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    2009

06.15

「きりこについて」西加奈子

きりこについてきりこについて
(2009/04/29)
西 加奈子

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きりこは、ぶすである。きりこは、大阪の小さな街に住んでいる。きりこは一人娘で、大変可愛がられている。きりこは、両親から「きりこちゃんは、ほんまに可愛いなぁ」と、褒めに褒められて育てられた。きりこは、いつも耳元で聞こえる「可愛いなぁ」を体いっぱいに浴びて、すくすくと育ち、幼稚園に入っても、小学校に上がる頃になっても、「可愛い女の子」然としていた。きりこはつまり、自分がぶすであるということを、つゆほども、飼っている猫の髭の先ほども、思わなかったのだ。

その黒猫は、きりこが一年生のとき、体育館の裏で見つけられた。猫は、ラムサス2世と名づけられた。ラムセス2世は、きりこのことが好きだった。命を助けてもらった人、という恩義があるし、猫の彼にとっては、きりこの容姿は大変良い具合に見えたからだ。きりこはよく、ラムセス2世を抱き上げては、「賢いなぁ、賢いなぁ」と言った。きりこは自分が世界一可愛いと信じているので、自分以外の者にその言葉を使うことを許さなかっただけなのであるが、ラムサス2世は、それを感謝し、しだいに人間の言葉を覚えていった。

きりこが小学5年生のとき、ラムセス2世に手伝ってもらい、大好きなこうた君にラブレターを書いた。だけど、こうた君はクラス全員の前で、こう言ったのだ。「やめてくれや、あんなぶす」きりこは、失恋しただけではない。華やかであった自分の少女時代を、徹底的に失ってしまったのである。きりこは二年間ほど、鏡を見つめ続けた。人間より、猫のほうがええ。数年経って、改めてこのことを痛感したきりこは、猫のように、夜行動して、昼間は眠っているようになった。

きりこのそばにはいつもラムセス2世がいた。ラムセス2世は、猫の基準では、きりこがどれだけすばらしいかを話して聞かせる。きりこがひきこもり生活を始めてからは、尊敬はさらに高まる。きりこは猫のように一日中、眠り込んだ。猫にとって、眠り続けることは、とても高尚なことなのである。猫は、夢を見る訓練をしているのである。きりこは、夢を見た。それは、きりこが見た最初の予知夢だった。きりこは、外に出た。夢の中で泣き叫んでいた女の子を助けるためだった。きりこは、十八歳になっていた。

ラムセス2世による猫の価値観が面白く、すぐに作品の世界に引き込まれた。これは読んだ人がどうこう言うよりも、自分で読んで確かめてもらうしかない。きりこは両親に溺愛され、自分でもかわいいと思い込み、常に自信満々の少女時代を過ごす。この行くところ無敵っぷりはまるで女王様のようだ。これがまた、子供の世界が複雑なように見えて、実は単純なことわりにあると気づかされる。そしてある日、自分はぶすだと告げられ、世界が瞬く間に半回転してしまう。ここまでが吹き出し笑いの連続だった。

きりこの中にぶすという言葉が入り込んできた。だが、自分のどこがぶすなのかがまったくわからずに自問自答を繰り返す。また自分がぶすだと気づいてからは、きりこにとって雌伏の期間になる。その彼女のそばには頼もしいしゃべれる猫の相棒がおり、十八歳で目覚めたきりこは、「きりこは、きりこ以外、誰でもない」と、自分であることの大切さを理解する。すると、きりこの視界は突然開け、少女時代の無敵さも復活する。そうして出て来るのは、女と男という人間とは、社会とは、という人間世界の本質である。これがすごいのである。

かわいらしいユーモアがある一方で、手厳しさもたんと詰められているのだ。でも現実の残酷さや酷さがあるその傍では、猫が自分の肛門を舐めていたり、雌猫の肛門の匂いに誘われて追いかけていたりする。きりこじゃなくても、「猫って、ええなぁ」と声をもらしそうな呑気さだ。ラムサス2世なら、「世界で一番、猫がええんです」と答えてくれそう。これはもう、読んで欲しいとしかいいようがない。自分で何かを感じて欲しい。そして、猫の仕草や会話に萌えて頂きたい。とても面白かったです。

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西加奈子
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comments

こんにちは!
私もこの本、面白く読みました。
でも、猫ちゃんと一緒に暮らしている方には、より一層楽しく読める本だったのではないかな?^^と思います。
私もやぎ座のO型です(^^ゞ

latifa:2009/06/17(水) 20:54 | URL | [編集]

latifaさん、こんにちは。
ラムサス2世は、仕草だけでなく、思考もかわいらしかったですね。
ウチのにゃん様も本当は話すことができたりして(=^・^=)ニャン。

しんちゃん:2009/06/19(金) 12:32 | URL | [編集]

おはようございます。
すごく面白い本でした。
いつもきりこの側にいたラムセス2世、
きりこは幸せ者ですよね。

どちらかというと猫よりは犬が好きかも…って思ってた私ですが
猫ってすごくかわいらしいじゃないって思いました。

なな:2009/08/06(木) 08:34 | URL | [編集]

ななさん、こんばんは。
ラムサス2世、欲しい(笑)
でも三匹目はちょっとキツいか~。

犬も飼ったことあるけど、断然、猫派です。
媚びないところが面倒臭さがなくていい。
こっちの気が向いたときだけナデナデっと^^;

しんちゃん:2009/08/07(金) 17:58 | URL | [編集]

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「きりこについて」感想 西加奈子


表紙が可愛らしく、そして「きりこは、ぶすである」という言葉から始まるのにソソられ読んでみました。

2009/06/17(水) 20:55 | ポコアポコヤ

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7月に読んだ本です。 良かった本は、西加奈子「きりこについて」、村上たかし「星守る犬」です。 西さんは本格的にファンになりました!他...

2009/08/01(土) 15:48 | ヨム・ミル・キク

「きりこについて」西加奈子


JUGEMテーマ:読書 きりこはぶすな女の子。人の言葉がわかる、とても賢い黒猫をひろった。美しいってどういうこと? 生きるってつらいこと? きりこがみつけた世の中でいちばん大切なこと。書き下ろし長編小説。 面白かったです。きりこに関係する人たちが登場したと

2009/08/06(木) 08:34 | ナナメモ

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