2007
![]() | 雷の季節の終わりに (2006/11) 恒川 光太郎 商品詳細を見る |
地図にも載らず、現世から存在を隠されている”穏”という町で暮らす少年賢也。“穏”という街には、春夏秋冬の他にもう1つ雷の季節があった。彼にはかつて姉がいたが、ある年の雷の季節に姉は行方不明になってしまう。姉の失踪と同時に、賢也は”風わいわい”に取り憑かれてしまったのだ。賢也は”風わいわい”の存在を隠して穂高や遼雲らの友と少年時代を過ごす。しかし知り合いが殺された犯人を偶然知ってしまい、穏に居られなくなり外の世界に出る。
ファンタジー系は苦手で、世界設定の説明だけで普段はウンザリしてしまいます。しかし本書にはそいった嫌悪感は全く無く、物語の世界にすんなり入って行けました。これは前作の「夜市」でもそうでした。隣にありそうな異世界が見事に出来上がっている。“穏”という異界の情景がありありと目に浮かぶのです。恒川さんってすごい描写力ですね。
そして少々だらけてきたなという感覚のときに、突如“穏”から現世に場面が変わる。“穏”の外の世界では、理不尽な継母に苦しむ茜という少女が第二の主人公として現れる。茜は友達が感覚に感じた、眼に見えない空に棲む”風霊鳥”の存在に憧れる。茜は訳の解らない母の想像以上の殺意に恐怖を感じ、家を出ることにする。そんな茜は家出した日、見知らぬ男に知らない土地に連れて行かれる。
ここからは怒涛の展開が待っている。2つの物語が見事に交差していくのだ。あとはあれとこれが繋がって、あの部分が複線でと物語りは終焉に近づいていく。恒川さんは異界を創るのも上手いが、長編の構成力もすごく上手いです。
異質な世界ですが、結局、鬼となるのは人である。人より怖いものは無いということかな。最後の終わり方は淡白すぎるきらいがあり、少々物足りなさを感じました。対決にしろ、別れにしろ、もう少し丁寧に描いて欲しかったです。でもこの完成された世界観を楽しめたので、良しとしときますか。
これは映画化するなら実写よりもジブリで見たい作品ですね。読みながら「天空のラピュタ」を思い出していました。
恒川さんの実力は本物でしたね。そして益々、次回作にも期待が膨らみました。次も異界ですかね? このまま異界作家で居続けるのかも楽しみです。
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