2011
![]() | マリアビートル (2010/09/23) 伊坂 幸太郎 商品詳細を見る |
元殺し屋の「木村」は、中学生の少年に六歳の息子をデパートの屋上から突き落とされ、息子の仇を討つために東京発盛岡行きの新幹線はやてに乗り込む。まさか、こんな状態に置かれるとは予想外だった。その少年の罠に嵌まり、逆に拘束されてしまうのだ。
文学好きの「蜜柑」と機関車トーマスが大好きな「檸檬」の果物コンビは、闇社会の大物に依頼され、その息子を奪還し、彼と身代金を新幹線で運ぶ途中だった。しかし、息子は殺されてしまい、身代金が入ったトランクまでも行方不明に。
業界の中では天道虫と呼ばれ、いつも不幸に満ちている「七尾」は、指示を出すだけで現場には出ない仲介役の真莉亜の指示で、車内通路からあるトランクを盗みだしてくる仕事を遂行中だった。しかし因縁ある同業者と鉢合わせ、降りる駅を乗り過ごすはめに。
梃子の原理と同じで、欲求のボタンをうまく押せば、中学生でも人間は動かせる。人を殺してはどうしていけないのか。木村の息子をデパートの屋上に連れ出したのは、「王子慧」だった。ぜんぜん怖くないよと嘘をつき、突き飛ばしたのは痛快だった。
木村、果物、天道虫、王子。一癖も二癖もある殺し屋たちが、密室と化した新幹線の車内で、丁々発止の渡り合いを演じてゆく。彼らの視点がリレーしていく様は、前作グラスホッパーと同じ形式で、ノンストップで繰り広げられる殺し屋どもの狂想曲から目が離せない。
ここ最近、賛否両輪ある文学寄りの作品続きで、その行く末に、昔からのファンをやきもきさせていた。それが今回は原点回帰。軽妙ながら自分勝手な論理の会話で読ませ、散りばめられた伏線があり、それを見事に回収していく様に、「これこそ伊坂」と、満足した作品だった。
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伊坂幸太郎
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