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    2009

08.08

「失われた町」三崎亜記

失われた町失われた町
(2006/11)
三崎 亜記

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30年に一度起こる町の「消滅」。忽然と「失われる」住民たち。喪失を抱えて「日常」を生きる残された人々の悲しみ、そして願いとは。大切な誰かを失った者。帰るべき場所を失った者。「消滅」によって人生を狂わされた人々が、運命に導かれるように「失われた町」月ケ瀬に集う。消滅を食い止めることはできるのか?悲しみを乗り越えることはできるのか?時を超えた人と人のつながりを描いた長編。《出版社より》

「プロローグ、そしてエピローグ」
今夜、本当に町の「消滅」を防ぐことはできるのだろうか。眼下に町の光が広がっていた。すでに住民の撤退が完了した町には、人の営みを示す暖かな明かりは灯らず、街灯の白々した光が規則正しい配列で光っていた。音もなく輝くその光からは、「町」の意識を感じ取ることはできなかった。三十年前の月ヶ瀬町の消滅とは違い、今回は、人は消滅しない。それ故、消滅の時点を判断することは難しかった。町の光を見下ろしながら、今日この場に至るまでの、さまざまな人との出会いと軌跡を改めて思う。町の消滅を防ぐことができたとしても、やるべき事、考えるべき事は無数にあった。星のない暗黒の夜空を見上げながら、三十年前に失われていった月ヶ瀬町を思うのだった。

「エピソード1 風待ちの丘」
国選回収員の茜たちは、この町のすべての地名、そして住んでいた住民の痕跡を消し去ろうとしている。それが、消滅の「余滅」を食い止めるために行われるということは、この国の誰もが知っていた。失われた人々は、いったいどこに行ってしまったのだろう。この月ヶ瀬の消滅は一ヶ月前。町の消滅は、意識を持った「町」により引き起こされると言われていた。茜は、ペンション「風待ち亭」の主人と出会う。中西さんは失われた町で家族を失っていた。その日、由佳という女の子がやって来た。彼女は将来を決めた相手を失い、歩き出すために、失った町が見える風待ち亭に来たのだった。

「エピソード2 澪引きの海」
圭子さんは、消滅予知委員会のメンバーで、月ヶ瀬の消滅を回避できなかったことから、委員たちはなし崩しに消滅後の対策のため動き回っていた。彼女は恐怖と忌避の対象とされる「特別汚染対象者」だった。失われた町にかかわる人間、それも特別汚染対象者を目の前にして、平常でいられる人間がいるだろうか。およそ三十年に一度、何の前触れも、因果関係もなく、一つの町の住民が忽然と姿を消す。次の消滅こそは必ず食い止めるという意志は使命感のように持ちながらも、これからも続く孤独な日々を思い、心が折れそうになるのを感じていた。そんなある日、圭子さんは写真家の脇坂さんと出会った。

「エピソード3 鈍の月映え」
茜は失われた町の絵の展示を続けている青年と出会った。彼はいわゆる「免失者」なのだ。町の住人であっても、町の外にいたために消滅を免れた人。彼らは、家へ戻ることもできず、家族も失って、まさに身一つで放り出された状態なのだ。彼の名は和宏と言い、茜より二歳年上だった。「町」は、消滅の道連れにするかわりに、彼の町での記憶を奪い去ってしまったのだ。だが、「町」は失ったことによる喪失感だけは、無慈悲にも心の中に残してゆく。和宏は言っていた。あまりに大きな喪失感のせいで、悲しみを感じることができない、と。茜は約束した。不安定な彼の心がきちんと定まるまで、私が支えていくんだって。その和宏が町に入ってしまい、汚染を受けてしまった。

「エピソード4 終の響き」
英明の妻は「別体」だった。「本体」「別体」といえど、そこには便宜上の区分としての名称があるだけだ。彼女は、他の人間と何ら違うわけではない。半年に一度、分離統合局で検査を行う。そして本体、別体どちらかが死亡すれば、もう一人も同時に死亡してしまう、という以外は。通達が届けられたのは、出産のために実家に帰っていた妻の故郷である月ヶ瀬が失われて二週間も経ったころだ。彼は、途方もない無力感と、つかみどころのない空虚な感覚に支配され続けていた。通常の別体の死亡であれば、本体も瞬時に死亡しているだろう。だが、妻は失われたのだ。もしかしたら、妻の本体はまだ生きていて、妻の消滅を知らぬまま生活しているのではないか? 英明は、本体の彼女に会いにいく。

