2007
![]() | 赤朽葉家の伝説 桜庭 一樹 (2006/12/28) 東京創元社 この商品の詳細を見る |
祖母、母、わたし。 赤朽葉家に生きる三代の女たちを描いた作品です。
「第一部」
戦後の敗戦の余波が残る時代に、万葉は辺境の人に置いていかれた。
場所は鳥取県西部の中国山脈の奥にある紅緑村。
万葉はときおり未来を視た。それが10歳のころ自分は未来視だと自覚する。
紅緑村には2つの大きな家があった。上の赤と下の黒。
上の赤こと赤朽葉家は、昔からある旧家で製鉄業が盛ん。
下の黒こと黒菱家は、軍事国家の恩恵を受けた造船成金。
その赤朽葉家から、万葉二十歳のときに嫁入り話がくる。
赤朽葉家のぼん・曜司の嫁になる万葉。赤朽葉の千里眼奥様になったのだ。
長男を産み、丙午の年に長女の毛毬を産む。
この毛毬が第二部の主人公。
赤朽葉家の大奥様のタツがいいキャラでした。
ころころ太った恵比寿さまのような容姿だが、一声で職工を黙らす。
そして万葉の子供たちの名づけのセンスが抜群。
特に真砂の戒名には、笑えた!
万葉の子供のころに見た幻の人物の穂積豊寿もよかったな。
「豊さん」「万の字」と呼び合う二人の会話に和むね。
「ひろわれっ子」「いじめっ子」と言い合いながらも、仲良しなみどり。
彼らが、いい雰囲気、いいリズム、を作ってました。
「第二部」
毛毬は中学一年の夏に、「アイアンエンジェル」という暴走族を作る猛女。
友達のチョーコを族のマスコットにし、バイクで疾走する。
敵対する族を蹴散らした青春時代から、華麗な漫画家へ転身。
売れっ子漫画家として仕事に追われる毛毬は、婿をとり瞳子を産む。
若くして亡くなった、毛毬の一生です。
「アイアンエンジェル」には笑えたな。漢字だと「製鉄天使」。ぷぷっ(笑)。
桜庭さんのユーモア、好きです。
しかも「製鉄天使」で中国地方を統一したい。最強になりたいだって。
一昔前の暴走族漫画そのままやんか。
そんな毛毬が弟の部屋に行き、少女漫画を読んではくすんと鼻を鳴らす。
これが漫画家になるきっかけとは、まったく気づかなかった。
妾の真砂が死に、子供の百夜を本家で育てることになる。
毛毬にはこの百夜の姿が見えない。この百夜が毛毬の真逆のキャラ。
毛毬の男を寝取るのが得技ってどうよ。しかも学生時代に寝取り三昧って。
この手の登場人物って、普通は嫌いになるもんですよね。
けど母は裸踊りで、娘は死ぬまで寝取り。滑稽で笑えて、憎めないですね。
「第三部」
九歳で母と死に別れた瞳子は、老いた祖母の万葉に育てられる。
現代に生きる瞳子はいたって普通。夢も無ければ情熱も無い。
瞳子が二十歳を少し越えた頃、祖母の万葉が死んだ。
死ぬ間際に、「昔、人を一人殺した」という一言を残して。
瞳子は祖母が殺人者なのかを調べることに。
最後はミステリです。祖母の一言に瞳子が過去を訪ねる。
それ以外は何も起こらない。云うならすべててが今風。
すぐに仕事を辞めてしまう若者や、地方の現状がリアルでした。
赤朽葉家の3代目は、こんな感じでいいんじゃないでしょうか。
戦後の復興と、欧米文化の流入による発展・公害問題。
高度経済成長やバブル、若者たちの熱さ。そして現代の無気力な若者。
紅緑村も過疎化が進み、赤朽葉家も廃れていく。
このように、時代の流れにそってストーリーが進む。
時代背景にあった人物像、小道具など、読ませどころが満載でした。
上下二段の文章がぎっしりですが、非常に読みやすかったです。
読む前は一代記でもだるいのに三代記かよー、と思ってました。
偏見はいかんですね。そこらの一代記と一緒にしたら大間違い。
もう最初から最後まで、どっぷり作品世界に嵌りました。
ユーモアもありとても充実した内容で大満腹。
桜庭一樹さんの本はこれからも読んでいきたいです。
は〜〜、ぷくぷく茶が飲みたい。
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