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    2009

10.16

「いっぺんさん」朱川湊人

いっぺんさんいっぺんさん
(2007/08/17)
朱川 湊人

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田舎で出合った8つの不思議ストーリー。

「いっぺんさん」
百葉箱より小さい祠は、昼間でも薄暗い森の中では、ただひっそりとあった。繁った木々に半分飲まれかけていて、友だちのしーちゃんが目ざとく見つけなければ、私たちは気づかずに通り過ぎてしまっていただろう。これでしーちゃんの願いを叶えることができると、小学四年生だった私は単純に信じた。なぜならその祠こそ、どんなお願いでも一回だけなら叶えてくれる神様。いっぺんさんだったからだ。早く大人になって、白バイ警官になりたいという、しーちゃんの夢。

「コドモノクニ」
お母さんは、和子を産んですぐに、出ていってしまった。お母さんはきっと雪女だったので、お兄さんと自分を置いて、東京に行ってしまった(「ゆきおんな」)。どうしよう。隆志はよく行く文房具家さんでドロボウしてしまった。その時、お母さんが帰ってきた(「いっすんぼうし」)。なんという生き物なのか、純一にはわからなかった。動物に悪戯するのは、楽しいもの(「くらげのおつかい」)。お母さんと新しいお父さんと暮らすより、やっぱりお父さんと弟いた方が、真理恵はずっと幸せだった(「かぐやひめ」)。

「小さなふしぎ」
大黒柱の父が大病を患って、私たちにはアメ玉一つを買うお金もなかった。幼い弟や妹を不憫に感じることがあり、私が考えたのは、空き瓶を集めて酒屋さんに持って行き、換金してもらうことだった。ある時、遠い街に集めに行って、迷子になってしまった。そんな私に手を差しのべてくれたのが、近所に住んでいる「鳥使い」の中山さんだった。中山さんはヤマガラに芸をさせる“小鳥のおみくじ”を商いにしていた。商売に使う小鳥は三羽いたが、中でもチュンスケはどの鳥よりも元気で、仕事熱心だった。

「逆井戸」
俺は今年、ちょうど三十歳になった。会社をリストラされ、彼女にもふられ、自分を鍛えるつもりで、バイクで西へと旅に出た。ある日、俺は奇妙な女に出会った。場所は、小汚い食堂だった。その数時間後、俺は女に誘われて、近くのラブホテルにチェックインした。私の妹のところにも行ってみない。そこは若い女の子しかいない面白い村だという。でも、二日以上いてはだめ。女の言葉通り、その村は若い女ばかりだった。女たちは入れ替わり立ち替わり、俺の元にやってきた。完全ハーレム状態だった。

「蛇霊憑き」
あの子が、アケミが、もうこの世にいないなんて。まだ二十歳の妹が、どうしてあんなむごたらしい死に方をしないといけないのか。辛い病気も克服して、ようやく元気になったというのに。田舎というのは、ただでさえ刺激が少ないところ。他人の噂話に興じることが、娯楽のひとつになってしまうのは仕方のないこと。きっとアケミのことも、さんざん言われていたことだろう。頭がおかしくなっているとか、誰とでもすぐに寝る女とか。今さら隠そうとは思わない。確かに妹は、自分が蛇女だと吹聴していた。

「山から来るもの」
自分がいるばかりに、母親はバツイチ同士の恋を楽しめない。中学生の阿佐美は、母の人生を邪魔したくないという気持ちだけで、叔父夫婦と同居している祖母の家で正月を過ごすことにした。田舎の夜は怖くなるほど静かだった。その足音は、少しばかり奇妙だった。阿佐美は窓を少し開けて、外を見た。麦藁帽子の男は、門の前にあった白いものを拾い上げた。夕食の後片付けの時に、祖母が残飯をまとめていたのを思い出した。だとしたら祖母は、わざわざ残飯を用意していたことになる。あの奇妙な人間のために。

「磯幽霊」
私はかなりの時間、その浜で過ごした。やはり気になるのは、病床にある叔母のことだった。覚悟しておかなければならない。そう思いながら後を振り向いた時、背後に若い女性が一人、いつのまにか立っていた。女性は落としてしまったイヤリングを探していた。その次の瞬間である。ヒステリックな声で叫んだのである。今にも噛み付いてきそうな犬のような顔つきに変わっていたのだ。彼女に背を向けた。その瞬間だ。何かが私の両腕をガッチリつかんだ。どういうわけか私は海に落ちていた。

「八十八姫」
君を思うと、今でも辛くなる。あの日、連れ去られていく君を追って、僕は夜の山を走った。八十八姫さま。村に生まれ育った者は、その名を自分の親の名前より先に覚える。八十八姫さまが村を守ってくださる。その頃、僕らは十一歳だった。僕は君のことが大好きだった。だからこそ、僕は思う。あの櫛を僕が拾わなければ。君に渡さなければ。その櫛こそが、山の中にいる八十八姫さまからの“お知らせ”だったのだ。姫さまが八十八年に一度、まさか本当に村の女性の中から後継者を選ぶだなんて。

表題作の「いっぺんさん」は、一作目から泣きそうになったほど秀逸だった。「コドモノクニ」は、子供の頃を思い出した。悪いことをすると、ちんどん屋さんに連れていかれると、親に脅されたものだ。「小さなふしぎ」は、全然怖さはない。とにかく切なくて、いじらしい。「逆井戸」は、女性がひくような男のさが。逆バージョンはどうでしょうか? えっ、ありえないって。「蛇霊憑き」は、結末が見えてしまうが、生臭い匂いが、かなり怖かった。「山から来るもの」は、得体の知れないものより、人の心の方が怖かった。「磯幽霊」は、薄味で後に残らない。「八十八姫」は、あふれる切なさにグッときた。そして、ラストが美しい。

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朱川湊人
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-:2012/05/29(火) 15:41 | | [編集]

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2009/10/19(月) 20:24 | まったり読書日記

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