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    2009

12.21

「天使の歩廊 ある建築家をめぐる物語」中村弦

天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語
(2008/11)
中村 弦

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時は明治・大正の御世。孤独な建築家・笠井泉二は、依頼者が望んだ以上の建物を造る不思議な力を持っていた。老子爵夫人には亡き夫と過ごせる部屋を、へんくつな探偵作家には永遠に住める家を。そこに一歩足を踏み入れた者はみな、建物がまとう異様な空気に戸惑いながら酔いしれていく…。日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作。《出版社より》

祖父の代から建築業を営む矢向丈明は、中学時代から親交があり、東京帝国大工科大学で同じ師に学んだ笠井泉二の家を訪れた。上代子爵家から請け負った注文に応えるためには、たんに経験豊かな建築家ではだめだ。それ以上の何かが必要なので、彼に頼みにやって来たのだった。老子爵夫人が建てて欲しいといっているのは、生きている人間と死んでいる人間とが、いっしょに暮らすための家。仕事を受けた泉二は、亡くなった先代のこと、老婦人のこと、二人がともに過ごした日々について、詳しくたずねる。(「冬の陽」)

鹿鳴館の次席館員を務めている守谷喜久臣は、小学校の合同展覧会で「ろくめいくわんのゆめ」と題された絵を見た瞬間、頭に衝撃を受けた。その絵は鹿鳴館の特徴を的確につかんでいた。それ以上に驚くのは、柱のあいまが設計図面の透視図法のように抜け、建物の内部が透けて見えていることだった。そして下には、ごくかぎられた関係者しか知らない秘密の地下道が描かれていた。政府の機密が何故。その絵の作者は、息子と同じ尋常小学校に通う小学一年生の少年、洗濯屋の息子の笠井泉二だった。(「鹿鳴館の絵」)

坂牧克郎は県の警察部を追われ、片田舎の小さな警察署に飛ばされた。以来、その署の薄暗い部屋のかたすみで書類仕事をこなす日々がつづいている。野分村に変わり者の小説家が住んでいた。その大西湖南が行方知れずになっているらしい。自分の意思で消えたのか、事件に巻き込まれたのか、克郎は事件性の有無を調べてみるように命じられた。湖南が住んでいたのは、名称に偽りも誇張もない迷宮閣と名付けられた館。湖南は建築家の笠井泉二に「永久に住めるような建物をつくってほしい」と依頼したという。(「ラビリンス逍遥」)

東京帝国大学工科大学の二学期を終えたとき八人いた建築学科の三年生は、七人に減っていた。堀田はほんとうに事故で死んだのか。矢向丈明は雨宮に誘われ、後藤、富永、苑子と共に、テーブル・ターニングという西洋の交霊術を行なった。はじめる前は疑いをいだいていた丈明だが、目前で実際に卓が動き、霊媒のような役割をはたしていた苑子が緊張で気を失うにおよんで、自分たちはほんとうに堀田の霊と交信したのだと確信を持った。ただ、返答の内容が合点いかない。殺したのは笠井泉二である。(「製図室の夜」)

矢向丈明が見覚えある男と再会したのは、恩師の葬儀からの帰途だった。平丘賢悟は建築学科の丈明たちの一年先輩にあたり、かつて笠井泉二が勤めていた光竹本店の建築部で泉二と机をならべて仕事をした男だ。また、泉二の亡き妻・黎子の実の兄でもある。斎場で泉二と会おうとしても会えず、代わりにここで平丘と会えたことに、丈明は因縁めいたものを感じた。黎子が死んだ年、海外視察に出ていた泉二と平丘だが、泉二の身に何か異変があったという噂を聞いたことがあった。(「天界の都」)

敷丸商事社長の敷丸隆介は、妻のための別邸の設計を笠井泉二に依頼した。敷丸輝子が信州の村から東京へ移ってきたのは、彼女が数えで九つのときだった。友達をつくれずに孤独なままだった彼女は、近所に意外なひとりの友を得た。建物の絵ばかりを描いていた少年だった。彼は輝子のために将来の家の絵を描いてくれた。輝子はその絵をながめることで、悲しい日々を生き抜くことができた。ところが、二人が幼馴染であったことを知った夫の隆介は、二人が男女の仲にあると疑い、泉二に対して拳銃を向けてきた。(「忘れ川」)

異能の建築家・笠井泉二が建築に携わる様子を描いた話もあれば、登場人物が住む不思議な屋敷の設計者としてその影が見え隠れするだけの話もあり、また同級生から見た笠井泉二の話もある。笠井泉二という建築家を様々な角度から眺めるような、笠井泉二が設計した建物を見るような、そんな構成になっている。笠井泉二は、「むこう側」の世界と「こちら側」の世界とをつないでいるようだ。そのモチーフが、彼の建築には欠かせない天使の像だ。幻想的で神秘的な美しさがあり、独特な雰囲気が心地良い作品であった。

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comments

こんばんは。
建築家とファンタジーノベルの取り合わせはどうなんだろう?と思いましたが、意外にしっくりきてなかなか面白かったです。
笠井泉ニ設計の建築物を見てみたいって思いました。

エビノート:2009/12/29(火) 20:20 | URL | [編集]

エビノートさん
これで建物図面とかあればもっと面白かったと思います。
でも「ラビリンス逍遥」は無理か^^;
だけど綾辻作品なら図面にしてるかも(笑)

しんちゃん:2009/12/29(火) 22:32 | URL | [編集]

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2009/12/29(火) 20:11 | まったり読書日記

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