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    2009

05.15

「待ってる 橘屋草子」あさのあつこ

待ってる 橘屋草子待ってる 橘屋草子
(2009/02/05)
あさの あつこ

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深川元町にある料理茶屋「橘屋」への奉公が決まったのは、おふくが十二歳になったばかりの春だった。奉公の話が持ちあがったとき、おふくは心底、嬉しかった。無給同然の住み込みとなるが、三年を過ぎれば働きに応じた給金を与えられる。自分が家族の生活を支えられる。気働きには自信がある。身体を動かすことを厭う気はさらさらない。それに橘屋は名の知れた料理茶屋ではあるし、家族の住む裏店に近い。一度奉公に出てしまえば、薮入りの日にしか帰ることはできない。それでも、帰る家があるということは心強かった。

本の帯を見て、これは十二歳の少女、おふくの物語だと思い込んでいた。だがすべてがそうとは違った。子を亡くしたおしのは、隣に住む虐待を受けている少女に我が子を重ねるという「小さな背中」、亭主が倒れて金がいるお啓に言い寄ってきたのは元許嫁の若旦那という「仄明り」、おそのが再会したのは、逃げるように長屋を去った幼馴染の弐吉でという「残雪のころに」、不自由な脚と小さな身体、三太の母は去り、父は酒に溺れてしまった「桜、時雨れる」、待ってるおふくに、待ち人が見つかったと幼馴染が駆けつけてくる「雀色時の風」、病に伏せたお多代と、立派に成長したおふく「残り葉」。

一見ばらばらの作品のようだけど共通する部分がひとつだけある。それは「橘屋」の仲居頭お多代が関わってくるということ。お多代の叱咤や注意は、いつも的を射て、納得できることばかり。優しくはない。温かくもない。だけど底意地が悪いわけでも陰険なわけでもない。各編の主人公たちは、待っていたり、代わりにしたり、流されかけたりする。そうして心がぶれて危ういところにお多代が現れ、そのお多代の言葉に現実と向き合う勇気をもらっていく。

他人のせいにするんじゃない。自分で生きていくしかない。甘えてはいけない。もたれかかってはいけない。頼り切ってはいけない。前に進むしかない。考えてもせんない。生き場所はここにしかない。誰かを待ちながら生きたりしない。生きることで精一杯の人たちは、それぞれに決意していく。十二歳だったおふくもまた、「橘屋」に拾ってもらった恩を背負って生きていくことを誓う。

今では考えられないような悲壮な決意だけど、この時代の弱者は何もしなければ飢えるしかない。働かない者は食べていけないし、働いてもギリギリの生活。病に伏せれば休業手当がでるはずがなく、失業保険も年金もない。一寸先は闇。だから必死に毎日を生きる。しかし、実際の江戸っ子は、宵越しの銭は持たないという言葉があるように、真面目に働かなかったと江戸時代の考察関連の本で読んだことがある。それはそれとして、これはフィクションであって粋な作品であることは間違い。面白かったです。


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comments

かなり面白かったです。
お多代、厳しいけど、しゃんとした立派な人ですよね。辛い人生だったけど、橘屋の主人の深い愛情が感じられてよかったですね。
おふくも、かすかに料理人との予感を感じられて、光の射す作品でしたね。実際は難しいのかな~、あの二人。

じゃじゃまま:2009/05/19(火) 21:55 | URL | [編集]

じゃじゃままさん
お多代による人生の教訓講座のような作品でしたね。
ビンタにはびびりましたが、同じく立派な人だと思いました。
最後にまたおふくに戻りましたが正直もっと読みたかったです。

しんちゃん:2009/05/20(水) 18:20 | URL | [編集]

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待ってる橘屋草子 あさのあつこ著。


≪★★★★★≫ 江戸の町を舞台に、その日を一生懸命生きる、裏店で暮らす人々。 そんな人々の、豊かではない、時に哀しい生き様を綴った連作短編集。 でもただ切ないだけじゃない、哀しいだけじゃない、ラストには一筋の幸せへの光が、時に弱々しく、時には強く伸びてい

2009/05/19(火) 21:50 | じゃじゃままブックレビュー

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