「エピソード5 艫取りの呼び音」
公園を通るたびに、圭子さんは探してしまう。小さな一人用のテントを。何物にも躊躇せず被写体にレンズを向けている脇坂さんの姿を。最後に会った砂浜で、脇坂さんは、いつか彼女の元に戻ってくると約束した。けじめをつけてこなくちゃ。脇坂さんはそう言っていた。「けじめ」が、何を意味するのかは、あえて聞かなかった。何を失って写真を撮ることができなくなっていたのかも。あれから、圭子さんなりに脇坂さんを探してみた。と言っても、彼女が知るのは脇坂という名字と写真家だという事実のみだった。圭子さんは「身削ぎ」の意味するものを理解した。これより七日の時が経った月の中天までに、彼を見つけなければ、永遠に自分の前から失われてしまうことを知った。

「エピソード6 隔絶の光跡」
彼女を表現するには、孤高というコトバしか思い当たらない。由佳と勇治は、六年前、地方都市の高校に同じ学年で入学した。由佳は、様々な意味で目立つ少女だった。一つはその美しさから。そしてもう一つは、その知性だった。彼女の目指す場所は、誰にもわからなかった。由佳の「彼氏」になった勇治にとっても。由佳の中には潤という存在がずっとあった。彼女は、潤を奪った町に復讐することに、自分がこの世界にいる意味を見つけ出そうとしていた。その潤から由佳宛に暗号文で書かれた手紙が届いた。高校三年の秋、由佳は高校を中退し、勇治の前から姿を消した。あれから四年半。勇治は由佳と再会した。由佳の、孤独で、静かな「町」との戦いは、今も続いていた。

「エピソード7 壺中の希望」
のぞみは失われた町で生まれていた。前回の消滅でただ一人、消滅を逃れた消滅耐性。回収員として町に入った父にのぞみは発見され、両親は自分たちの子供として引き取ったのだという。そして管理局は次の消滅に抗うための情報を、のぞみの中に保管していると、先生は説明してくれた。先生は否定しなかった。のぞみが実験材料であるということを。のぞみは自分がどうしようもなく「独り」であることを感じはじめていた。のぞみは、両親にだまって家を出た。失われた町「月ヶ瀬」に向かうために。ペンション「風待ち亭」には、それぞれに違った立場と思いで、「町の消滅」に関わってきた人々が集っていた。

「エピローグ、そしてプロローグ」
今夜、月ヶ瀬は失われる。そのことは、潤はもちろん、町の誰もが知っていた。皆、運命として受け入れていた。圧倒的で、微塵のゆるぎもない「町」の意志。潤は、逃げ出すことも、抗うこともできず、組み伏せられるしかなかった。月ヶ瀬の町は、すべてを巻き添えにして、今夜失われるのだ。潤は、「残る」姉の彼氏の和宏さんに、半ば押し付けるように古秦器を渡した。次に、紙の束が入れられた小さなガラス瓶を川に流した。最後に、由佳に電話をかけ、その言葉を伝えた。「これはエピローグであり、プロローグである」由佳は、確かな声で応えた。人々は失われる。だが、失われた人々の想いは、きっと誰かが受け継いでくれる。消滅はエピローグではない。ここから何かが始まるのだ。

めっちゃあらすじを書いたけど、めっちゃめちゃ好きだった。どのあたりが好きだったかは指摘しにくい。でも特異な作品世界に瞬く間に引き込まれていった。入ってしまうと、簡単には抜け出せなくなっていた。この壮大な物語は、失われた町に関わった人々の群像劇である。町の消失によって、失われた人に対する悲しみや喪失感を抱えた人々が次々に登場し、それぞれの人生をどのように生きていくのかを決断してゆく。SF設定は確かにややこしい。明確な答えもないままだ。でも分からなくても、起こっている現象ははっきりと分かる。雰囲気で伝わってきたからだ。こういう、きっちり説明せずとも読ませる作品は大歓迎。そこに著者の力量をすごく感じた。すっごく好きな作品。感想というよりも、あらすじだらけになったけれど。

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三崎亜記
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comments

しんちゃん こんばんは。
私もこの三崎さんの世界感好きです。SF設定という感じもするけど、妙に現実的な感じがするし、ところどころに出る異国感と行政用語が、とにかく不思議!(あ~、うまく言えないです。)ちょっと難しかったけど、この世界に浸って読むと本当にハマりますね。

たかこ:2010/02/09(火) 19:02 | URL | [編集]

たかこさん、こんばんは。
上手く説明できませんが、この不思議で独特な世界感っていいですよね。
浸る(ひたる)。この言葉以外、いい様がないカタルシスを得ました。

しんちゃん:2010/02/09(火) 23:23 | URL | [編集]

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失われた町 / 三崎亜記


うわ~、またしても三崎ワールド。不思議な設定は読者の想像をはるかに超えている、と思う。でも、妙に現実的なところがあったりするからあなどれない。 ===== amazonより 30年に一度起こる町の「消滅」。忽然と「失われる」住民たち。喪失を抱えて「日常」を生きる残...

2010/02/09(火) 18:55 | たかこの記憶領域

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