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    2009

06.02

「たまゆらり」高橋克彦

たまゆらりたまゆらり
(2009/04/17)
高橋 克彦

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異界に越境し浮遊する小説家の“念”が死者の魂を招き寄せる……。ホラー短編の名手が贈る、哀惜と戦慄の物語。本書に収められた11編中6編が、現代日本の短編小説・年間ベスト選集に収載された、珠玉の作品群! 高橋ホラーワールドの真髄がここにある――。《出版社より》

おふくろが腎臓病で入院して二年。今夜がヤマなのかもしれない。一階の台所から水音や歩き回る音が聞こえてくる。〈おふくろか…〉直感でそう思った。〈帰ってきたんだろ〉私はおふくろに呼びかけた。「声にしてごらん」

家内には内緒にしているが、ときどき重い頭痛と息苦しさで目覚めることがある。そして決まって聞こえる言葉。目を覚まして、という、だれかの懇願だ。この頃、ずいぶん人が死に過ぎている。重荷になっていたおふくろに親父に高校時代の仲間。「うたがい」

小学校五、六年の頃の写真にその女の子は写っていた。ところが、転校する前の小学校の遠足の写真の中にもその子の笑顔が見付かった。しばらくして奇妙に感じた。なぜいつもおなじ服装で、おなじ髪形におなじ笑顔なのだろう。「あの子はだあれ」

湯につかりながら私はここを訪ねて来たのを後悔していた。問題は松島だ。口喧嘩とまではいかなくても、ぎこちないやり取りが続いた。なぜか松島は私を親友だと思い込んでいる。こっちには三十年ぶりに会った知り合いという思いしかない。「悪魔」

この数日、たまゆらとだけ向き合っている。最初は霊魂だと思い込んでいたので、出現するたびに嫌な気分に襲われた。幽霊とたまゆらはまったく別のものだ。直感に過ぎない。だれも解明に取り組まないなら、私がやるしかない。「たまゆらり」

夢中になって何枚もシャッターを押す。右手に路地が見えた。路地の先は空き地か児童公園らしく子供たちが竹馬やビー玉で楽しそうに遊んでいる。あの懐かしいチンドン屋の音楽も伝わってくる。不意にピエロが路地の先に顔を覗かせた。「ゆがみ」

古い知人の女性と再会した。まったく記憶にないことだった。メニューにないものを平気で頼める男。女子高に単身殴りこみをかける男。まともに女性の顔も見られない私にそんな図々しいことができるだろうか。なんだか居心地が悪くなった。「とまどい」

昔確かに持っていて今は失くしてしまったお宝を鑑定する。証拠は写真とか証言で構わない。ようやく私の失った宝が定まった。が、肝心の写真が見付からない。〈その痣はいつからなんですか?〉不意に秘書の不審げな声が蘇った。「私のたから」

きっかけはマッサージだった。瞑っている瞼の裏に見知らぬ外国人の笑顔が浮かんだ。次々と別の外国人が出て来た。戦争という言葉が脳裏に浮かび上がった。人類の過去から未来まですべて記録されたものにアクセスする能力。これがアカシックコードなのか。「幻影」

ここは二十人もの人が死んだ昭和初期に建てられた洋館である。壁一面に怪談映画のポスターなどが飾られ、精巧な人体模型まで置いてある。棚には本物の髑髏やホルマリン漬けの標本まで並んでいる。編集者の熱意に押されて書斎での取材に応じた。「怖くない」

今から二十年ほど前、私はこの町の警察に保護された。それまでの記憶をすっかりなくしていた。先日、隠れ里を捜す番組を見て、その景色に見覚えがあり、この遠野の町にやって来た。そこには大きな屋敷があった。私はここに居た。行けば分かるはず。「隠れ里」


主人公は高橋克彦ご本人とおぼしき作家だ。締め切りに追われ、六十年代のカバーポップスを聞いてはあの時代に引き戻されている。高橋ファンならニヤッと微笑んでしまうようなエッセイ調の何気ない日常で物語は始まり、気がつけば異界へと迷い込んでいる。背筋にぞぞっとくるものや、切なくなるもの、幻想的なもの、いろんなバリエーションのホラーが楽しめる一冊であった。個人的に好きだった作品は、「声にしてごらん」「あの子はだあれ」「悪魔」「ゆがみ」「怖くない」「隠れ里」かな。

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高橋克彦
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