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    2009

12.31

「球体の蛇」道尾秀介

球体の蛇球体の蛇
(2009/11/19)
道尾 秀介

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一九九二年、秋。一七歳だった私・友彦は、海沿いの町に暮らす乙太郎さんの家でやっかいになっていた。乙太郎さんと、娘のナオ。そして私の三人で同居していたのだ。乙太郎さんとは血がつながっているわけではない。ただ私が生まれた家の隣に、ずっと住んでいただけだ。母が家を出ていき、ついで父が東京へ転勤することが決まったとき、絶対に父親に従いていきたくないと叫んだ私を、乙太郎さんは引き取ってくれた。とりあえずウチで暮らせよと言ってくれた。ナオは私よりも二歳下だった。仲のいい幼馴染だった。乙太郎さんは白蟻駆除の会社を経営していた。私はその仕事を土日だけアルバイトしていた。

サヨは乙太郎さんのもう一人の娘で、ナオの姉だった。彼女は中学二年生でこの世を去った。奥さんとサヨは七年前、キャンプ場の火事が原因で亡くなっていた。サヨのことを一番よく知っていたのは自分だと、私はいまでも思っている。物静かで大人しい姉。彼女に対してそんなイメージを抱いていないのは、きっと私だけだろう。両親でさえ、妹でさえ、サヨの本当の顔には気づいていなかった。彼女の中にはいつも、静かに燃えているものがあった。冷たいはずなのに、触れたら火傷を負うようなものを、彼女は抱えていた。そしてそんなサヨに、私は幼い頃から強く惹かれていた。

その立派な家には初老の男が住んでいた。点検口から這い出した私が顔を上げると、白いワンピースの女性が、立ち止まってこちらを見ていた。しばらく前から町で見かけていた、どこかサヨに似た人だった。年上の彼女に強く惹かれた私は、夜ごとその屋敷の床下に潜り込み、老主人と彼女の情事を盗み聞きするようになる。それが、燃えてはいけないものが燃えている臭いだということに、私はすぐに気がついた。七年前のキャンプ場で、私は同じ臭いを嗅いだからだ。屋敷は全焼。老主人は焼死した。彼女がやったのかもしれない。そんな疑いが、胸の中で黒い頭をもたげはじめていた。「第一章」

物語はその後、「第二章」「第三章」と移り変わってゆく。主人公は、幼い偽善が招いたサヨの悲劇から胸に一つの重石を抱えて生きている。白いワンピースの女性‐智子に惹かれた一因もその出来事によるものだった。智子はサヨに似ていた。どこが似ているのか。何が似ているのか。一人の女性に執着するあまり、私は迷走し始める。馬鹿げた狡猾さ、小さな嘘が勘違いを招き、やがて取り返すことの出来ないあやまちを繰り返すことになる。吐き出すことが出来ない苦しさ、罪の意識を描きながら、最後は優しい火を灯して温めてくれたことにほっとする。ミステリではないが、こういうのもアリだと思った。

伊坂に続き、道尾も脱ミステリの新境地にチャレンジした。これって流行なのか? 従来のファンはやきもきするだろう。しかし幸いにも、自分は両者の新境地を受け入れることが出来た。文学は苦手だけど、この人たちの文学は面白いと思った。ミステリとしての驚きはなくても、根っこにある閉塞感や寂寥感はいつもと同じだと思ったからだ。また小道具のスノードームの使い方が印象的であった。仕掛けがなくても読ませる作品。これはある意味で上等でしょう。いつものように、「これは道尾」と身構えずに読むことをおすすめします。

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道尾秀介
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comments

しんちゃん、去年は色々とコメント、TBなどありがとうございました♪
2010年もどうぞ宜しくお願いします。

さて、この本、私はかなり面白く読みました。道尾さんは、去年読み始めて、まだ数冊しか読んでいないせいで、以前の作風とかにとらわれることが無かったのですが、新しい作風なのですね。
伊坂さんのはダメでしたが、道尾さんのこの小説は好きでした。

latifa:2010/01/09(土) 13:47 | URL | [編集]

latifaさん
こちらこそ昨年はお世話になりました。
本年もよろしくお願いします。

自分の中ではがっつりミステリという印象でした。
本作はミステリを根こそぎ排除していましたね。
それでも読ませる作品だと思いました。

しんちゃん:2010/01/10(日) 11:46 | URL | [編集]

最後の、優しい火を灯してくれた、って、本当にそうですよね。
友彦も、智子も、す~っと救われた気がしました。

じゃじゃまま:2010/05/07(金) 11:06 | URL | [編集]

じゃじゃままさん
道尾らしさとらしくなさが共存した作品でしたね。
そのラストですが、突き放したものでもよかったですけど。←黒好き(笑)

しんちゃん:2010/05/08(土) 18:12 | URL | [編集]

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-:2014/08/17(日) 10:46 | | [編集]

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