「深淵のガランス」北森鴻
2007年08月07日 (火) | 編集 |
深淵のガランス深淵のガランス
(2006/03)
北森 鴻

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自らの見立てで花を生ける花師を生業としている佐月恭壱には、もうひとつ裏の顔があった。あらゆる能力を身につけた伝説の絵画修復師。人間の欲望が渦巻く美術界に、佐月恭壱が巻き込まれた2つの作品が収録。

「深淵のガランス」
佐月はある女性の仲介で、画家・長谷川宗司の絵画三点を修復することに。依頼者は長谷川の遺族・北条真弓。人物画二点には問題は無いが、風景画には気になる部分があった。そして佐月の前に、矢島誠一郎という男が仕事を断るよう忠告をしに現れる。

「血色夢」
岩手県雫石の山中で発見された洞窟内の壁画。表に出れば考古学会に激震が走るものだが、依頼者の多田は、極秘で壁画を修復するように依頼する。一方で、佐々木画伯の絵を巡り、暗躍をする画商の浜田英人とある女性。そして仲介役の朱建民の不思議な行動の意味とは。


すっごく面白かったです。内容紹介で「ある女性」と書きましたが、北森さんの本を読んでいる方にはピンとくる人物です。佐月の目線では、この人物は女狐だそうです。

主人公の佐月恭壱が渋すぎる。自分の仕事に対してとてもストイック。花師の仕事でお客相手に、「わたしの選んだ花がお気に召さねば、仕方ありません。花は人を選びます。店を選びます。」と言い、仕事をあっけなく断ります。それは絵画修復師の仕事でも同様です。

そんな佐月をサポートするのが、仕事仲間の前畑善次郎と絵画研究所の若槻伸吾。2人共、個性があって、佐月との会話も洒落ていて、読者を飽きさせません。それに佐月の行きつけのバーの朱明花といい、明花の父・朱建民といい、魅力ある人物たちが脇をがっちりと固めています。

絵画についての謎と共に、そこにうごめく泥臭い人物の思惑が絡んだ人間ドラマと、徐々に明かされる佐月の過去が興味深いです。それに絵画修復に関わる専門的な薀蓄が、存分に楽しむことが出来ます。

極上な絵画ミステリーが新たに誕生。たぶん本書もシリーズ化していくのでしょう。そしていつかは、別シリーズにも佐月恭壱が登場するのだろう。北森さんのもう一つの楽しみが、作品間のリンク。今後もよりいっそう北森鴻から目が離せません。要チェックです。

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