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    2009

10.01

「あるキング」伊坂幸太郎

あるキングあるキング
(2009/08/26)
伊坂 幸太郎

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仙醍キングスは、地元仙醍市の製菓会社が運営しているプロ野球球団だ。負けて当たり前、連勝すればよくやったと感心されるチームだった。仙醍市に住むからといって、誰もが仙醍キングスのファンだ、ということはない。むしろ地元の汚点である、と憎んでいる者も少なくなかった。それでもファンはいる。山田亮は仙醍市で生まれ、それから三十二年間仙醍市から出て生活をしたことは一度もない。妻の山田桐子も同様だった。二人は、地元球団である仙醍キングスのファンであり、その熱意は一般のファンの程度をはるかに超えていた。

山田王求。「王が求め、王に求められる」ようにと名づけられたひとりの少年は、名将・南雲慎平太監督と死と同じ日に生を受け、仙醍キングスに入団して球団再生の大活躍をするという、両親の期待を一身に背負わされて育っていく。王求はわずか三歳で天性の才能を開花させる。ピッチャーが投げた球がストライクかボールかの判断を直感的に行えるのだ。さらにたゆまぬ努力で身体能力を向上させた彼は、リトルリーグ、高校野球を経て、プロ野球のスカウトが注目するほどの才能と力が備わった凄い選手になっていた。

突然、高校を中退した王求だが、仙醍キングスのプロテストにその姿を現わした。万年最下位の仙醍キングスのプロテストなど、落ちこぼれも落ちこぼれ、箸にも棒にも引っかからず、そのくせプロ野球選手への夢を捨てられなくて、もはやどの球団でもかまわないと思うような人間が集まってくるだけなのだ。王求は打撃でホームランを打ち続けた。球団オーナーの一言で、仙醍キングスに入団が決まった。そんな彼の周りには、黒衣装の三人の女、咆哮する緑色の獣、背番号5のユニフォーム姿の男が、いつの時代にもあった。

無機質のように淡々と進むストーリーは、これまでの伊坂作品とはあきらかに違う。全てが混沌としていて、「王」になることを定められた王求の生まれる瞬間から、三歳、十歳、十二歳……、二十三歳と、王求の周囲の者によって語られてゆく。なにか人間では計り知れない大きな力が動いている。運命とはまた違う。王様すらコントロールしていく大きな力だ。その象徴としてたびたび登場するのが、三人の魔女であり、咆哮する獣である。

天気のようにすべてを受け入れる王求、両親の王求に求める狂気、理不尽にも王求に悪意を持つ人物のように、痛い人とか、人の困惑や妬みなど、人の嫌な部分や負の感情が渦巻いている。内面をまったく見せない王求だが、最後の最後に、胸の内をそっと打ち明ける。俺がいることで、野球はつまらなくなっていないだろうか。いつもヒットかホームランを打ち、それ以外はフォアボールかデッドボールという天才にも、胸に悲しみや不安を抱えていたことを読者は知る。

はたして王求は王の力を超えた神から解放されることができたのか。それともすべては輪廻する? 賛否でいえば、どうやら否の意見のほうが多いようだ。だが個人的には、淡々とした口調が心地良く、言い訳のない感情の直球も好みで、すごく満足感を得られた作品だった。不思議な説得力があり、今までの伊坂作品にはない傑作だと思う。


二冊目となる伊坂幸太郎さんのサイン。

伊坂2

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伊坂幸太郎
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comments

しんちゃん☆こんばんは
良く分からないんだけど惹き込まれてしまう作品でしたね。
みんな淡々としていて、それなりに悟っているようでって感じが好きです!

Roko:2009/10/02(金) 00:01 | URL | [編集]

Rokoさん、こんばんは。
伊坂が文学を書くとこうなりましたという感じでしょうか。
個人的に文学は苦手ですが、これならアリでした。
いや、すごく面白かったです。

しんちゃん:2009/10/05(月) 22:36 | URL | [編集]

今までの作品とは異なる作風でしたよね。どう評価していいか難しいところです。
正直決しておもしろいとは言えず、でもどこか引きこまれるところもあって。
ただあれだけの天才の王求の人生が、とても悲しいものに思えてしまいました。

masako:2009/10/23(金) 10:12 | URL | [編集]

masakoさん
そう思う方がほとんどでしょうね。
これまでと違いすぎる作風ですから。
でも社会に対する根っこの部分は同じものがあったと思いました。

しんちゃん:2009/10/24(土) 11:29 | URL | [編集]

王求が、自分がいることで野球がつまらなくなるんじゃないかって考えるところ、切なくなったんですが、そういえば彼が内面を見せたのはそこくらいでしたね・・。
読むのは楽しかったんですが、それにしても不思議な物語でした。

june:2009/11/30(月) 19:13 | URL | [編集]

juneさん
不思議な作品ですが、変わった考えを持つ人が登場するのはいつもと同じでした。
文学とエンタメの違いだけのように思いました。

しんちゃん:2009/12/01(火) 14:23 | URL | [編集]

こんばんわ。
TBさせていただきました。
とても面白かったです。
伊坂さんらしい様ならしくない様な。
不思議な作品でした。
でも、切なくて悲しかったです。
王求は幸せだったのかとそればかり考えてしまいました。

苗坊:2010/01/15(金) 00:21 | URL | [編集]

苗坊さん、こんにちは。
不思議だけど不思議じゃない。
でもやはり不思議な作品なんでしょうね。
賞レースから外れるためにワザと?
うがった見方をする自分がいます^^;

しんちゃん:2010/01/17(日) 12:08 | URL | [編集]

私はあまり好きではなかったです。
こう回りくどいよりも、ならば直球で熱い野球バカな物語の方がまだよかったですね~。

わざわざこんな意味不明の登場人物出さなくてもいいじゃ~~ん、って思ってしまいました。
文学は駄目ってことですかね?(苦笑)

じゃじゃまま:2010/03/12(金) 20:55 | URL | [編集]

じゃじゃままさん
返事に困るコメントを頂きました。

うーん、うーん、パス。(だめかな)

しんちゃん:2010/03/12(金) 23:38 | URL | [編集]

一気に読み終えました。すべてを達観したような俯瞰的な目線が、王求の人生を早送りで見ているようで、一瞬も目が離せずページをめくる手が止められませんでした。

みゅうみゅう:2010/04/26(月) 22:09 | URL | [編集]

みゅうみゅうさん。
作品の世界観にぐいぐい引き込まれました。
でも伊坂作品だから賛否が別れるのでしょうね。
もしこれが新人作家のデビュー作だったとしたらどうなんだろう。
自分は絶賛していたと思いますけど。


しんちゃん:2010/04/27(火) 22:33 | URL | [編集]

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