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    2009

08.25

「宵山万華鏡」森見登美彦

宵山万華鏡宵山万華鏡
(2009/07/03)
森見 登美彦

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祇園祭前夜。妖しの世界と現実とが入り乱れる京の町で、次々に不思議な出来事が起こる。最初の「宵山姉妹」と最後の「宵山万華鏡」、次の「宵山金魚」と「宵山劇場」、その次の「宵山回廊」と「宵山迷宮」と、それぞれの作品が対になっている。それと共に、登場人物たちが交錯し、全てが宵山の夜で濃厚に繋がっている。趣向の凝った連作中篇集です。

「宵山姉妹」
バレエ教室が終わったときは午後五時をまわっていた。彼女は小学校の三年生、姉は四年生になる。いつものように帰路を辿って、烏丸通まで出たところで、姉がふいに立ち止まった。露店と群集の熱気がビルの谷間に充ちていた。姉は好奇心旺盛で、どんなところでもずんずん入っていこうとする。引きまわされる彼女は気が気でなかった。その子らは皆女の子で、華やかな赤い浴衣を着ていた。まるで薄暗い水路を泳ぐ金魚の群のようであった。彼女は吸い寄せられるようにその姿を眺めた。ふと我に返ると、姉とはぐれていた。

「宵山金魚」
乙川は「超金魚」を育てた男である。乙川のやることなすこと、ことごとくヘンテコで、暗躍しては珍妙な事件を仕組んでいた。彼は平然とした顔をしてホラを吹くし、俺は人一倍純粋だから、うかうかと信じてしまうのである。「騙す私が悪いのか。騙される君が悪いのか」と乙川はよく言った。しかし俺だって昔の俺ではない。彼の案内で、宵山の夜を満喫しようとしたのだが、昔のことを思い出している内に、乙川の姿が見えなくなった。気がつくと、後ろ手に縛られ、御輿に載せられて護送されていた。

「宵山劇場」
まだ新緑の美しい季節に、小長井は丸尾から大学の中央食堂に誘い出された。丸尾は「サークルを作る」と言った。偽祇園祭を作る計画だった。サークル名は祇園祭司令部ってことにしよう。かつては小長井も裏方界に小長井ありと誰かに物陰で言われたこともある男だった。一度は懲りたはずの裏方魂がうずくのだった。小長井はしばしば悩んだ末、丸尾の手を握り返した。コンセプトは、すでに決まっていた。標的である藤田氏の経験する地獄巡りこそが、彼らが作り上げるべき偽祇園祭となった。

「宵山回廊」
千鶴は不安になった。叔父は謎めいたことを言った。「明日からはもう、会えなくなる」叔父は万華鏡を差し出して見せた。露店の売り台には、色とりどりの万華鏡が並んでいた。そのとき叔父が考えたのは、この万華鏡で宵山の景色を覗いてみたらどういう風に見えるだろうということだった。山鉾の明かりや、露店の明かり、街の灯が、万華鏡の中でなめらかに回転して形を変え、叔父を幻惑した。その景色の中に、十五年前の宵山の夜に姿を消した娘を見つけた。それ以来、叔父は毎日宵山に出かけ、同じ一日を繰り返していた。

「宵山迷宮」
もともと柳画廊は父と母の二人でやっていたものだが、父が亡くなったあと、東京の画廊に勤めていた私が戻ってきて、運営に加わった。杵塚商会は父の時代から付き合いのある古道具屋だが、このところしつこく父の遺品である水晶玉を探すように電話を掛けてくる。翌日、ひどい違和感を感じた。すべてが昨日と同じだったのである。またしても宵山だ。父も私と同じように宵山を繰り返していたのではないか。そしてそこから抜け出す方法を見つけ出す前に死んでしまったのではないか。閉じ込められた理由は、父の遺品にある。

