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    2009

08.28

「スノウ・ティアーズ」梨屋アリエ

スノウ・ティアーズスノウ・ティアーズ
(2009/06/30)
梨屋 アリエ

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君江は幼い頃から捨てられたモノを拾う癖が付いていた。両親の離婚の影響で寂しかったせいだろうと母親は嘆くのだが、因果関係は定かではない。君江が十歳の時に母親が再婚し、今では新しい家族とそれなりに満たされた生活をしているが、使えるモノが捨ててあると、拾わずにいられなかった。高上陸とは母方の親類の家で生活していたときのお隣さんで、ガラクタで秘密基地を作って遊んだ仲だった。母親の再婚で引っ越して、陸と疎遠になったわけだが、高校で再会した。陸とはコンビと言われるほど、ぶつかり合うことを懼れずにぶつかり合える、友だちだった。

高校生の君江は、捨てられていたトルソーを持ち帰った。そのトルソーがふいに語り出す。顔や手脚がない自分はできそこないの人形だと。君江の不思議体質は、不思議体質以外に説明のしようがない。誰にも見えないものが見え、誰にも聞こえない声が聞こえ、ありえない体験をしてしまう。「不思議体質」と陸が称した君枝の体質。君江の不思議体質を最初に発見したのは、陸だった。そして、陸は君江の不思議体質に動じない唯一の人だった。何が本物なのか、時々わからなくなる。親にはどう伝えたらいいのかわからなかった。でも、そんなとき、陸と「不思議体質」の話をすると、ほんの少し楽になるのだ。

小学三年生の君江は、初恋の人の傘で空を飛び、池の水面から飛び立つガラス細工のような光る鳥の群を見送る。高校生の君江は、拾ってきた聞き分けのないトルソーに振り回され、教室を溢れ出した暖かな海面を泳ぐ。二十歳になった君江は、彼と終わったその日の夜に自分の影に落ちてしまい、幼なじみの陸は彼女と同棲を始めていた。二十六歳になった君江は、結婚して三年の月日が経ち、やや年の離れた夫に感じる空虚な気持ちを持て余していた。自分にとってほんとうに大切なもの。それに気づいたとき、喪失した。

なんとも不思議な世界観だ。だが、この著者の「プラネタリウム」がこんな感じだったことを思い出した。ありえないことが起こる不思議体質にしても、君江のそのときの想いを抽象化したと思えば、そんなに変なものではない。嬉しくって浮かれていると、空も飛べてしまえそうな気がするし、眠りにつく寸前の心地よいときには、温かな海面に漂っている雰囲気のようだし、どうしようもなく落ち込んだときは、目の前が絶望的に真っ暗になる。君江の不思議体質は君江の本心を代弁しているにすぎないと思った。

ただ、君江自身がそうとは気づいていない。よって不思議体質に振り回されて、あらぬ方向へと進んでしまう。唯一の理解者である陸とも疎遠になってしまう。お互いに思い合っていたのに、それを確かめ合わないままだ。それがなんとも切なくて、哀しくて、人生ってままならないものだと、嘆きたくなってしまう。そんなどん底のラストに著者はある思いを込めている。現実から目をそらさずに、満たされなくても、生きていこう、と。ファンタジックな世界が苦手な人は手を出すのを控えたほうが賢明です。イケるという人はどうぞ。新感覚の不思議です。

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