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    2009

10.20

「神様のカルテ」夏川草介

神様のカルテ神様のカルテ
(2009/08/27)
夏川 草介

商品詳細を見る

栗原一止は、本庄病院に勤務する五年目の内科医である。信濃大学医学部を卒業したあと、松本平の中ほどに位置するこの病院に我が身を投じた。本庄病院は病床四百床で、地方都市の一般病院としては相当に大きい。一般診療から救急医療まで、幅広い役割を果たす地域の基幹病院である。所属する消化器内科には、栗原を除けば部長の大狸先生と副部長の古狐先生しか医者がいない。これだけの戦力で、外来、病棟、内視鏡検査、夜間緊急処置などのことごとくに対応しなければならない。むろん病院も大々的に医師を募集しているが、そう簡単にこの地方都市の一病院に医師がやってくるはずもなく、仮に来てくれたとしても、そのあまりに劣悪な環境にあきれ果てて、じきに去るのが関の山である。

夜になると日中とは違う名札を渡される。「救急医」である。実に便利な名だ。もちろん名札がどんなに見事に変わっても、つけている人間は日中と同じ内科医である。慢性的医者不足のこの町では、外科でも内科でも耳鼻科でも皮膚科でも、ひとりの「救急医」が診療を行う。むろん良いわけがない。しかし、これも地方病院の現状なのだ。現場にとって重要なのは、医者か医者でないか、ということくらいであろう。救急車のサイレンは深夜でも途切れず、それを受け入れるのは、睡眠不足の医者と経験不足の研修医だ。睡眠を三日取れないことも日常茶飯事だ。「24時間、365日対応」などという看板は、むろん患者にとってみればありがたい看板であろうが、内側から見れば、まるっきり張り子の虎だ。

夏目漱石を愛読し、その影響でいささか古風な話しぶりから変人扱いされている栗原は、有能で美人の看護師と、外科医としては優秀だが、アホウで黒い化け物の同僚と助け合いながら、日々の診療をなんとかこなしている。特段の志があって働き続けているわけではない。一握りの信念と吹けば飛ぶような使命感だけが、かろうじて我が身を支えている。また、もともとは旅館だった下宿「御嶽荘」にはたくさんの人間が住んでいる。住みついてすでに五年。帰らぬ日が多いとはいえ、これだけ長く住んでいると、さすがに親しい人間もできてくる。男爵や学士殿という誇り高き路傍の人と酒をくみ交わしては激論を戦わせ、居酒屋「九兵衛」ではゆっくりと名酒を味わう。

そんな栗原に、最近、しきりに母校の医局からお誘いの声が掛けられている。本庄病院などやめて、大学に来ないか、と。大学に戻れば休みも増え、山岳写真家として世界を飛び回っている愛しい細君のハルと過ごす時間が増える。大学でしか学べない高度医療というものもある。多くの医者に会い、技を磨き、知識を深め、さらに高みを目指すことができる。だが、目の前の患者たちを置いていくのはいやだ。大学病院や大病院に手遅れと見放された患者たちと、精一杯向き合う医者がいてもいいのではないか。治療だけが医者の仕事ではない。悩む栗原の背中を押してくれたのは、いつもすまなそうな顔をしている癌を患った高齢の患者さんからの思いがけない贈り物であった。

笑えるユーモアあり、泣ける感動あり、優しさに心が温かくなり、疲弊した地方医療の中で働く姿に応援したくなる。それにクセのある人ばかりだけど、みんないい人ばかりだ。細君とのラブもめちゃめちゃ可愛い。崩壊した医療をテーマにしておきながらも、そこに重さ感じさせず、とてもあたりがよかった。「である」調の話しぶりにしても、慣れれば心地良いリズム感を与えてくれる。最先端の医療機器を備えた大病院も必要だけど、こういう患者と向き合う先生がいる病院もあるべきだと思った。特に大きな事件が起きるわけでもなく、全体的にほのぼのなのに印象に残る作品。読んで良かったと素直に思える作品であった。


夏川草介さんのサイン。

夏川

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comments

おぉ!この本は私も気になってました!
(装丁が「植物図鑑」と同じカスヤナガトさんだから、と理由でですが・・・!)
さすがしんちゃん、早いですね!
感想を読む限り「アタリ本」のようなので図書館から予約が回ってくるのを楽しみに待ちたいと思います!

てか、今回もサイン本!
羨ましい限りですな。

ぱんだ:2009/10/22(木) 09:00 | URL | [編集]

ぱんださん
じわじわと人気が出ているようですね。
その理由も読んでわかりました。
はやく順番が回ってくるといいですね!

そう、また買っちゃいました^^;

しんちゃん:2009/10/24(土) 11:18 | URL | [編集]

こんばんわ。TBさせていただきました。
今更ながら読みました。
私、この作品好きです。
地域医療の深刻さを若干ユーモアを交えて書かれているのは、当人だからかけるんだろうなと思いました。
周りの人たちも個性的ですが、いい人ばかりですよね。
奥さんもとっても可愛い!
サイン本羨ましいです><
新刊を今から期待しています。

苗坊:2010/04/17(土) 22:39 | URL | [編集]

苗坊さん、こんばんは。
今後が楽しみな作家が登場しましたね。
言葉遣いも文体も内容もたいへん満足できた作品でした。
はやく次回作が読みたいですね。これの続編でもいいけど^^)

しんちゃん:2010/04/20(火) 21:42 | URL | [編集]

このコメントは管理者の承認待ちです

-:2010/10/17(日) 19:30 | | [編集]

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-:2011/08/23(火) 17:13 | | [編集]

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2010/04/06(火) 19:30 | soramove

神様のカルテ 夏川草介


神様のカルテクチコミを見る オススメ! 栗原一止は信州の病院で働く、悲しむことが苦手な内科医である。ここでは常に医師が不足している。専門ではない分野の診療をするのも日常茶飯事なら、睡眠を3日取れないことも日常茶飯事だ。 そんな栗原に、母校の医局から誘い

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