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    2010

01.23

「リテイク・シックスティーン」豊島ミホ

リテイク・シックスティーンリテイク・シックスティーン
(2009/11)
豊島 ミホ

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ねえ、誰にも言わないでね。あたし、未来から来たの。ずっと無職でさ。二十七なのに、働かないで家でくさってて。人生やりなおしたい、って思った時に、高校からどうにかしたいと思ったのね。だからここに来たの。今度は絶対、青春って言える青春を送るんだあ。高校に入学したばかりの沙織は、クラスメイトの孝子に「未来から来た」と告白された。

ただ、「未来から来たの」を聞いてひとつだけ引っかかったことがある。入学式の時の孝子の態度だ。「あたし、貫井孝子」そう告げて、私が名乗るのを待つ間、孝子は何故か鼻穴を膨らませて笑いをこらえるような顔をしていた。そして、私が「小峰沙織です」と言うと、その顔を一気に崩してふにゃりと笑ったのだ。孝子は既に私を知っていた?

それ以来、孝子は二人だけの時にのみ「未来ネタ」を披露する。妄想でもなんでもいいじゃないか。この子が全力でやり直そうとしてるなら、青春って言える青春を送ろうとしてるなら、それが悪いことなわけがない。そして隣にいる私は、普通の友だちには見せてもらえような面白いものを、見せてもらえるんじゃないだろうか。

人生を変えたいと、青春を積極的に楽しもうとする孝子に引きずられ、地味で堅実な沙織の日々も少しずつ変わっていく。隣の席になった大海くんはアプローチをよこしまくりで、大海くんと仲がいい村山くんとも口をきく関係になり、調理実習、球技大会と学祭を経て、男女四人組はお昼休みに弁当を食べる仲になり、夏休みには海水浴にも出かける。

きらきらした学園生活だが、やがて暗雲が立ち込める。文系か、理系か、自分の進路を決定する文理選択希望書が配られるのだ。沙織の両親は幼い頃に別れ、母は祖母が営む雑貨屋の家業があるのにそれを手伝いもせず夜の仕事をしている。そんな母のような人生にしたくないと、沙織は金銭的に自立できる薬剤師になることを早くから決めていた。

沙織は仲間たちと過ごすうちに、本当にそれでいいんだろうかと心が揺らいでくる。そんな時、四人は職場見学をすることになる。明確な自分の進路のビジョンが見えた沙織らに対し、ただ一人、背を向けてしまう人物がいる。もう一度やり直すと告白していた孝子だ。彼女は逃げるように沙織と距離を取り、四人の関係もぐしゃぐしゃになるのだが……。

読み手によって受け方は違うだろうが、自分は孝子の負のスパイラルがすごく良くわかった。優等生の沙織目線だから、孝子に対してイラッとくる場面がないわけではない。でも、自分ってダメダメ~と感じた時に、前を向いている存在は煙たい。はっきり言えば、うざい。一緒に暗いムードを漂わせてくれると、それが安心になったりする。

これまでの豊島作品なら、暗い方から明るい側を見ていた。そんな眩しい世界もあるのね、と。だが本書では、明るい側から暗い方を一貫して見ている。手を差しのべようにも、それ以前に距離を置く。ある意味、底辺を知る著者ならではの作品だと思った。休業宣言をした著者だが、最後を飾る小説としてはグッドすぎる。いつになっても次を待ちたい。

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豊島ミホ
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comments

しんちゃん、こんばんは。
私もこの本すごくよかったです!
初期から比べて『うまくなった!』と成長ぶりが私なんかにもわかる本でした。
明るい位置から底辺の薄暗さを見る、というしんちゃんの表現がどんぴしゃ!と思います。
でも、孝子が戻って来たからこそ自分の将来をより真剣に考えられたんですよね。

私も豊島さんの復帰を待ちますよ~!

ぱんだ:2010/01/24(日) 22:15 | URL | [編集]

ぱんださん、こんばんは。
すっごく良かったですよね。
いつもは底辺目線だけど、逆から見ると、目からウロコなくらい新鮮でした。
マイベストの「エバーグリーン」の次はこれかな、なんて思ったりして。

復帰作は、これの二年後とかおもしろいかも。願望ですけど^^)

しんちゃん:2010/01/25(月) 22:26 | URL | [編集]

ほんと、よかったですよね。
孝子の、負のスパイラル、私もよく分かるし、なんだかそこが好きです。
いくら戻ったところで、自分自身が変わってなければまた同じになるんですよね。
もちろん孝子も変わるけど、沙織も実は変わっていくのが心地よかったです。

じゃじゃまま:2010/04/12(月) 23:16 | URL | [編集]

じゃじゃままさん
その気はあっても、自分自身って、中々変われるものではありません。
そこを深くふか~く掘り下げた作品でしたね。
沙織はもちろんだけど、これは孝子の物語かな、と自分は思いました。

しんちゃん:2010/04/14(水) 22:37 | URL | [編集]

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リテイク・シックスティーン 豊島ミホ著。


≪★★★★☆≫ 高校に入学して間もなく、友人孝子から「あたし、未来から来たの」と告げらた沙織。 孝子は27歳の未来から、高校時代をやり直したくて、戻ってきたと言うのだ。 青春をやり直すためにやって来たという孝子と、何事も初めての沙織の高校一年生の物語。

2010/04/12(月) 23:12 | じゃじゃままブックレビュー

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