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    2009

06.16

「海の仙人」絲山秋子

海の仙人 (新潮文庫)海の仙人 (新潮文庫)
(2006/12)
絲山 秋子

商品詳細を見る

四年前、銀座のデパートの店員をしていた河野は、宝くじに当たり、真新しい通帳には三億円の数字が刻まれた。何に使おうか、彼は迷った。つまり、彼にはやりたいことが何もなかった。そこで会社をやめて旅に出た。そうして、敦賀で空き家になっていた古い家を買い取って一人暮らしを始めた。なによりいいのは海だった。街のどこにいても、海の気配が感じられた。何もしないひっそりした生活。そこへファンタジーが姿を現した。居候に来た。役立たずの神様はそう言って、奇妙な同居が始まった。

河野は岐阜から遊びに来たという女性、中村かりんと出会った。気がつけば、二人はすっかり打ち解けてしまっていた。河野は心の底から喜びが湧いてくるのを感じた。それは彼が長いこと感じていなかった喜びだった。かりんの全てが好ましく思えた。遠距離の付き合いが始まったが、セックスレスは二人の暗黙の了解になっていた。河野は同期の中で片桐妙子と一番仲がよかったが、女らしいと思ったことは一度もなかった。会社を辞めて以来会っていない。それが突然電話をかけてきて、敦賀に行くから留めてくれ、と言う。

河野とファンタジーは、片桐の旅につきあうことにした。その旅の途中で、河野の口から自分のトラウマが語られる。だが、河野はどうしても自分の過去をかりんに言えないでいた。かりんを好きになればなるほど、話せば今の関係は壊れてしまうのではないかと恐れた。数年が経ったある日、かりんは余命半年を宣告されたと河野に告げる。その一方で、片桐は誰と付き合っていても、もしも河野の気持ちが自分に向いたらという思いをずっと捨てきれないでいた。彼女と別れて自分のことを必要としてくれるのではないかと。

自分のスタイルを崩してしまえば、自分という人間が崩れてしまう。主人公は心に傷を持ったまま、居心地のいい場所から一歩も動けなかった。ファンタジーは言う。誰かと一緒に寝ても眠りにおちるときは独りだぞ。寝るときと死ぬときは独りなんだ。誰もが孤独なのだという言葉が表すように、物語は灰色のまま淡々と綴られていく。恋人がいたとしても、結婚していたとしても、子供がいたとしても、結局は、孤独は人に付きまとう。当たり前のことをさらりと突きつけられて、はっとそこにショックを受けてしまった。

働くことを辞めて、仙人のような隠者の生活を選んだ主人公に明日はあるのだろうか。そこにいて、いつか孤独という殻を破っていけるのだろうか。だが、突き放したまま放置することを著者はしなかった。最後に仄かな明かりを呼び寄せた。寂しい人間世界も捨てたものではないと、思っていたい。中々痛々しい作品だけど軽く読めるので、ぜひ一読を。おすすめです。

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comments

しんちゃんさん、こんばんは。

私は絲山さん好きなのですが、特に好きなのは『逃亡くそたわけ』とこの『海の仙人』なんです。
片桐の長い片想いがいつか実るといいなぁと思います。

宝くじは買わないのですが、もしも3億円当たったら、何に使おうっかって考えることはあります。
うちは夫婦揃って釣り好きなので、河野みたいに海辺の家で釣りをしながら暮らすのもいいなぁ^^

みらくる:2009/06/16(火) 19:08 | URL | [編集]

みらくるさん、こんにちは。
デビュー作を読んで、もっと読みたいと思いました。
でも思ったまま読まず仕舞いでした。反省。
宝くじは何に使うか考えますよね~。
自分も買ったことないけど。おい^^;

しんちゃん:2009/06/17(水) 12:32 | URL | [編集]

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海の仙人/絲山秋子


絲山秋子の小説の中で『逃亡くそたわけ』に並んで好きなのがこの『海の仙人』。主人公の河野は宝くじで三億円が当たって会社を辞め、敦賀に...

2009/06/16(火) 19:09 | 読書メモ。

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