつくしい人うつくしい人
(2009/02)
西 加奈子

商品詳細を見る

蒔田百合は、他人の苛立ちに敏感で、少しでもそれを感じ取ると、萎縮する。ほとんど恐怖で泣きそうになる。その日、気がつくと、コピー機の前で泣き崩れていた。オフィスで泣いたその日から、狂乱の日々だった。会社は辞めた。部屋にひとりでいると、心がしんとした。私は病気ではない、正常だ、そう自分に言い聞かせて、ほとんど大声でそう言って、涙を流し、またベッドに潜る。そんな毎日だった。

両親には会社を辞めたことを知らせなかった。彼らの声は聞きたくなかったからだ。家には、そこから一歩も出ない姉がいる。十八のときから、ずっと。私には姉の血が流れている。そのことを考えるのが、一番の恐怖だった。それを思うのが嫌で、姉と正反対の生き方をしてきた。これでは姉と同じだ。百合は強烈な危機感でもって、旅行に行くことを思い立った。

訪れたのは瀬戸内海の島に立つ新しいリゾートホテル。そのホテルの地下一階には図書室があった。椅子と机が並んでおり、壁には天井までの本棚、そこにはたくさんの本が並べられている。美術書、建築書などもあれば、日本の小説や、外国のペーパーバックまである。共通しているのが、どれも汚れた、中古の本だということだ。まるで、本の墓場のようだ。そこは宿泊客が置いていく様々な本が収められた図書室だった。

そのホテルで出会ったのは、冴えないがゆえに百合を安心させるバーテンダー坂崎と、お金と時間が余っている金髪のドイツ人のマティアス。離島にそこしかないホテルで不思議に近づく三人の距離。百合は、周りのするようにし、周囲から浮かないように、社会からはみ出ないように、普通の生活を送る努力をしていた。どことなく似ていた三人は、マティアスの希望で図書室の本に挟まっていたという一枚の写真を探すことになった。

人の眼って気になるものだけれど、自分が気に病むほど人は自分のことを見てない。でもやはり気になってしまう。このヒロインは、鬱々して、びくびくしている。きょどっている。普通でいようとこれまでずっと演じていたことに疲れ、無駄な自意識と自己嫌悪にさいなまされている。読んでいると、とんでもなくしんどい女だ。その彼女の中には、甘えることができたかつての美しい姉と、社会から逸脱した今の姉の両方がくすぶっていた。

彼女は、自分は病気じゃないと言い続けている。でも読者からすれば完全な鬱に見えてしまう。そんな彼女は、奇妙な二人と出会い、自分が何であるか、なんてどうでもよくなる気がしていく。そして、ここには居ない姉とも向き合うことになる。彼女に纏わりついた灰色がかったもやもやが晴れたとき、自分にとって何が大切なものだったのかが見えてくる。

何事も思いつめると良くない。たまには暴飲暴食して、子供のようにはしゃいで、泣きたければ泣いて、ストレスを発散する。どんな方法であっても、毒が抜けるならその方が健康的かもしれない。簡単なことだけれど、追いつめられるとそれもできなくなってしまう。人というのは、ちょっとしたことがきっかけで 前向きな自分に変えることができる。そうなれるかどうかは本人次第。本書のヒロインは旅行に行くことを思い立った。要するに自分から動けってことだ。


西加奈子さんのサインも、これで三冊目になった。

西加奈子3

他のサイン本はこちらをクリック。→「サイン本」

ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

西加奈子
トラックバック(1)  コメント(1) 

Next |  Back

comments

このコメントは管理者の承認待ちです

-:2011/09/02(金) 00:17 | | [編集]

コメントの投稿











 管理者にだけ表示を許可
trackback
この記事のトラックバックURL

うつくしい人/西加奈子


JUGEMテーマ:読書 読書期間:2009/4/28~2009/4/29 [幻冬舎HPより] 会社から逃げ出した女、丁寧な日本語を話す美しいドイツ人旅行者、冴えないバーテンダー。非日常な瀬戸内海の島のホテルで出会った三人を動かす、圧倒的な日常の奇跡。心に迫る傑作長編!

2009/05/23(土) 11:43 | hibidoku~日々、読書~

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。