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    2010

07.06

「炎上する君」西加奈子

炎上する君炎上する君
(2010/04/29)
西 加奈子

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閉塞感、切迫感、嫉妬感、無情感、不実感、乖離感、現実逃避、孤独感、何かに囚われ、しんどい思いをしている主人公たち。彼女らは、厳しい現実から逃避するという道を選んでしまった。自分を正当化、あるいはかわいそうと定義した理由を用意した上で…。そこは、ちょっと甘すぎるんじゃないの、と思う自分がいたが、誰だって自分を褒めて欲しいし、必要とされたいと思っているのは事実。それが人だから。そんな底辺から復活できるきっかけは何? 等身大の傷つきに共感するだろう八作を収録した短編集。

「太陽の上」
太陽という名の、中華料理屋がある。太陽の上は、アパートになっている。二〇一号室には、太陽の夫婦が住んでいる。そこは、女将さんとアルバイトの男の子との、逢引の場所にもなっている。あなたは、三〇一号室に住んでいる。初めてその声を聞いたとき、あなたは驚いた。しかし、徐々にそれにも慣れ、彼女の立てる声を、ノートにメモしてみたりもした。あなたは三年前から、外に出るのをやめてしまった。世界は選択の連続である。あなたは、それに疲れたのだ。

「空を待つ」
私は、作家だ。アイデアに煮詰まった私は深夜の徘徊をやめなかった。携帯電話を拾った。開くと、空の待ち受け画面だった。携帯の音で、目が覚めた。メールが来た合図だ。送信者はあっちゃん。私は一瞬考えて、返信を押した。空の携帯電話の持ち主からの連絡があっても良さそうだが、一向にかかってくる気配はなかった。交番に届けることも、しなかった。私はいまや完全に、空の携帯電話を手放せずにいた。あっちゃんにメールを打ち、返事を待つことは、毎日、水をごくごくと飲むようなものだった。

「甘い果実」
昼休み、休憩室に置いてあった女性雑誌をめくっていたら、また、山崎ナオコーラが笑っていた。どきっとした。読みたくないと思って、すぐに閉じたけれど、絶対に読んでしまうことは分かっていた。私は、大型書店の事務として働いている。なぜ事務の仕事を選んだのか、というと、私は、作家になりたいからだ。私は文芸の世界に触れていたかった。ナオコーラの受賞は、ネットで知った。そして、彼女と私は、生年月日が、まったく同じだった。私は、三十一歳。まだ、デビューできていない。

「炎上する君」
梨田と浜中は、女、それも不細工な女であるということで、いわれのない迫害を受けてきた。婚姻は毛頭望まないし恋愛などは唾棄すべきもの。三十二歳になってもおかっぱ頭とおさげ髪にこだわる親友二人は大東亜戦争というバンドを組んだ。けれど、固定ファンまでついたライブは没頭するというより、こなすものになってしまった。もっと、血が滾るようなこと、これがあれば死んでもいい、と思うようなこと、それを探していた。そして、「足が炎上している男」に、惹きつけられたのである。

「トロフィーワイフ」
瀟洒な邸宅がある。この家の住人は、宇津木ひさ江と宇津木江里子。ふたりは祖母と孫の関係である。ひさ江は七十八歳。江里子は二十四歳。江里子も、ひさ江も働いていないが、亡くなったひさ江の夫の遺した財産で、悠々とした生活を送っている。「あなたのような人をね、欧米ではトロフィーワイフというのよ。若い頃苦労して仕事して、年を取ってから成功した男の人が、今まで苦労を分かち合ってきた年を取った妻と別れて、若くて、綺麗な女の人を手に入れるの。」ひさ江は、自分の半生に後悔する。

「私のお尻」
綺麗。白くて、つるりとしていて、きゅう、と盛り上がっていて。綺麗。綺麗な、私のお尻。私は、パーツモデルをしている。パンティストッキングや下着のCMや、エステティック・サロンの広告などの、お尻専門のモデルだ。私の手元には、大金が入ってきた。私のお尻は、やはり特別だったのだ。でも、いつからか、だんだん、自分のお尻を、憎らしく思うようになった。みんな、私を見ないで、私のお尻ばかり見るからだ。分かっていた。男に会ったのは、そんなときだった。少し、遠くに置いておきたいものは、ないですか。

「舟の街」
あなたは思い立って、舟の街へ向かうことにした。舟の街は、地図に載っていない街だ。だが、確実に舟の街はある。そこから戻ってきた、という人がいるからだ。彼らは舟の街で数ヶ月、または数年を過ごし、幾分ふにゃふにゃした顔になって戻ってくる。ある日、あなたは、徹底的に参ってしまった。失恋したのだったが、彼があなたを捨てて手に入れた女の子は、あなたの昔からの親友だった。だが、涙は出なかった。舟の街に行こう。今がそのときだ、と、あなたは思った。あなたはそうやって、舟の街にたどり着いた。

「ある風船の落下」
体が浮き始めたのは、四月の半ばだった。初めは、なんとなく、歩きづらいな、と思う程度だった。ある朝、私は、はっきりと地面から浮いていた。ああ、と思った。とうとう私にも、それが来たのだ。世界中で風船病の症例が見られるようになったのは、数年前のことだった。溜め込んだストレスがガスとなり、体を膨張させる奇病である。やがて風船病患者は段階を踏んで、空の彼方へと浮遊していく。帰還した者はいない。その夜、私にそのときが訪れた。私はやはり、地上にとって無用の人間であったのだ。

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西加奈子
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