「MOMENT」本多孝好
2007年08月14日 (火) | 編集 |
MOMENT (集英社文庫)MOMENT (集英社文庫)
(2005/09)
本多 孝好

商品詳細を見る

病院で清掃員のアルバイトをしている大学生・神田。彼が働く病院には、死を間近にした患者の願いを一つだけかなえてくれる黒衣の男がいる、という必殺仕事人伝説の噂があった。神田はある老女の願いをかなえることで伝説を受け継ぎ、いつしか黒衣の男は灰色の作業着の掃除夫に姿を変えていた。

「FACE」
三枝という喉頭癌の老人は、かつての戦地で上官の命にしたがい仲間を殺したという。その遺族たちと接触をして、その様子を報告して欲しいというのが、老人からの最後の願いだった。

「WISH」
心臓に障害のある14歳の少女・美子の願いは、去年の修学旅行先で出会った青年を見つけて、一緒に撮った写真を渡して欲しい。出来れば会いにきて欲しい、というものだった。

「FIREFLY」
乳癌が再発した上田さんが再入院してきた。見舞い客はおらず、誰かの留守電にメッセージを残し続けている姿に、神田は気になって行く。こまごまとバイトを頼んでくる上田さんだが、最後に大事な依頼を持ち出してくる。

「MOMENTO」
特別室に入院をしている有馬さんという紳士。彼は死ぬその瞬間に、自分が何を考えるのか、何を考えるべきなのかが、よくわからないと自問し続けている。そんな中、灰色の清掃夫の仕事人の前に、元祖・黒衣の男の仕事人が現れた。

死の間近に迫った依頼者たちは、本当の依頼内容を決して語らない。だから依頼結果が出てみると、居心地が悪かったりもする。特に居心地が悪かったのが、1作目の「FACE」という作品だ。神田を利用して、かつての復讐を果たそうとする。1作目からこんなに読後感が悪くて大丈夫かなと思ったが、2作目の「WISH」、3作目の「FIREFLY」では、死を前にした登場人物たちが、恐怖を持ちながらも温かな心を見せてくれる。そして4作目の「MOMENTO」では、生きることと死ぬことを真正面から捉えたお話に、ぐっときてしまった。

本書の中で、ある登場人物が主人公に質問を投げかけるという部分が多々あります。その部分には、作者から読者のあなたならなんと答えますか、という問いかけを感じてしまう。それに対して明確な答えは浮かびませんが、死とは何かを考えることは悪くはないと思った。

テーマが随分と重い中でも、微笑ましい部分はあります。主人公の神田に清掃員の仕事を紹介したのが、病院へ出入りをしている幼なじみの森野だ。彼女が高校を卒業する年に両親が交通事後で亡くなり、家業である葬儀屋を彼女は継いだ。神田とは仲も良く、一番の理解者でもあるしっかり者。そんな神田と森野の関係が、全体を通して楽しめた。かなりじれったいのだが、読みどころと言えるだろう。

本多さんの本はどこか納得いかないんだけど、何故か読めてしまう。そしてまた読んでしまう。どこが良いのかいまいち理解が出来ない。でもいいんだな。変なことを言っているが、これは前から感じていること。たぶん自分とは別次元の感性を持っているのだろう。だから読むたびに新鮮だったりもする。

ミステリとしても納得の出来るものではなかった。だから気軽にお薦めすることは出来ない。だけどいいんだよなあ。矛盾してるんだけど。相性が良いんだか悪いんだか、ほんと自分にとって不思議な作家なのだ。また他の本も読んでしまうだろうけど。

コメント
この記事へのコメント
こんばんは!

「本多さんの本はどこか納得いかないんだけど、何故か読めてしまう。そしてまた読んでしまう。」
というの、とてもよくわかります。
私も、好きな作家さんなのかわからないまま、
気づけばほとんどの本を読んでいるんです。。
不思議な魅力を持っているんでしょうね☆

2007/08/14(Tue) 19:08 | URL  | acco #-[ 編集]
本多さんは、嫌いじゃないけれど特に好きでもないという感じなんですが、その割に4冊も読んでました。
なんででしょうね??
ちなみに4冊中好きなのは2冊、好きでないのが1冊、全く覚えてないのが1冊と、微妙です。

2007/08/15(Wed) 00:01 | URL  | june #-[ 編集]
こんばんわ。
本多孝好さんって読んだことがないんですが、
コレ面白そうですね。
「死の間際の依頼」って、不思議な感じです。
今度読んでみます!

2007/08/15(Wed) 00:08 | URL  | ia. #0wDM35Nk[ 編集]
accoさんもそうなのか(笑)
納得いかないと言いながらも、あと2冊積んでます。
何故でしょうね。。。
2007/08/15(Wed) 15:22 | URL  | しんちゃん #-[ 編集]
juneさんも同じかな(笑)
このミス二位の本を読んだら、全然ミステリが弱い。
なんでこれが二位やねん!と怒りながらも、今回で三冊目。
毎回不満がありながらも読んでしまうのよん。
2007/08/15(Wed) 15:27 | URL  | しんちゃん #-[ 編集]
ia.さんの感想を待ってまっす!
さて、どう感じるだろうかねえ。
2007/08/15(Wed) 15:28 | URL  | しんちゃん #-[ 編集]
私は、あの神田さんがツボでした(笑)。
これ、シリーズ化するかと思ったのに、されてないようで残念です。
2007/08/16(Thu) 08:25 | URL  | くまま #BhSUwn3o[ 編集]
おお〜、くままさんはツボに嵌ったのか!
自分はそこまでは…。

いつかシリーズ化をするかもね。
2007/08/16(Thu) 12:59 | URL  | しんちゃん #-[ 編集]
この作品、読者からの「最後の願い」の中から選ばれたものを、
書き下ろし小説として発表しているみたいですね。
http://www.shueisha.co.jp/bunko-moment/
ご存知だったらすみません。
最後の願い、私だったら・・・とちょっと考えちゃいました。
2008/04/07(Mon) 21:50 | URL  | エビノート #-[ 編集]
エビノートさん
ほうほう、こんなのがあったんだ。
熱心なファンじゃないから知りませんでした。
最後の願いねぇ…。わからないや。
2008/04/08(Tue) 12:00 | URL  | しんちゃん #-[ 編集]
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
MOMENT本多さんの作品は「MISSING」「ALONE TOGETHER」に続き3作目ですが、これが一番好きです。文章の巧さ、美しさは変わらないのですが、読後感のほろ苦さ、爽やかさ、暖かさがよかったのです。あの病院にはね、以前から語り継がれている一....
2007/08/14(Tue) 23:54:50 |  本のある生活
あなたが余命を宣告されてしまい、 たった一つだけ願い事が叶うとしたら、 何を願いますか? その願い事は、魔法じゃなくて実現可能なことに 限ります。 先月の旅のお供に読んだ文庫本は そんなことを考えさせられるお話だった。 本多孝好の二冊目。 「MOM
2007/12/05(Wed) 13:54:00 |  月灯りの舞