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    2009

11.25

「永遠の出口」森絵都

永遠の出口 (集英社文庫(日本))永遠の出口 (集英社文庫(日本))
(2006/02/17)
森 絵都

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私は、〈永遠〉という響きにめっぽう弱い子供だった。すべてを見届け、大事に記憶して生きていきたいのに、この世界には目の届かないものたちが多すぎた。いろいろなものをあきらめた末、ようやくたどりついた永遠の出口。日々の小さな出来事に一喜一憂し、悩んだり迷ったりをくりかえしながら世界の大きさを知って、大人への入り口に通じているかもしれないその出口へと、一歩一歩、近づいていく。時には一人で。時には誰かと。

誕生会はビッグイベントだ。好恵は誰がどう見ても普通の小学四年生だった。その好恵の家に、「誕生会だから」と招かれ、私たちはいそいそとプレゼントを持参した。しかしそこにはケーキもごちそうもお菓子もなく、もちろんプレゼントのお返しもなかった。しまいには「帰れ」とおばさんに追い払われて帰ってきた。私たちは全員一致で好恵を今後の誕生会から締め出すことを決議した。(「第一章 永遠の出口」)

小学生の頃、学校の先生は、神様だった。実際、敵は手強かった。五年一組の教育熱心な女教師は、落ちこぼれには容赦をしない一方、成績の良い教え子には賛美を惜しまなかった。成績至上主義。えこひいき。しかし、これぐらいならまだどこの学校にも一人や二人はいる「やりすぎな人」といったところかもしれない。黒魔女は生贄を必要とした。彼女は自分に意見した生徒を断じて許しはしなかった。(「第二章 黒い魔法とコッペパン」)

十二歳の春休み。数日後には中学生になる私と春子とクー子にとって、これはちょっとした卒業旅行の始まりだった。子供同士で千葉なんて、と渋い顔をする母には、「いつまでも子供と思っていても、もう中学生なんだよ」と静かに諭して説きふせた。そのくせ電車賃は、ちゃっかり子供料金ですませた。が、実際問題、中学校の入学式を数日後に控えた小学生というのは、そうそう浮ついてもいられなかった。(「第三章 春のあなぼこ」)

中学生になって、席が近いというだけで同じグループになった彼女たちがみな善人であることに安堵しながらも、私は時折なんともいえない居心地の悪さに襲われた。母子喧嘩をして、葡萄酒を飲んで、悪い噂をきく茅野勇介のパクッた自転車に揺られ、誰だか知らない先輩の家へむかっている。普段の日常からかけはなれた一時が、きゅうきゅうになっていた私を解き放ってくれた。(「第四章 DREAD RED WINE」)

夜遊びと外泊と宿酔いの毎日が始まった。酔って騒いでいるうちに中一は去って、中二になると周辺にはあきらめの色が漂いはじめた。以前はかなりの比重を占めていた家族にも無関心で、母がなぜ私に執着するのかふしぎなくらいだった。いつも一緒にいたのはヒロ、瑞穂、モンちゃんの三人だ。三人とも先輩のアパートで親しくなった同級生で、クラスはちがったものの、そのクラスで浮いている点では共通していた。(「第五章 遠い瞳」)

唐突に計画された大分県別府温泉二泊三日の旅。大学受験を控えていた姉と同様、私はその頃、中三の受験生だった。中一のある時期から始まった暴走もようやく勢いを弱めつつあって、私はある意味では柔軟に、ある意味では軟弱になっていたのだろう。関サバ関アジ。温泉でリラックス。うーん、いいかも、と単純に思ってしまった。ところが、両親は離婚の危機を迎えるほどの、静かな喧嘩をしていた。(「第六章 時の雨」)

高校生になり、アルバイトを始めた。ラ・ルーシュ。フランス語で〈蜜蜂の巣〉を意味する小さな欧風レストランだ。バイトを始めて三ヶ月が過ぎると、ようやくウエイトレスも板についてきた。〈ラ・ルーシュ〉での時間にかつてない充実を感じ、制服ひとつで生まれ変わった気になって没頭し、没頭しすぎて不穏な影も目に入らずにいた。不穏な影。今にして思えば、それは店内の至るところにあったのに。(「第七章 放課後の巣」)

保田くんとはたくさんデートをした。一日の終わりには疲労困憊していた。デートなんてまったく楽しいものじゃない。なのに、またすぐに会いたくなった。次のデートが待ちきれないほどに。翌朝、学校で顔を逢わせるまでの時間さえもどかしいほどに。さっき別れたばかりの彼からの電話を息を殺して待つほどに。それくらい、保田くんが好きだった。十七歳。恋さえしなければ、ずっと楽しいままでいられたのに。(「第八章 恋」)

小学校の卒業式は、物心ついて初めての大がかりな別れにすっかりあてられて、二週間後には同じ中学で再会する友達とまで抱き合って号泣した。中学校の卒業式では、長い刑期を勤めあげた囚人みたいな気分で、明日から無関係になるすべてのものと訣別した。そして、高校。私はこの段になってようやく落ち着いた心持ちで、ごくまっとうな、卒業らしい卒業を迎えようとしていた。こう、門出のような気分で。(「第九章 卒業」)

男女の違いはあれど、身に覚えのあることばかりだ。友だち同士で開く誕生会や、生徒を支配したい先生。小学生時代は、友だちと同じであることが重要で、親にも素直に甘えていられた。中学生になると、悪い遊びを覚え、親はただ口うるさい存在に落ちる。そして高校生になると、バイトをすることで社会がぐっと広がり、親との関係も少しは改善され、本当の恋の苦しみを知る。たびたび訪れる世界の終わりに、その都度、きゅうっと心が締め付けられた。今はもう感じることがないその痛みが、懐かしい。

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森絵都
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comments

しんちゃん、こんばんは。
次に読みたい森絵都作品はコレだったんですよ~。
なんだか懐かしそうな雰囲気が味わえるお話ですかね?
自分と重ね合わせて読んだりして、入り込めそうな気がします(^-^)

ぱんだ:2009/11/25(水) 22:14 | URL | [編集]

ぱんださん、こんばんは。
いい、これはおすすめ。マイベスト。
そんな声をもらいつつ、ずっと積んでいました。
70年~80年代の流行を捉えつつ、少しずつ大人の階段を登る作品でした。
自分からも本書をおすすめします。そして、宮下奈都さんの「スコーレNO4」も併せて。

しんちゃん:2009/11/25(水) 22:45 | URL | [編集]

おぉぉ!マイベストですか!
なぬなぬ!早く読まねば!
私も「コレいいよ~~」って聞いてはいたんですよ。
しんちゃんのお言葉を聞いて、更に楽しみになりました。大人の階段かぁ。青春ですね。

そして、宮下奈都さんの「スコーレNO4」ですね。ラジャー!こちらも併せて図書館で探してきます★
読みたい本が一通り読み終わって、次の本を模索していたところだったので凄くありがたいです。
ありがとうございました♪

ぱんだ:2009/11/26(木) 00:17 | URL | [編集]

おはようございます。
TBさせていただきました。

>たびたび訪れる世界の終わりに、その都度、きゅうっと心が締め付けられた。

同感です。森絵都すごいかも・・・と感じさせられた、私にとって大切な作品です。

時折:2009/11/26(木) 08:08 | URL | [編集]

時折さん、こんばんは。
児童書も大人向けも絵都さんいいよね~。
ずっと読んで行きたい作家です。

しんちゃん:2009/11/26(木) 18:01 | URL | [編集]

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2009/11/26(木) 08:06 | 時折書房

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