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    2009

09.25

「ヘヴン」川上未映子

ヘヴンヘヴン
(2009/09/02)
川上 未映子

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四月が終わりかけたある日、僕のふで箱に〈わたしたちは仲間です〉と書かれた手紙が小さく折りたたまれて入っていた。手紙はいやがらせ以外には考えられなかった。二ノ宮たちは僕の斜視を「ロンパリ」と嗤い、あたりまえのように蹴られ、殴られ、走らされたりする。手紙は彼らが見つけた新しい遊びかと暗い気持ちになっていた。ところが手紙の差出人はおなじクラスのコジマというもの静かな女生徒だった。彼女もまた、家が貧乏であること、不潔だということでクラスの女子から苛められている生徒だった。

友達になってほしいの。コジマがなにを言っているのかわからなかったけれど、僕は反射的に肯いていた。その日をさかいにしてぼくとコジマは手紙をやりとりするようになっていた。僕は当然のことながら以前とはまったく違う気持ちでコジマのことを意識するようになっていた。僕はコジマが女子たちに苛められているのを見たりきいたりすることが、どんどんつらくなっていった。僕が苛められているのを見られていると思うのもつらかった。でも僕はいつだってそこから目をそらして、見てみないふりをつづけているだけだった。

僕とコジマは夏休みの最初の日にヘヴンを見に行くことにする。ヘヴンがなんのことでどこに行くのかも気になったけれど、それよりもコジマとふたりで会って、どこかへでかけるということが僕にとっては一大事だった。その一日を過ごした後も、僕はコジマのこと、学校のこと、斜視のことを考える。そして、約一ヶ月ぶりに会うコジマは、両親の離婚のこと、神様のこと、自分が汚くしているのは生活苦にあるお父さんを忘れないためのしるしであることを語る。僕の世界に明るい面をくれたコジマとの友情は、永遠に続くはずだった――。

主人公の僕は日常的に暴力を受けている。暴力を受けるようなことはなにもしていない。なんで、君たちはこんなことができるんだ。どうして、あんな無意味なことができるんだ。誰であれ、誰かに対してこんな暴力をふるう権力はない。僕はいじめの首謀者と行動を共にする百瀬に言葉を投げかける。それに対する百瀬は、すべてのことに意味はないという。誰でも良かった。たまたまそこに君がいて、たまたま僕たちのムードみたいなのがあって、たまたまそれが一致しただけのことでしかないと。

いじめを受けたくないんだったら、首謀者の二ノ宮をどうにかすればいい。自分で身を守ればいいんじゃないか。単純なことじゃないか。殺せるんなら、殺せばいい。したいことをすればいい。誰も君を止める権利は持っていない。でも問題は、なぜ君は殺す動機とかタイミングがじゅうぶんあるのに、いま現在誰も殺していないことだ。とにかく、君はそういったことができないし、したくない。でも僕たちはどういうわけか、殺さないまでも、それができてしまう。そして僕はそれが楽しくて仕方がないという。

その対極にいるのがコジマだ。主人公を仲間と認識したコジマは、クラスのみんなは何もわかっていない、自分たちのしていることの意味がわかっていない、人の痛みなんて考えてないという。だから、わたしたちのこの弱さで、このありかたを引きうけて生きていくのは世界でいちばん大切な強さで、虐げられて、苦しめられて、それでも乗り越えようとする儀式なのだという。コジマはなにか得体の知れない殉教者のような信念を強く持つようになり、少しずつ遠い存在になっていく。やがて決定的な決別のときがくる。

そして僕はたったひとりになる。これまでいたひとつの世界が死をむかえたのだ。僕は新しい世界に一歩を進めるしかない。斜視の手術は成功し、僕が見たその光景は、それは終わりの場所であり、始まりの場所である。世界は見るものによって違う。同じ時を過ごしていても、わずか数十センチ隣にいても、見える光景が違う。倫理や思想、観念や善悪というフィルターを取り除いたとき、その目に映る光景はヘヴンなのだろうか。僕はヘヴンを見ることができたのだろうか。


川上未映子さんのサイン会に参加してきました。そして何かひとこと書いてくださいとお願いしてみました。すると、「うれぱみん」と、読んだ人にだけわかる言葉を頂きました。すごく素敵な言葉です。どういう意味か知りたい方は、48ページを参照してみて下さい。

川上2

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川上未映子
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comments

こんにちは★

かなりの方が絶賛してる作品のようですね★
読みたい!

