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    2009

09.11

「水銀虫」朱川湊人

水銀虫水銀虫
(2006/09)
朱川 湊人

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人の魂の中に入り込んで這いずり回り、やがて無数の穴をあけてしまうという、「水銀虫」。惨劇の陰には、人の心を蝕む「水銀虫」の存在が。首筋に奇妙な蟻走感を覚えた。臍下のあたりで何か足の速い甲虫が神経の上を走っている。頭の中で何千何万もの小さな虫が蠢いている。何か小さな虫のようなものが首筋を這っていた。指先でつまんでみる。体長五ミリ程度の、金属のような質感を持った甲虫だった。「水銀虫」に取りつかれ、罪を犯した人々の、悪夢のような一日を描いた七つのホラー短編集。

「枯葉の日」
その女との出会いは、狭苦しいコーヒーショップだった。女のほうから話しかけてくる。たまたま相席になっただけの人間に、馴れ馴れし過ぎないか。以前の自分は、得体の知れない人間に話しかけられたら、なるべく相手にならずに、さっさとその場から離れるようにしていた。だが今日は、なぜかそうする気にはならなかった。少なくとも今の自分には、恐れるものはない。失って困るものはなかった。いったい自分の何が悪かったのだろう。なぜ妻は、他の男に心を移したのだろう。

「しぐれの日」
突然降ってきた雨から逃れるために、見知らぬ家の軒先を借りていた。父が私と母を捨てて他の女性に走ることがなければ、そして母がアルコールに溺れて身を持ち崩さなければ、もし家に居場所があったなら、私はこんな雨の日にも家にいることができたはずだ。どこからか、聞き覚えのない女の人の声がした。斜向かいにあるアパートの二階から、女の人が、私に向かってほほ笑みかけていた。こっちに来ない? 見知らぬ人の誘いに戸惑いはしたが、お姉さんは私を部屋に迎え入れてくれた。

「はだれの日」
十七歳を目前に自殺した姉。明るく優しい性格で、直前までそんな素振りはなかったのに、なぜ。背後には、死神のような女生徒の姿があった。あの女がいなければ、姉さんは死なずに済んだ。世の中には、ただ生きているだけで害悪を振りまいている人間が、確かに存在する。母があんな風になってしまったのも、間違いなくあの女のせい。あいつのために、僕の家はメチャメチャになった。僕があの女を殺したのは間違いない事実。もちろん、殺すつもりで刺した。

「虎落の日」
健斗は長男夫婦の子供だが、半分は富士子が育てているようなもので、健斗には二つ家があるようなものだ。二つ年上の遼平とよく遊んだのも、富士子の家だ。その遼平が亡くなってから、雅恵の精神が不安定になっているという。最愛の孫を亡くした祖母が、まともな精神状態でいられるはずがないのだ。富士子と雅恵の付き合いは三十年近くなる。顔を合わせるのは、二ヶ月ぶりだ。玄関を開けると、妙に生臭い風が中から吹いてきた。このまま帰ったほうが。その匂いをかいだ瞬間、なぜか唐突に富士子は思った。

「薄氷の日」
通りはきらめくイルミネーションに満ちていた。今日はクリスマス・イブだ。けれど、きっと自分より幸福な人間はいないだろう、と奈央は思った。良輔はまだ三十歳だが、ITビジネスで一山当てた若き経営者ということになるだろう。つまり良輔は、結婚相手としては超一級品なのだ。奈央は玉の輿に乗る権利を獲得したようなものだ。ふと、雑踏が怖く思えた。何せ、今日はクルスマス・イブ。年に一度、あの怪物が姿を現す日だからだ。秀美は、奈央の中学の同級生である。彼女こそが、クリスマスの怪物だった。

「微熱の日」
今日、学校の帰り道に、基地に行こうと誘われた。何でもお兄さんの車から、すごいヤツを見つけたらしい。体調が十分でない慎也はパスしたい気分だったが、そうも行かなかった。子供の世界にも見栄だの付き合いだの、いろいろあるのだ。信也は一真の後ろについて、薄暗い山道を登っていた。二人が登っていたのは、村のはずれにある草深い山だ。山道を登り続けた途中、東京から越してきた転校生と出会った。山ウロを祀っているお堂の調査に行くという。実はそここそが、信也たちの秘密基地なのだ。

「病猫の日」
八重樫が大学の図書館に籍を置いて、すでに十年が過ぎようとしている。三十代半ばで、総合部長という風変わりな肩書を得ていた。自宅マンションに着いて、エレベーターに乗る。毎日、この瞬間には、必ず同じことを考える。今日も妻の綾子は、ちゃんと生きているんだろうか。綾子は重度のうつ病だった。すべてが八重樫の肩にのしかかった。がんばったつもりだ。いつのまにか八重樫は、部下の会田奈緒子に心の安らぎを見出すようになっていた。その奇妙な男の姿を見たのは、それから数日後のことだった。

身体に這う水銀虫を想像して、身体のあちこちが痒くなってしまう。同じように読後感も悪い。だがこういうホラー作品は嫌いではない。面白かったのは、「枯葉の日」「はだれの日」「薄氷の日」「微熱の日」「病猫の日」という理性を失った主人公が狂気に身を委ねる作品だった。どうしても受け付けられないのは「虎落の日」という作品。ホラーではよくあるパターンだけど、これは絶対無理。人肉を食っちゃダメでしょう。

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朱川湊人
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