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    2009

06.08

「きのうの神さま」西川美和

きのうの神さまきのうの神さま
(2009/04)
西川 美和

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『ゆれる』の映画監督が、“真実と嘘の境界”をテーマに人間の本性を炙りだした短篇小説集。映画『ディア・ドクター』から生まれた、もうひとつの物語。「1983年のほたる」「ありの行列」「ノミの愛情」「ディア・ドクター」「満月の代弁者」の五編を収録。キーワードは、過疎の町、僻地の医療、閉塞感、生と死、家族、自分を知るなどでしょうか。とても視覚的な作品だ。本業が映画監督ということもあって、文章でしか現せない描写が巧みで、人物の内面の揺れにも思わずはっとした。かつては特別だったものがそうでないと気づいたときや、抑えていたものが突然解放されたときなどの、その変化の一瞬をとらえた場面が群を抜いてすばらしかった。

「1983年のほたる」
主人公は小学生のわたし。人とは違う。そうだといい。けど、そんなことは、たぶんない。特に塾に行きだしてから半年、近頃のわたしにはもうよくわかる。それでも、人と同じは、嫌だと思う。友だちのことも。家族のことも。村のことも。見下したりなんかしてない。たぶん――。わたしが塾から帰る最終便の運転席には、決まってこの人がついていた。名前は、一之瀬時男という。わたしは一之瀬時男が苦手だった。「りつ子さんだろ」初めて話しかけられたその直後、バスはシゲちゃんをひいた。

「ありの行列」
若い医師の男は、人口五百人の離島にある診療所の代診としてやって来た。男は荷物だけ置くと、そのまま老医師の後に付いて、表に出た。患者の家まで歩いて行けない家などないらしい。後から黙って付いてくる割烹着の中年女は、手には血圧計が裸のまま握られており、どうやら看護師のようだった。老医師も聴診器と懐中電灯を手に持っているだけの軽装で、まるで散歩にでも出かけて行くようであった。道を歩けばつかまえられ、たちまち問診が始まる。男はそれ以上のことを望めないし、望まない、という医療を知る。

「ノミの愛情」
私の夫は市民病院に勤める小児心臓外科医である。すでにその道では名医と呼ばれる部類に入る存在ではあるらしい。非の打ちどころのない医師というのは、私の夫のようなものじゃないか。私のナースとしての未知数は、この夫にやってしまった。虚勢と誇りとを混同し続ける夫の、高潔な生業と、品行方正な人間性とを守るため、そんな完全無欠の男が家族にだけ見せるほころびを、かつて私は愛だと思っていた。これが愛か。考えれば考えるほど、鎖でつながれている犬と私は同族だ、と思える。

「ディア・ドクター」
今日、父が倒れた。ゴルフ場のクラブハウスで倒れたらしい。父は大学病院や総合病院に勤めた外科医だった。脳梗塞の範囲が大きいので、目は覚ますけど、麻痺が残ったり、しびれが残るそうだ。あの人はもう知っているのだろうか。ぼくは、長いこと会っていない兄のことを考えていた。兄は遠く、北国に近いあたりの僻地に暮らしているのだという。まっすぐ来たとしても、一体どのくらい時間がかかるのだろう。それとも兄は、ここへ向かってはいないのだろうか。ずっと父の背を見て憧れ、医者への夢破れ家を出た兄は。

「満月の代弁者」
本来ならば、男は今頃実家の方向へと走り出していたはずだったが、臨床の現場から遠く離れていた年配の新任医師にすべてを要領よく引き継ぐのはたやすいことではなかった。男は仕方なく一日滞在を伸ばし、野添医師を連れて、常連の訪問患者の元を何件かたずねて回ることにした。「先生、ようやく慣れてきた頃に」と人々は別れを惜しんだが、それは人々のほうが男に「ようやく慣れた」という意味である。男のほうはとっくにマンネリを感じていた。しかし、人々が男を慕っていることにうそはなかった。

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2009/11/11(水) 19:33 | まったり読書日記

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