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    2009

09.06

「IN」桐野夏生

ININ
(2009/05/26)
桐野 夏生

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作家のタマキは「淫」という小説を書こうとしていた。テーマは、恋愛における抹殺である。本物の死ではない。無視、放置、逐電など、自分の都合で相手との関係を断ち、相手の心を「殺す」ことと規定した。主人公は、緑川未来男が書いた「無垢人」という小説の中に登場する「○子」である。緑川には愛人がいて、その存在を知った妻は激しく嫉妬する。「無垢人」は、その修羅の日々を赤裸々に書いた小説なのだ。緑川は、愛人を「○子」という記号で登場させ、あくまで緑川家の平和を侵す者として描いた。「○子」とされて、相手の女はどう思ったのか。タマキは、まず「○子」を特定し、彼女がどんな生涯を送ったのか、取材を進めている最中だった。

タマキと阿部青司が再会したのは、あの激烈に別れた日の一年四ヶ月後であった。阿部青司は、タマキの担当編集者だった。何冊か本を作るうちに、二人とも家庭があるにも拘わらず、愛し合うようになった。タマキが書き、青司が編集する。いい気なもんだと言われても、至福だった。二人は誰にも知られないように心を配ったが、恋愛の最後の頃は誰もが知っていた。互いの家族でさえも。皆に呆れられ、軽蔑され、憎まれた。それでも、二人は付き合いをやめることができなかった。互いに世界中の誰よりもよく似た二人で、最も近しい人間、誰よりも信頼できる相手、と感じていたはずだった。結果、二人は別れた。再会した青司は、かつての面影はなく、自分の見知らぬ人間になっていた。

タマキは「無垢人」に激しく引き付けられると共に、その素直さ、愚直さに嫌悪も感じる。が、その嫌悪は、小説そのものに対してだった。緑川も何かに突き動かされて書いているのだ。小説という虚構が、次々と人を吸い上げ、血祭りに上げていく。つまりタマキは、青司と自分の、相手への怒りや憎しみが消えたかどうか知りたいのだった。「恋愛の抹殺」について考えることは、とにもかくにも恋愛の「涯て」を見たい、というオブセッションに他ならないのだ。だから「無垢人」に書かれた「○子」は、その後どうしたのかが気になった。やがて「○子」は、書く人と書かれた人と書かれなかった人々の蠢く小説の此岸の涯へ、タマキを誘っていく。

本作を一言で表せば、人間の業の深さでしょうか。また、タマキが取材で会う人みんなが、気持ち悪い。業に縛られているのか、それを拠り所にしているのか。緑川未来男に関わった人たちは過去のその時を振り返り、異様に饒舌になる。それはただの思い出懐古ではない。妄執といえるものだ。ちっぽけといえば御幣になるが、でもそこには女たちの並々ならぬ思いの強さがある。そして、時間が解決するというありふれた言葉自体を著者は逆手に取っている。そんな簡単に忘れるものか。酷い仕打ちはずっと記憶に残る。その負の感情にどう自分は折り合いを付ければいいのか。最後の1ページ、めっちゃ怖かったです。


桐野夏生さんのサイン。
桐野

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comments

色々な人の色々な「想い」、読んでいて疲れました。
「業の深さ」たしかにそうですね。
妻の気持ち、わかるような気がします。
忘れちゃったほうが楽なのに、
そういう訳にはいかないんですよね。

なな:2009/09/07(月) 09:08 | URL | [編集]

ななさん
結局はそこなんですよね~。
もっと黒いものを想像してたのに^^;
でも怖かったです。

しんちゃん:2009/09/08(火) 17:54 | URL | [編集]

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2009/09/07(月) 09:05 | ナナメモ

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