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    2010

01.15

「戦友の恋」大島真寿美

戦友の恋戦友の恋
(2009/11/27)
大島 真寿美

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石堂玖美子は生前、何度か、私のことを、佐紀は友達じゃないから、と言った。玖美子が佐紀の生みの親でもあるし、育ての親でもあるし、佐紀が玖美子の生みの親でもあるし、育ての親でもあるし、友達ってだけの関係じゃないと思う。そんな簡単な言葉に当てはまらない。当てはめたくない。戦友? たしか玖美子が亡くなる一年くらい前だったと思うけど、半分酔っぱらった勢いでつぶやいたことがあった。

あなた、絵はとてつもなく下手だけど、ストーリーはなかなか面白いと思うのよ、原作者としてやってみない? 大学を卒業した後も就職はせず、漫画家を目指してバイトで食いつないでいた佐紀にかかってきた一本の電話が石堂玖美子との関係の始まりだった。その日、山本あかねという本名を捨てて、先へ先へって、山本佐紀になった。そういう冗談みたいなノリがその頃から私達にはあった。

玖美子は、新米だったけれど、すごく勉強家で努力家で、佐紀の面倒をよく見てくれた。玖美子を信じて書き続けることにした。玖美子が先に信じてくれたんだから、佐紀が信じるのは当然だった。気づけば看板連載の一つに化けていた。二十代は、怒涛のように過ぎて言った。仕事が順調で、楽しくて、打ち合わせと称して、相変わらず二人で飲み歩き、とはいえ、どちらかに好きな男が出来たりすると、優先順位はそっちに移行した。

最後に玖美子にあった日、彼女は頭痛を訴えていた。人間三十五年も生きてくると身体も変化してくるのかしらと鬱陶しそうな声で囁いた。病院へ行った方がいいよ、と今度は佐紀が忠告した。行くよ、と玖美子は答えた。でも、結局行かなかった。行かないで死んでしまった。戦友と呼べる特別な存在を失った主人公の再生の物語であり、ふたりの女性に関わる仕事や人間関係などを描いた六つの短編からなる連作短編集だ。

玖美子が男と別れた後も交流を続けていた息子のワタル。玖美子に心酔していた新担当編集者の君津。別れた後もずるずる友人関係らしきものが続いていた太刀川。祖父の風呂屋で働く看板娘の美和。二十年ぶりに偶然再会した同級生の木山達貴。ライブハウスのオーナーの律子さん。そうした人々とのふれあいの中で、玖美子がいなくなった年月を噛み締める佐紀は、玖美子が消えた穴を一つの言葉にしようとするがそうそう見つからない。

やがてスランプに陥り、玖美子とはじめた自分の夢とは違う漫画原作者の道を突き進むことへの疑問、心細さに、逃げ出したくなってしまう。そしてどうしたって戻らない、たった一人の戦友を想うのだった。でも自分一人で歩んでいかねばならない。生きてゆかねばならない。長く続いたスランプから脱出した佐紀を見て、ある人はこう告げる。ようやく長いスランプを抜けたのではなく、ようやく長い長い喪中を抜けたんじゃないかと。

担当が君津から新人編集者の女の子に代わり、佐紀は彼女が買っているまだデビュー前の漫画家の女の子と組むことを引き受ける。そこには、一人の新人漫画家を見出した一人の編集者の熱い想いが透けてみえていた。共に歩んで行きたいという若い二人に、それから未来そのものへの情熱。当然思い出す。玖美子と佐紀。かつての自分達の姿を見つけ、やっと再生を感じられるのだった。そうして見ることのできた日常の風景に、胸が熱くなる。面白かった。

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大島真寿美
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comments

おはようございます。
TBさせていただきました。
「長い喪中」と、読者にあからさまにそうと気づかせないようなぎりぎりの筆致がとってもよかったです。じわじわくる佳作でした。

時折:2010/01/31(日) 07:14 | URL | [編集]

時折さん、こんばんは。
戦友はいつまでも側にいる。例え自分の中で折り合いをつけたとしても、それは変わらないのでしょう。
自分にとっての戦友は誰か。いつか現れるのでしょうか。その存在に対して、羨ましく思いました。

しんちゃん:2010/02/01(月) 22:37 | URL | [編集]

まさかここで大和湯が出てくるとは!
他にもなにか出てる!?と思ってしまいました。
大人の物語でしたね。でもやっぱり大島さんらしく、さりげなくゆっくりと成長してるんですよね。

じゃじゃまま:2010/02/02(火) 22:24 | URL | [編集]

じゃじゃままさん
大和湯?ええっ、ひょっとしてあの大和湯?
うわ、ほんまや。「ほどけるとける」の大和湯や!!
コメントをもらう今の今まで気づかなかったです(汗)

しんちゃん:2010/02/04(木) 22:18 | URL | [編集]

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大島真寿美『戦友の恋』


戦友の恋著者:大島 真寿美販売元:角川書店(角川グループパブリッシング)発売日:2009-11-27クチコミを見る 喪失と再生と、歳月の跳ね返り方。 内容(「BOOK」データベースより) 佐紀もそろそろ禁煙したら、と玖美子にしては珍しい忠告をした。いつもなら、うるさいなあ...

2010/01/31(日) 07:11 | 時折書房

戦友の恋 大島真寿美著。


≪★★★≫ 私たちは友だちじゃない。 まったく芽の出ない漫画家志望の山本佐紀こと山本あかね。 絵は下手だけど原作者としての道を示唆してくれた新人編集者、石堂玖美子。 二人は、ただの友だちではなく、互いが互いの道を進むために一緒に闘い、支え合いってきた戦友

2010/02/02(火) 22:20 | じゃじゃままブックレビュー

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