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    2009

12.17

「精霊のクロニクル」平谷美樹

精霊のクロニクル精霊のクロニクル
(2009/09)
平谷 美樹

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瀬田暢は、中学校の入学式以来ずっと学校へ行っていない。両親や教師たちはいじめを根本的な理由と決めつけて、そればっかりをほじくり出そうとする。そんな簡単な理由じゃない。暢が学校へ行かないのは、そこが自分の居場所じゃないからだ。両親も、同級生も、先生たちも、学校そのものも、もの凄く異質なものと感じられた。苦しい。だから苛立つ。そんな苛立ちを少しの間でも忘れさせてくれるのがこの公園、このベンチなのだ。そこに、まるで奇跡のように深山の樹木であるブナが一本、ぽつねんと立っている。

ある日、公園のベンチで微睡み始めた暢は、今までにない感覚に包まれて、何かがブナを登り詰めて、天高く飛翔して行くのを見た。いつのまにか眠りについていた。長い長い、そして、とてもリアルな夢だった。それは、旧石器時代と思われる世界で生きていた自分の祖先の追体験だった。人々は精霊と交流し、獣や精霊とともに森の中で生きていた。狼を守護精霊とし、同時に隠された憑き精霊という呪いを背負い込んだ始祖。それらを受け継いだセタ一族の村長の血筋。彼らと同じ守護精霊の紅い狼の印は、暢にも印されていた。

旧石器時代のプンキネ。縄文早期に暮らしたラメトゥク。縄文中期のアラス。彼らの家族、一族との絆を断ち切られた旅立ちは切実であった。それでも、暢は自分の居場所を探して旅をしたいと痛切に思った。目指すのはブナの森だ。プンキネが旅した雪原に心当たりがあった。夢の中に出てきた“湖と野原”(ト・ヌプ)という地名だ。現在の岩手県遠野市の“遠野”という地名の語源ではないかと言われているアイヌ語だ。強力な引力のようなものが、暢を北へ引き付ける。暢は自分の居場所を求めて、一人旅立つ。

自分が食う分以外は逃がせ。山での狩も、川の漁にも獲物の数を制限する掟があった。多くの村が好きなだけ動物や魚を獲れば、あっという間に山にも川にも獲物がいなくなる。狩とは、動物の命を奪う行為だ。それは、人々の命を繋ぐために行われる。だが、人は豊になれば、食うためではなく珍しいものを手に入れるために獲物を狩るようになる。欲は積み重なるが、それでもなお満たされることはない。様々な形の呪物が造られていく。新しい風習が生まれる。追従する村も現れる。そうして、人と精霊の関わりが希薄になっていく。

そして縄文晩期のクカの時代に、西の大陸から海を渡ってきた旅人が訪れ、そのまま居ついて村を作る。彼らは天照らす神を信仰し、米を栽培し、鉄で武器を製造する。豊かな生活と便利を持ち込んだ弥生人は、土地に執着するが故に戦いの歴史をもたらすことになる。先住民クカと侵略者ナカツビコとの戦いは大変迫力がある。縄文人の祖先がたどった人生を知り、弥生人が作り上げた未来に住む現代の暢は、何を思うのか。消えた風景に寂しさを感じ、それでも今に物足りないと思う自分がいる。考えさせ、読ませる作品であった。

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