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    2009

07.30

「クライマーズ・ハイ」横山秀夫

クライマーズ・ハイ (文春文庫)クライマーズ・ハイ (文春文庫)
(2006/06)
横山 秀夫

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一九八五年。悠木と安西はザイルを組んで群馬県の最北端にある谷川岳の衝立岩に挑むはずだった。だが、約束は果たされなかった。その前夜、日航ジャンボ機が群馬県上野村山中の御巣鷹山に墜落したからだった。一瞬にして五百二十人の命が散った。悠木は地元紙「北関東新聞」の統括デスクとして、谷川岳ではない、もう一つの「墓標の山」と格闘することになった。そして、一方の安西は――。下りるために登るんさ。謎めいた言葉をぽろっと口にした同僚は、何本もの管を体に通され、目を開けたまま眠っていた。

悠木は、先月四十歳になった。社内で最古参の記者である。「無所属遊軍」「独り遊軍」などと様々な呼ばれ方をするが、要するに、部下を持たずに動くフリーハンドの立場にいる。羨む者も多いが、憐憫の視線を向ける者はさらに多い。同期の人間はとっくにデスク席に座っている。五年越しの懲罰人事。そう囁き合う局内の声は悠木の耳にも聞こえてきた。望月は一年生記者として悠木の下に配属された。見るからに頭の回転のよさそうな若者だったが、それを確かめる間もなく逝ってしまった。おそらく望月は悠木と同じ種類の人間だった。

悠木は息子の顔色を窺っていた。淳がどう育つかよりも、淳が自分をどう見ているか、この先ずっと自分を尊敬し好きなままでいてくれるのか、そのことが常に気になった。やがて淳の機嫌を取るようになっていた。だが、ひとたび淳が反抗の気配でも漂わそうものなら、どこまでも冷淡に当たった。悠木は父親になり損ねた。十三歳になった淳は暗い瞳の少年に育った。父親として何を教え、何を伝えるべきだったのか。それは今からでも取り返しがつくことなのか。だが、そもそも息子に伝えるべき大切なことは何であるのか、それが悠木にはわからなかった。

日航全権・悠木。黒板にそう大書きされた。悠木は喧騒の坩堝の底にいた。頭上から事故に関する断片情報が雨あられのように降ってくる。四方八方から怒声が飛んでくる。局内に浅ましい男の嫉妬が突き上げ、後輩の原稿を潰されたうえ屈服を余儀なくされ、紙面が勝手に掏り替えられ、社長派と専務派で牽制しあい、販売局とは軋轢を抱え、降って湧いたような巨大事故に呑み込まれ、翻弄され、自らの存在のちっぽけさを思い知るばかり。詳報に全力を注ぐ。だがまさしくそれこそが地元紙の存在理由だと気づいた。そして、クライマーズ・ハイ。一心に上を見上げ、脇目も振らずにただひたすら登り続けること。本書の読書もまた、クライマーズ・ハイ。ページを捲る手が止まらなかった。

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横山秀夫
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comments

はじめまして!この本は数年前に読みましたが、やはり内容の重さと仕事にかける記者たちの熱さに打たれ、自分としては珍しく手を休めないで読み通した記憶があります。

映画化されたりドラマ化はされてますが、やはり横山さんのこの小説が一番だと思います。

カフェカフェ:2009/07/30(木) 18:35 | URL | [編集]

 ブログ開店休業中のhigeruです。
 横山秀夫といえば警察小説ですが、一番好きな作品です。本来なら間違いなく直木賞を獲れたはずだったと思いますが。
 それにしても横山さん,新作が出ませんねぇ。ずっと体調が悪いようですが…。

higeru:2009/07/30(木) 23:06 | URL | [編集]

カフェカフェさん、はじめまして。
日航ジャンボ機の墜落を土台にした人間ドラマに熱くなりました。
でも、やはりままならないものですね。そこがリアルでした。
派手さはないものの、ぐいぐい読まされました。

しんちゃん:2009/07/31(金) 20:14 | URL | [編集]

higeruさん、こんばんは。
直木賞ってあまり興味沸かないです。アタリがないような…。
それよか山本周五郎賞とか吉川英治賞の方が面白いっす。
新刊「64(ロクヨン)」の出版も止まったままですね。

しんちゃん:2009/07/31(金) 20:18 | URL | [編集]

しんちゃん☆あれは暑い夏でしたね。
それまでにも航空機事故は色々ありましたが、この事故はその中でも特に印象深いものでした。
取材の大変さが目に浮かぶようで、一気読みでしたねぇ!

Roko:2009/07/31(金) 23:08 | URL | [編集]

Rokoさん
事故のあった年はまだ小学生でした。だから記憶とか全然なくて…。
でも毎年ニュースで見る追悼はもちろん知っています。
そういえば、最近読んだ樋口有介さんの「ピース」もこの事故関連でした。
なんか、こういうのって続くんですよね。なんでだろう。

しんちゃん:2009/08/01(土) 18:01 | URL | [編集]

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