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    2010

07.16

「小さいおうち」中島京子

小さいおうち小さいおうち
(2010/05)
中島 京子

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ありがたいことに、わたしもこうして茨城の田舎に引っ込み、細々ながら一人暮らしを続けている。近くには甥一家が住んでいて、ときどきはいっしょに食事をとることもある。もはや、わたしが女中奉公をしていた時代を知る方は一人もいない。わたしが尋常小学校を卒業して、東京へ出たのは、昭和五年の春のことである。わたしには一軒だけ、ここがわたしの終の棲家と思い定めた家があった。それが昭和十年に建った平井様のお邸だ。

二人の出会いは昭和六年、時子奥様は二十二になったばかりで、わたしは八歳下の十四歳だった。あれからわたしたちはずいぶん、濃い時間をいっしょに過ごした。なにしろ平井の旦那様は、お見合いの席で、すぐにも家を建てます、赤い瓦屋根の洋館です、と言われたのだそうで。奥様が二度目の結婚をして三年目に、あの赤甍を載せた二階建ての家は建った。ここに、落成の日に撮影した写真がある。旦那様と、奥様。恭一ぼっちゃんと、わたしが写っている。

回想録を書き始めた老婆タキ。それを盗み読みしている甥の次男の健史。その回想録は、歴史的な事変の中を過ごしながらも、どこか別の国のように能天気だ。その実際の歴史を知る現代の健史、あるいは自分にとっては、その当時の大らかさが嘘のように見える。でも、そこに生きた人たちは、そんなにきゅうっと縮こまっていなかった。その固定概念を覆すギャップがおもしろく、また時子奥様と女中タキのコンビが微笑ましい。

女中の基本は、「気は心」。賑やかなことのお好きな奥様はことのほかいきいきされた。お勝手のタキはてんやわんやでも、心が浮き立ったものである。二人の関係は一心同体のようであった。さらに、時子奥様と親友の職業婦人である睦子さんとのやり取りや、夫の部下の板倉さんとの怪しい関係からもわかる通り、人は今よりも純朴で純粋だった。だが時代は戦争へと突き進み、もちろん赤い屋根のその家も少しずつ何かが変わっていく。

始まったものは、いつかは終わる。戦争が終わり、タキの奥様との毎日も終わってしまう。タキは、胸を抉るような後悔をずっと抱えていた。その後悔の理由とは何か。それが明かされるのは最終章だ。点だったエピソードの数々がここで繋がって線になる。だけどそこにいた人たちの本当の気持ちは、読者の想像に委ねられている。そのときの選択は正解だったのか。それは切なくて、なんとも言えぬ深い感動が胸に込みあげてきた。泣けた。

直木賞受賞おめでとうございます。


中島京子さんのサイン。
中島京子

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中島京子
トラックバック(7)  コメント(4) 

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comments

こんばんわ。
直木賞受賞作品と言う事で触発されて読みました。
素晴らしかったです。
昭和初期の時代を見事に再現されているなと思いました。
最終章はいろいろ衝撃でした。
読み終えてもずっと余韻が残っていました。

苗坊:2010/08/23(月) 20:18 | URL | [編集]

苗坊さん、こんばんは。
UPしようかなと思ったら受賞です。
書き直すのも面倒なのでそのまま掲載しました。
直木賞はいろいろ思うところがありますが、応援している作家の受賞は素直に嬉しいです(笑)

しんちゃん:2010/08/26(木) 16:47 | URL | [編集]

当時の庶民のエピソードなどを丹念にひろって物語にちりばめているのでリアリティがあって、読んでいる方もあの家にいるような雰囲気を味わえました。

単なるホームドラマではなく、人と人との深い絆を感じさせる物語でした。


日月:2010/08/29(日) 16:13 | URL | [編集]

日月さん
きゅうっと小さくなっていないところが新鮮でしたね。
そして平井様のお邸の様子も良かったです。
さらにタキが抱えたあれも最後面白い展開でした。

しんちゃん:2010/08/31(火) 22:54 | URL | [編集]

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