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    2009

09.24

「床屋さんへちょっと」山本幸久

床屋さんへちょっと床屋さんへちょっと
(2009/08)
山本 幸久

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宍倉勲は二十代半ばで父が興した会社を引き継いだが、十五年後に敢えなく倒産させてしまった。罪悪感をぬぐえないまま再就職し定年まで働き、もうすぐ「人生の定年」も迎えようとしている。だが、そんな勲の働く姿こそが、娘の香を「会社」の面白さに目覚めさせて―「仕事」によって繋がった父と娘を、時間をさかのぼって描く連作長編。《出版社より》

勲は今年で七十三歳になる。ひとり娘の香が勇の手をひいて、勲の住まいに現れたのは一週間前だ。四十一にもなって子供がいて、自分のことしか考えられないとはどういうことだ。そう言ってやりたいのを勲はこらえた。勇の前でそれはできない。勲は孫の勇と一緒に自分のお墓の下見に出かけることになった。(「桜」)

勲は五年前に繊維会社を定年退職している。隠居の身といえばきこえはいいが失職したようなものだ。香は、十人弱の女性だけの会社を経営している。紹介したい男の人がいるの。娘のお相手は布田透。香より二つ年下の三十一歳、おもちゃメーカー勤務の男だ。勲はお義父さんとまとわり付く布田透とふたりきりで一夜を過ごすことになった。(「梳き鋏」)

海外工場への視察出張に訪れている勲に娘から電話があった。香は昨年、大手の広告会社に就職ができた。ところがボーナスをもらったあと、その会社を辞めてしまった。そして今度、自分で店を開こうかと思ったので、お金を貸して欲しいと言ってきたのだ。企画書を出させてみたところ、その内容は正気とは思えなかった。(「マスターと呼ばれた男」)

結婚したら女は会社を辞めるって決まっていることなの? 十七歳の香は勲に訪ねた。極端にいえばそうだ、と答えかけたが、極端でなくてもそうだった。結婚をして子供ができて、さらには会社で仕事をしている女性を勲は知らない。その後日、勲は既婚者で子供もいる働く女性に出会い、どうしてそれができるのかを教えてもらう。(「丈夫な藁」)

勲夫婦は家出をした娘を迎えに、雪深い田舎町へと列車に揺られやって来た。十四歳の香はなにが気に入らないで家出などしたのか。いつから娘のことがわからなくなったのだろう。あなたにはなにもわかっていない。勲には妻の睦子の目が、そう訴えているように見えた。娘のことも、そしてあたしのことも。(「テクノカットの里」)

今年十歳になる香が、お願いがあると言い出した。夏休みの宿題で、父親の職場を取材し、それについてレポートを提出するのだと言う。香の独占密着取材は本格的で、メモ帳を片手ににらむような視線でいる。これでは取材というより監視。ほとんど尋問である。さらに全体会議に、娘がでていいことになったとき、勲は怯んだ。(「ひさしぶりの日」)

社員達はなにかにつけ、勲を父と比較した。先代はそうなさらなかったでしょう。亡くなられた前社長の意向に逆らうことになります。会社や工場の中を父の亡霊がさまよっている気がしてならない。五年前から社長賞をはじめた。社員の士気をあげる名目であったが、勲にすればそれは父の亡霊をふりはらうための儀式だった。(「万能ナイフ」)

香の父は去年亡くなった。香が社長をつとめる会社は最大のピンチをむかえていた。社員は自分を含めて六人になり、さらに三人辞めてしまった。そこに、父の勲が三十年前に潰したシシクラ製菓の棒付きアイスキャンディを復活させ、限定販売をする企画が持ち込まれた。こうなったらなんだってやってやる。(「床屋さんへちょっと」)

父の事業を潰したという負い目を背負い続ける勲は、誠実に真面目に働きつづけている。そんな父の姿をずっと見つめていたのが、娘の香。結婚したら女は会社を辞めるって決まっていることなの? そう問いかけた少女は、小さい頃から会社で働くことに関心と憧れを持っている。しかし大人になった娘は、何を考えているのかワガママ娘でしかななかった。

尊敬するにせよ、ああいう人になりたくないと嫌悪するにせよ、そこには父の働く背中があったはず。だが、いつの時代の彼女にしても、それが伝わっていないのがもどかしい。さらに大人になるにつれ益々現実離れした痛い女性になっていく。でもいつか気づくことがあるのかもしれない。たとえそのとき分かっていなくても、親の働く姿を見ていたのだから。

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山本幸久
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comments

過去に遡っていくので、ちょっと戸惑いましたけど、一つ一つのちょっとしたエピソードが繋がっていて、嬉しくなりましたね。
浦辺が追い出した社長の庶子って奴は、こいつか~!と思ったり、槙さんや長島さんの息子が出てきたりと、勲の人生ってよかったん~としみじみしちゃいました。

最後、寂しかったですけどね。

じゃじゃまま:2009/12/11(金) 14:56 | URL | [編集]

じゃじゃままさん
ふつうとは逆バージョンの流れでしたね。
親父の頑張る姿は良かったです。
でも娘の香は…ねえ。^^;

しんちゃん:2009/12/14(月) 10:07 | URL | [編集]

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床屋さんへちょっと(山本 幸久/著)


「おっ、今度は理容師さんのお仕事小説か」という予想はまるっきり…

2009/10/04(日) 05:39 | 活字中毒のブックレビュー

床屋さんへちょっと 山本幸久著。


≪★★★☆≫ 宍倉勲は、父から受け継いだ製菓会社を倒産させてしまった後、繊維会社に再就職し、定年まで勤め上げた。 隠居生活を送っている勲たち夫婦の元へ、一人娘の香が孫を連れて実家に戻ってきた。 そこから勲と香、家族の物語は始まる。そして章を追うごとに過去

2009/12/11(金) 14:45 | じゃじゃままブックレビュー

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