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    2010

04.04

「船に乗れ! 3 合奏協奏曲」藤谷治

船に乗れ! (3)船に乗れ! (3)
(2009/11/05)
藤谷 治

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チェロを弾くことは、あれ以来、日を追うごとにつらくなっていた。「あれ以来」というのが、どの時点をさすのか、ドイツから戻って以来なのか、それとも南のことからなのか、それとも金窪先生の事件のあとなのか、自分でも判らなかった。だんだんと、楽器が重く感じられるようになったのだけは確かだった。付き合っていた南の妊娠、それを告げずに彼女は去り、その南の親友だった鮎川から、僕はすべての事情を知った。

しかもそれは同じ日だったのだ。鮎川から南の話を聞いたのと、僕が金窪先生にでたらめな問いかけをしたのとは、ほんの二時間ほどのあいだに起こったことだった。金窪先生は僕の馬鹿みたいな問いかけに誠実に答え、その誠実さに僕は、勝手に屈辱を感じ、そのせいで理不尽なほど卑劣なことを、金窪先生にしてしまった。僕のチェロは、自分でもどこか機械的に音を出しているのが判った。前へ向かっていく力が、決定的に失われていた。

最高学年になったサトルたちだが、才能豊かな新入生たちが入学してくる。しかも新入生は全員が女子だったのだ。新生学園は、三流から一流の音楽学校へと変化を始めていた。さらにサトルは己のチェロリストとしての限界を知ってしまう。チェロを辞める、音楽の道には進まない、ということは、自分の進路を、まったく新しく決めなければならないということだけれど、同時にチェロという重荷を下ろしたことでもあるのだ。

作品のテーマは、音楽と恋と友情と哲学。主人公の津島サトルは、挫折を味わい、罪を告白し、懺悔することによって、青春時代のいい思い出として昇華させていく。また大人になったサトルの回想形式にすることによって、青春時代の傷ついた自己再生物語にもなっているのだ。文化祭でのミニコンサート、今年のオーケストラの発表会、楽器専攻の生徒が全員参加した「ハフナー」の第一楽章、そんな彼らのコンサートシーンは感動的だ。そして圧巻だ。

音楽はサトルたちを救おうとしていた。その明るさで、その活力と律動で、そしてその美しさで音楽は、立ち直らせようとしていた。彼らはそんな音楽に触れた。伊藤は、鮎川はそれに触れた。サトルも触れた。南も確かに触れた。全員が協奏し、同時に独奏し、そして合奏していたのだ。青春の喜びも苦悩も全てが、ひとつの音楽となって美しい音楽を見せてくれた。音楽の力って偉大だ。本書を読んでつくづくそう思った。素晴らしい。


三部作のすべてをサイン本で揃えちゃった。
藤谷治さんのサインです。

ふじたに3

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藤谷治
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