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    2011

02.15

「聖夜(School and Music)」佐藤多佳子

聖夜 ― School and Music聖夜 ― School and Music
(2010/12/09)
佐藤 多佳子

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壇上のオルガンを弾いているのは、やはり、二年の天野だった。あいつのオルガンの音は、なぜか、よく聞こえる。チビな女だ。今、礼拝奏楽を担当している生徒は五人で、三年の俺と渡辺、二年の青木と天野、一年の北沢。俺は父が牧師、母が元ピアニストという環境のせいで、記憶のないころからピアノやオルガンは触っている。それでも、俺が気になるのは、いつも天野の音だ。なんでかは、よくわからない。ただ、あのチビッ子には、何かがある気がする。俺にはない何かが。

ピアノもオルガンも母に習った。とにかく、俺の記憶の中の母は、いつも鍵盤に向かっていた。母が家を出てから、俺はピアノもオルガンも弾かなくなった。鍵盤を見るのも我慢できなかった。半年くらいたってから、また弾くようになったのは、祖母にリクエストされたからだった。たぶん、父の顔色が変わったから、弾く気になったのだ。母の罪を許したまえと神に祈る、そんな鉄壁な牧師の顔が一瞬崩れたから。洗礼は受けているものの、俺はキリスト教を信仰していない。

オルガン部は、普通の部活のように、放課後に皆で集まって練習するわけじゃない。結局、オルガンは一人で弾く。一人ずつしか弾けない。それでも特設クラブとして認可されたのは、キリスト教にかかわる活動を充実させようとする学校の方針だった。そして、文化祭の発表会でやるそれぞれの曲目を最終決定した。俺はメシアンに挑戦することになった。母が一番好きな作曲家だった。中途半端に心の傷をつついているような俺の日常。そう、鳴海一哉としては、他に選びようなどなかった。

俺のキーワードは、神と母。信じられない神と、思い出したくない母。負のダブルだ。俺は逃げ出したかった。色々なものから。メシアンからも、オルガンからも、母からも、何より、人の目には優秀なオルガン弾きに見えてしまうかもしれない、立派そうな自分から逃げ出したかった。そんなんじゃねえやと。俺はそんなんじゃねえって。そこにロック好きの深井が天使のように降臨して手を引いてくれた。バンドのライブを見に行かないかと誘われ、発表会を――。

音楽小説の音楽の楽しさを期待して読み始めると、そんなのはこれっぽっちもない。窮屈というか、閉塞感のかたまりのような作品だ。捨てられたことを許せない母を引きずり、全てが正しい父にイライラして、思い通りに弾けないオルガンからも逃げ出して。客観的に見ると、主人公はすげえ嫌なヤツだ。だけど、嫌なヤツに思えないところが、児童文学出身である著者の筆致の上手さだ。これまで当たり前でも、なんでもない幸せに気づいた時。そんな時に人って成長するのかも。そう思った一冊だった。

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佐藤多佳子
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聖夜(佐藤多佳子)


「第二音楽室」に続く音楽青春小説の第二弾。 「第二音楽室」の方は、短編集で主人公が女の子だったんですが、この作品は長編で主人公は高校三年生の男の子。

2011/02/16(水) 12:50 | Bookworm

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