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    2009

08.12

「未・フレンズ」魚住直子

未・フレンズ (講談社文庫)未・フレンズ (講談社文庫)
(2007/06)
魚住 直子

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一人の少女が崖の上に立っていた。背後は一面、オレンジ色の空。深澄は、ふいに泣き出したくなった。深澄はマウンテンバイクで走っているうちに、一度も来たことのないこの小さな高台までやってきたのだ。そうだ、チャンスだ。リュックからカメラを取り出した。両親からもらったお金と自分のこずかいを足して、十五歳の誕生日祝いに先週、深澄自身が買ったコンパクトカメラだった。女の子はこちらを見た。断らずに撮ったことをとがめられるかもしれない。深澄が走り出すと、女の子はあわてたように「待って!」と大声で呼んだ。でも深澄は振り返らなかった。

壁に社名の刻印のある三階建てのビル。このビルの一階が深澄の両親が経営するコンピューターソフト制作会社で、二階と三階が住居だ。両親は朝昼晩の食事のほとんどを一階でとる。封筒に入れられたお金は深澄一人分の食費で、自分で食材を買ってきて料理することになっている。このごろはたいてい外食かコンビニ弁当だ。深澄の両親が独立開業したのは五年前。母親は深澄の食事や洗濯といった世話をしないことを悪いことだとはまったく思っていない。母親は人工知能の金属製ロボットに薄い肉を貼りつけた人造人間で、父親は藁しか入っていない脳を持つマッチョ人間。人造人間がマッチョ人間を支配している。

三年進級と同時のクラス替えから一ヶ月と少し。今回、深澄の属しているのは最少グループ、深澄自身とマキの二人きりだ。深澄は別に一人でもよかった。というより、一人がいいと思った。でもマキが近づいてきたのだ。学校の子と遊ばない。友達も彼も全部、街で知り合う。中学に入ってから携帯に登録したのは百人以上だ。でも全部は覚えていない。とくべつ仲のいい子もいない。わざとそういう人のつきあい方をしているのではない。夕飯を一人で食べに行ったり、街をぶらついているうちに、気がついたらそういうふうになっていた。

高台は、相変わらず人気がなかった。「オサイフ?」突然、上から言葉が降ってきた。あの女の子だ。彼女は写真を撮って逃げた相手の財布を保管していたのだ。深澄は写真をさしだした。女の子は黙って写真を受け取ると、しばらくして顔を上げた。「いい写真」と、女の子は言った。そして、とぎれとぎれに言った。「友達いないの。だから友達になってくれませんか?」真剣な表情だ。深澄は勢いに押されるように「あっ、ああ」とうなずいた。女の子の名前は、チュアンチャイ。タイからきた十三歳の少女は、体調の悪い母親と二人でひっそり暮らしていた。友達になろうとする二人。だが、お金、親子、学校、仕事―大人たちの世界が冷たく立ちはだかる。

大人になることを母親から強いられた裕福な家の少女と、貧しい家庭環境から大人にならざるをえなかったタイの少女。両親と通じ合えたことなんか一度もない少女と、父親の行方がわからず、ずっと病気の母親を抱えて暮らす少女。家にも学校にも外にも自分の居場所がない少女と、小学校を卒業してからは通うところもないから、うちにいて母親の代わりにすべての家事をやることが当たり前の少女。この二人の少女のうち、どちらがより大きな寂しさや悩みを抱えているかは、もはや問うべきことではない。あとがきに書かれていることがすべてで、読んでみるとすべてが納得できるからだ。

子どもでは手に負えない困難に直面し、現実問題として、子どもたちだけでどう立ち向かえるのか。少女たちが取った行動そのものは間違いでも、理解はできた。ここに出てくる大人たちのすべてがサイテーだっただけに、間違った勇気や、大人に対する反骨心にあっぱれをあげたい。でも外国人の子は健気に見えてもやはりしたたかだった。そこはちょっとショックを受けつつ、さもありなんと思う。わりを食うのはいつも日本人。お隣の厚顔ぶりを見習えとは言わないが、そういう損な国民性は今後も変わりそうにない。困った人がいれば、放っておけないんだもの。それが美徳だしね。などと、変なところで共感した一冊だった。

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魚住直子
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