次は、これを読んでみよう(* ̄∇ ̄*)

最近、また読書欲が出てきました♪
「武士道エイティーン」も読みましたよ
(〃∇〃) てれっ☆

つたまる:2009/10/05(月) 00:32 | URL | [編集]

つたさん
文体や言葉がまず、これまでと違って普通でびっくり。
いじめ、いや~んという内容ですが、双方の言い分が頷ける。
そしてそして、終盤には…。傑作だと思いました。
つたさんも、ぜひぜひ!

なんか誉田さんって、いつの間にか全国区になりましたね。
嬉しい反面、自分たちだけだった誉田さんが遠くなりました。
応援し続けますが、これを寂しく思うのってありですよね。

しんちゃん:2009/10/05(月) 23:06 | URL | [編集]

しんちゃん、こんにちは。

うれぱみん^^
面白い言葉でしたよね♪
コジマは前衛芸術の絵を美術館に見に行ったり、言葉選びも面白かったし、なかなかセンスのある女子だったのかな・・・と思いました。

いいですね~!サイン本。川上未映子さんご本人を間近で見られたんですね~♪
コジマはどこか川上さんに似てる部分があるんじゃないかな・・・と、読みながら勝手にそう感じていました。

latifa:2009/10/23(金) 13:27 | URL | [編集]

latifaさん、こんにちは。
うれぱみん。読まないと、なんのことやら~。
でも、素敵な言葉をいただきました。
もちろんお会いしたご本人も素敵な方でしたよ!
その後、NHKの「スタパ」を見てびっくりしましたけど^^;

しんちゃん:2009/10/24(土) 11:35 | URL | [編集]

TBさせていただきました。
読み終わった気分は・・・微妙です。
「うれぱみん」のサイン本、うらやましい限りです。

時折:2009/10/27(火) 12:43 | URL | [編集]

時折さん、こんばんは。
いじめがテーマですからねぇ。
微妙な気持ちもわかります^^;

しんちゃん:2009/10/28(水) 18:36 | URL | [編集]

はじめまして。

TBありがとうございました。
ブログ移住したばかりで、TBの設定が承認設定になっちゃってました。直して、頂いたTBも承認しておきました!

「うれぱみん」のサイン本、すごくうらやましいです。「うれぱみん」自体は出てきたときに「こんなこと言っちゃう子はやっぱ痛いなー」って思ってましたが。

また訪問させて頂きます。

iNee:2009/12/27(日) 00:12 | URL | [編集]

iNeeさん、はじめまして。
「うれぱみん」の言葉を著者より貰いましたが、その時点では未読で意味不明でした。
読んで思ったことは、すごくいい言葉を頂いた!ということ。

また訪問してください。またこちらからも訪問させてもらいます。

しんちゃん:2009/12/27(日) 23:13 | URL | [編集]

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「ヘヴン」川上未映子 げんなり・・・・


最後の方で、何かどんでん返しとか、凄く明るいシーンとかあるんじゃないか?とイジメの辛い描写を耐えて読んでいたのに、私的には、ああぁ・・・これでお終いか・・・と思ってしまったので・・・2つ★半~3つ★ ただ、ぐいぐい読ませる文筆力はありますね。

2009/10/23(金) 13:23 | ポコアポコヤ

川上未映子『ヘヴン』


内容(「BOOK」データベースより) 「僕とコジマの友情は永遠に続くはずだった。もし彼らが僕たちを放っておいてくれたなら―」驚愕と衝撃、圧倒的感動。涙がとめどなく流れる―。善悪の根源を問う、著者初の長篇小説。 善悪の根源を問う、か。  ううむ、印象はちょっと...

2009/10/27(火) 12:39 | 時折書房

ヘヴン – 川上未映子


川上未映子さんの「ヘヴン」。 「いま思うこの世」を揺すられるような鮮烈イジメ小説。 すごく暗いテーマでありながら、読んでいても全然卑屈にならないような真っ直ぐさを感じました。書いてあることに対して、正解だの不正解だのと言う権利はもはや、ないんじゃないかと...

2009/12/26(土) 21:10 | iNee Books

川上未映子(著)「ヘヴン」★★★★★


 「第20回紫式部文学賞」受賞作、川上未映子の長編小説「ヘヴン」  川上未映子にしか書けない傑作です。 ヘヴン価格:1,470円(税込、送...

2010/09/29(水) 17:26 | 子育てパパBookTrek(P-8823)

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