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    2009

09.16

「骸骨ビルの庭」宮本輝

骸骨ビル 骸骨ビル2
骸骨ビルの庭(上) 骸骨ビルの庭(下)

物語の舞台は大阪の十三。その堅牢な三階建てのビルは、昭和十六年に英国人の設計家によって建てられた。正しくは杉山ビルヂング。屋上に何本も物干し竿を突き出し、それが人間の骨のようにも見える杉山ビルは、いつしか十三界隈に住む人々から骸骨ビルと呼ばれるようになった。その骸骨ビルの住人を立ち退かせるため、八木沢省三郎は管理人として赴任した。四十七歳の八木沢は、大手家電メーカーを依願退職し、上司のすすめで住宅開発会社に再就職した。そして最初に与えられた仕事が、この骸骨ビルだった。

敗戦後、奇跡的に焼け残った骸骨ビルはGHQに接収される。その後、施主の杉山轍太郎の妾腹の子であり、正当な相続人である阿部轍正が引き継いだ。復員後、骸骨ビルに居を定めた阿部と友人の茂木泰造は、食料にも事欠き、庭で野菜を作りながら、共に親代わりになって戦災孤児たちを育てた。だが阿部はそのうちのひとりである女性から、かつて性的暴行を受けたと訴えられ、その騒ぎの渦中に、心筋梗塞によって息を引き取った。平成元年のことだった。阿部の死によって、それまでなりをひそめていた杉山の甥たちが、ビルの相続権を主張してきた。

ところが思わぬ事実が判明した。何度も性的暴行を受けたと訴え出た桐田夏美と杉山の甥が裏でつながっていたのだ。事件としては時効が成立しているにもかかわらず、それでもあえて訴え出たのは、骸骨ビル乗っ取り計画の筋書き添ったのに違いない。茂木泰造とかつての孤児たち住民は、この骸骨ビルを我が物としたいがために、ここに居座っているのではない。阿部轍正に着せられた冤罪と汚名を晴らすまでは、夏美が自らの口で真実を明かすまではこの骸骨ビルを出ないと茂木は主張する。

クセのある住民たちが視点となる主人公のヤギショウこと八木沢を迎える。育ての親のひとりで好々爺然とした茂木泰造。彫金師を生業とするチャッピー。大型トレーラーの運転手をするトシ坊。おかまバーでオーナーをしているナナちゃん。SM雑誌の編集をしているヒデトくん。人材派遣会社を営む木下のマコちゃん。探偵事務所を経営しているサクラちゃん。ダッチワイフの開発研究をしている市田の峰ちゃん。女手ひとつで食堂を経営する比呂子。日本粉新聞社という謎の出版社で社主をしている菊田の幸ちゃん。暴力団の若頭をしているヨネスケ。

ヤギショウは何もしない。ただ第二の人生を自問自答し、ずっと暮らし続けている。自分の意志でそうしている。立ち退き交渉をしようとはせず、比呂子の店でキャベツを刻み、料理を教えてもらい、ナナちゃんに教えてもらった本を読み、畑仕事をして骸骨ビルの庭に野菜を復活させようとしている。それどころか、みんなと仲良くなって、骸骨ビルの住人たちは訊かれてもいないのに自分の来歴をヤギショウに話して聞かせている。いつのまにか、阿部轍正と茂木泰造に育てられた戦争孤児のひとりみたいに溶け込んでいる。

まだ当時二十代だった阿部轍正と茂木泰造という前途ある青年は、なぜ一度も結婚せずに血のつながりのないたくさんの孤児たちのために一生を費やそうと決めたのか。ヤギショウに脅迫状を書いたのは誰か。意固地に骸骨ビルに居座る茂木のたくらみとは。かつて阿部と茂木と子供たちの生活空間であった金属の壁で密閉された一階の幾つかの部屋の謎。そうした小さな謎が解かれることによって、大きな謎が解けていく。上下巻二冊を読み終えた時、心地良い余韻が胸に広がってきた。


宮本輝さんのサイン。

宮本

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