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    2010

01.14

「扉守」光原百合

扉守(とびらもり)扉守(とびらもり)
(2009/11/25)
光原 百合

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山と海に囲まれた古い港町・潮ノ道市。ここの住人たちが次々と不思議な現象に見舞われます。古い館が立ち入られるのを拒否したり、大人しい女の子が急にはっきりと自己主張するようになったり。このミステリーを解くのが、町の世話役的存在である僧・了斎が招き入れた、不思議な霊力を持つ魔法使いたちです。それは人の怨念を吸い取るカメラマンだったり、もつれた愛情をほどく編み物作家だったり。彼らの活躍と振り回される地元の人々の怒鳴り声や足音が聞こえてくるような、ファンタジックな連作短篇集。《出版社より》

大学生の由布は、伯母の小さな飲み屋でバイトをしていた。その日、常連客の橋本さんがお別れの挨拶にやって来た。一人暮らしを心配する茨木で所帯を持った息子と一緒に暮らすことにしたそうだ。伯母の店の奥には、屋根も釣瓶もちゃんとついた井戸があった。この井戸の水には不思議な言い伝えがあった。潮ノ道を出るときにこの水を飲んでおけば、必ずもう一度、ここに戻ってこられる。浜中さんはぐい呑みを取り上げ、両手でおしいただくと、ゆっくりと飲み干した。「帰去来の井戸」

小学三年生の三咲は、劇団「天音」の熱心なファンだ。天音が公演するのは普通お芝居とは無縁な場所だった。天音のみんなはその場の物語に耳を傾け、そのままお芝居にしているのだ。噂の舞台は、古い洋館だった。住む人がいなくなって久しいらしい。長いこと放置されたままだったが、とうとう処分すると決まり、解体作業が始まった。ところが作業はいくらも進まないうちに中断した。出るというのである。二階からどんどんと激しく足を踏みならすような音がする。「天の音、地の声」

青年は右目をくしゃりと細め、相手を見た。セーラー服姿の女子高生だった。不意に少女の表情が変わった。幼い顔立ちがにわかに妖しく大人びたようだった。セルベルという店の存在に、雪乃はその朝はじめて気づいた。その背の高い青年の姿がかいま見えたとき、自転車のハンドルがそちらを向いたのだった。まるで自分の中の誰かが勝手にそうしたように。ミ、ツ、ケ、タ。頭の中でそんな声が聞こえた気がする。雪乃は周りの思惑に振り回されてばかりいた。それがはっきりと自己主張するようになった。「扉守」

旅人は持福寺の山門をくぐった。住職の了斎と絵師の行雲は長いつきあいだった。座敷の畳が見えないほど広げられた色紙の中のひときわ古びた一枚だった。高校生の早紀は、行雲が描いた絵の中に若い男の人がいるのを見た。しかし確かに見えた人影はいなくなっていた。その絵に魅せられた早紀は、持福寺に通うようになった。まるで絵が生きているみたい。もしこの絵が生きているのなら、こんな絵の中で生きていられるなら。私もこの中に――。早紀の姿は、行雲の絵の中に入っていた。「桜絵師」

祥江は晃代とは親友のつもりだった。夫とのすれ違い、夫の両親や親類との付き合いのわずらわしさ、育児の辛さ。晃代の愚痴メールを読んでいるとひどく気がふさぐ。職場の先輩である彼には、会ったときからすでに妻がいた。つい一線を越えてしまったことを悔やんではいない。でも彼の奥さんが羨ましい。晃代からのメールがうっとうしくなったのもその頃からだった。妙に艶っぽい声がした。若者に写真を撮られると、心の中で何かが弾け飛んだ。菊川は厄介な想いの気を吸い取るフォトアーティストだった。「写想家」

大学生の友香は、その女性をなんとなく見ていた。そのとき、まどろむ女性の脇におかれた布袋から、何かがまるで自分の意思を持つかのように飛び立った。その傲岸不遜な女性の名は新久峰亜夢といい、その筋では有名な編み物作家だった。どんなものでも使って、なんでも編んでしまうという。袋の中から飛び立ったあれは、不幸にも出産中のとき、母子共に命を落とした赤ちゃん用の靴下だった。本来は存在しない想いが形を得て、どこにもいない母親を探して動き出したらしい。「旅の編み人」

今日は神崎零ピアノコンサートの日だ。主催スッタフとして静音は張り切らずにはいられない。神崎零は、幻のピアニストと呼ばれているアーティストだ。常に全国を演奏旅行に回っている。零のコンサートに帯同してマネージャーの仕事も兼ねているのが、零の専属調律師である木戸柊だった。静音は、零と柊に関わるようになってからピアノに興味が出てきた。静音の家の応接間にはピアノが置いてある。この数十年というもの誰一人弾いたことがなく、音を出すこともできないピアノだった。「ピアニシモより小さな祈り」

山と海に囲まれた階段の町では、不思議な現象と共存しているかのようだ。著者はあとがきで故郷の尾道をモデルにしたとバラしているが、歴史ある町並みが情緒豊で、幻想的でも身近に感じることができ、切なさがありつつ優しくて、脳裏に浮かぶ映像的にもとても美しい作品だった。これまでデビュー作から三冊しか読んだことがなく、その時にいいかもと思ったけれど、薄味の印象しか残らかった。読まずにいた間に大化けしているじゃないか。これはすごいぞ。続編、きぼう~! また尾道という階段の町に興味深々。


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-:2013/04/11(木) 21:30 | | [編集]

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