「宵山万華鏡」
彼女は今日が宵山であることを知っている。長いバレエのレッスンが終わってから、彼女は渋る妹の腕を強く引いた。彼女は半泣きの妹の手を引いて、行き当たりばったりで歩いた。妹とつないだ手は汗に濡れてつるつる滑った。そして、赤い浴衣の女の子たちを見た。その女の子たちは金魚の群のようにすいすいと進んでいく。妹までもが、見惚れて口をつぐんでいる。そのとき、なぜ彼女は妹の手を離したのだろう。怯える妹を宵山に置き去りにする。そんなことは、ふだんの彼女であれば思いつきもしない悪戯だった。

森見作品をごちゃ混ぜたような「宵山姉妹」と「宵山万華鏡」、イケイケお馬鹿全開の「宵山金魚」と「宵山劇場」、幻想的で静謐な「宵山回廊」と「宵山迷宮」。バージョンは違えど、すべてが森見ワールド。また、ゲリラ演劇プロジェクト「偏屈王」のように過去作とリンクがあったり、妙に竹にこだわる場面があったりと、森見ファンはここにキュンとくること間違いない。この作品のキーマンは、乙川だろう。作品タイトル「宵山万華鏡」のように、くるくる回され姿を変える。正体は、万華鏡の筒の中にあるのだろうか。怪しげな雰囲気があって、とても面白かったです。

サイン会に参加してきました。会場は奈良のギャップ書店。大阪からは、電車を乗り継いで一時間と少しでした。書店に到着すると、なんと森見さんはふつうに買い物客が通るフロアの真ん中にいる。こういうオープンなサイン会って、地方ぐらいでしょうか。先日参加した有川浩さんの兵庫県の会場もオープンなものでした。ご本人が間近にいるっていい。森見自身は、さらし者だけど。一回目のサイン会をそうして凝視で過ごし、二回目のサイン会でサインを頂戴しました。そして、何かイラストを書いて、とお願い。「太陽の塔」をゲットしました。森見さん、いい人だ。

森見登美彦さんのサイン。

森見_r1

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森見登美彦
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comments

こんにちは。
いつもこっそり拝見させていただいてました。

森見さんの「太陽の塔」かわいいですね。
先日の有川さんと言い、作家さんってこういう急なリクエストにも答えてくれるんですね。私もいつかサイン会で頼んでみようっと。

これからもお邪魔させていただきます。
よろしくお願いします!
いつも本選びの参考にしていますし、ブログも見やすくて尊敬しております~。

ぱんだ:2009/08/26(水) 20:14 | URL | [編集]

ぱんださん、はじめまして。
こっそりの拝見ありがとうございます。

結果でいえば、作家さんたちは気安く答えてくれます。
でもね、リクエストするのにとても勇気がいります。
だって周りのみなさんは大人しいですから。
機会があれば頑張ってください。
必要なものは勇気だけです(笑)

今後も遊びに来てくださいましー♪

しんちゃん:2009/08/27(木) 18:21 | URL | [編集]

ううっ、この太陽の塔、いけてます♪
どんな顔をして、書いてくれるのかしら…、と想像してしまいます。

「宵山劇場」が、いままでのモリミーのノリで一番面白かったですが、それ以外の不思議なところも魅力的でした。

たかこ:2010/04/20(火) 12:02 | URL | [編集]

たかこさん
これはレアなお宝ですよね。
自分的には、「夜は短し」と「太陽の塔」がこれまでのツートップでしたが、これは特別な本になっちゃいました。

しんちゃん:2010/04/20(火) 21:54 | URL | [編集]

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宵山万華鏡 / 森見登美彦


「きつねのはなし」系なので、いつもの阿呆っぽさはなし。でも、これはこれでかなりいける。 最初は気にしてなかったけれど、読み終わったあとで装丁をみると、まさしく宵山で万華鏡。妖しく、不思議感いっぱいの美しい表紙。 短編ながら、各話が微妙につながっている...

2010/04/20(火) 11:12 | たかこの記憶領域

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