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    2009

09.07

「悪党」薬丸岳

悪党悪党
(2009/07/31)
薬丸 岳

商品詳細を見る

細谷夫婦が佐伯修一の勤める探偵事務所を訪ねてきたのは十日前のことだった。依頼は、坂上洋一という男が今どこにいて、どんな生活をおくっているかを調査してほしいというものだった。さっそく坂上の足取りを調査していくと、依頼人と坂上との関係がくっきりと浮かび上がってきた。坂上は十一年前に細谷夫婦の一人息子である健太を殺していたのだ。坂上は事件から二年後に少年院を出ていた。昔の悪い仲間たちとはいまだに交遊を持ち、新手の振り込み詐欺をやっていた。調査はこれでお終りのはずだった。だが依頼者はさらなる調査を依頼してきた。あの男を赦すべきか、赦すべきでないのかが知りたい。赦すべきならばその判断材料を見つけて欲しいというのだ。

赦せる材料。佐伯の心の中には犯罪者に対する激しい憎悪が渦巻いている。佐伯自身も、かつて身内を殺された犯罪被害者遺族なのだ。そんな自分には赦せる材料など見つけられるはずがないのだ。気が乗らない仕事だが、所長の小暮に逆らうことはできない。警察を懲戒免職になり、前科がついて自暴自棄になって荒れた生活をしていたところを、小暮はこの探偵事務所に迎えてくれた。小さな探偵事務所だ。常勤しているのは佐伯と事務仕事をやっている染谷というおばさんと、所長の小暮だけだ。とても難しい依頼だ。だが、やるしかなかった。犯罪者と犯罪被害者遺族の心の葛藤を描いた「悪党」「復讐」「形見」「盲目」「慟哭」「帰郷」「今際」の七章で構成された一話完結の連作社会派ミステリ。

どんなことがあっても赦せない。たとえ刑務所で罪を償ってきたとしても、遺族の前で自分の愚かな行為に涙を流したとしても、社会的にまっとうな生活を送っていたとしても、赦すことなどできない。遺族感情としてはもっともなことだ。その一方で、犯罪の被害に遭った者にとって、もっとも苦しいのは、加害者が幸せに暮らしていると知ったときだ。加害者が自分の犯した罪をこれっぽっちも反省しないと悟ったときだ。そんなときは、憎しみの焔にさらに油を注がれたように、心の中が激しく暴れ出す。この主人公の佐伯のようにだ。

十五年前に彼の姉はレイプをされた挙句、首を絞められ殺された。当時未成年だった犯人の男三人は実刑を受けた。その者たちはすでに刑務所を出て社会に戻っている。佐伯は仕事の合間に姉を殺した奴らの行方を捜している。見つけてどうするのか。これがこの作品の縦軸であり、もうひとつ横軸となるのは、探偵事務所に依頼してきた被害者遺族と、追跡調査をされる犯罪前歴者たちだ。彼らは何を背負って今を生きているのか。また、依頼を受けざるをえない佐伯の憂鬱と、憎んでいると言っていい犯罪者と接触して何を思うのか。犯罪者の家族向けられる憎悪や糾弾を知ってどう感じるのか。

何か重大な殺害事件が起こると、メディアは一斉に犯人のことを取り上げる。何かおかしくないですか、と言いたい。被害者遺族の感情がおざなりにされすぎているように思うからだ。一番つらい思いをしているのは被害者や被害者の家族であるはず。その人たちの感情をまるで逆なでしているとしか思えない報道の仕方にイラッとくるのだ。本書は、事件当事者でないと決して知ることのできない被害者遺族の心の痛みや苦しみ、どうにもならない怒りと正面から取り組んでいる。犯罪被害者遺族は、何をもって罪を赦すことができるのか? 決まった答えなどない。決して消えることのない傷だ。これを面白いと言えば御幣があるだろうが、期待通りの満足を得られる作品だった。

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薬丸岳
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comments

こんにちは。以前コメントさせて頂いた者です。薬丸さんの作品はいつも考えさせられますね。私も、犯罪被害者やその遺族に対するメディアの取り上げ方にはいつも腹が立ちます。犯罪者に対してどんなに重い罰を与えても、被害者側の傷が癒えることは決してないのかもしれませんね・・・。
勝手ながらTBさせて頂きました。よろしくお願いいたします。

べる:2009/09/19(土) 07:44 | URL | [編集]

べるさん、こんばんは。

おっしゃることに同感です。
他に言うことはありません^^;

しんちゃん:2009/09/19(土) 17:56 | URL | [編集]

こんばんわ。
前作の「虚夢」も良かったですが、今回も良かったですね。
ところでこの作品に登場する弁護士さんにはモデルがいらっしゃるんですよね。
自分が被害者になって初めて遺族の痛みがわかるというのもズレている気がしますが、現実はそんなものかもしれませんね。

ia.:2009/10/02(金) 23:21 | URL | [編集]

ia.さん、こんばんは。
前作も本作も、デビュー作も二作目もすごかったです。
毎回重いテーマを重くさせない力量はすごいですよね。
この作家からは絶対に目が離せない。読まないと損。
社会派では今一番グッドな作家だと思っています。

しんちゃん:2009/10/05(月) 22:46 | URL | [編集]

こんにちは、しんちゃん
>これを面白いと言えば御幣があるだろうが、期待通りの満足を得られる作品だった。
 そうですね。私も「面白かった」というのは、なんだかはばかられるな・・・と思いつつ、他に表現が見つからず・・・。

天使のナイフと、これと、薬丸さんの本は2冊しか読んでいないのですが、他もこういった内容なのでしょうか? 2冊ともよみごたえがあったので、また他を読んでみたいのですが、ちょっと雰囲気の違ったお話も読みたいかな・・・と思うのですが・・・

latifa:2009/11/07(土) 14:53 | URL | [編集]

latifaさん、こんばんは。
はい、その通りです。残りの二冊もこんな感じでした。
中でも「虚夢」は個人的に一番好きな作品でした。
続けて読むともったいないので、期間を開けてチャレンジしてみてください。

しんちゃん:2009/11/08(日) 21:34 | URL | [編集]

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