2007
![]() | 青年のための読書クラブ (2007/06) 桜庭 一樹 商品詳細を見る |
二十世紀始めに修道女聖マリアナによって建てられた、伝統あるお嬢様学校、聖マリアナ学園。良家の子女が通う学園だが、旧校舎の裏の崩れかけたビルに異端者だけが集う「読書クラブ」が存在し、抹殺された学園の禁忌が、部員によって読書クラブ誌に残されていた。その読書クラブ誌を読むという形式で、物語が綴られています。
「烏丸紅子恋愛事件」
大阪の下町臭のする庶民、烏丸紅子は、乙女の楽園にとつぜん放りこまれた。周りから浮いた存在の紅子が行き着いた先は読書クラブ。そこには学園一の才媛だが、容姿の醜さゆえに、異端者が集う読書クラブで、妹尾アザミがくすぶっていた。アザミを筆頭とした読書クラブで、毎年聖マリアナ祭の折に投票で決められる王子に、知性はないが容姿に恵まれた烏丸紅子を送り込もうとする計画が始まった。
「聖女マリアナ消失事件」
聖マリアナ学園設立者である聖マリアナが、学園から忽然と姿を消した。彼女はパリ郊外の貧しい農村に生まれ、父親は厳しく禁欲的な人間であったが、母親は対照的に明るくのんきな女であった。マリアナは父に似て求道的な性格に生まれたが、六つ年上の兄、ミシェールは父と折り合いが合わず、十八歳になると父親から逃げるようにパリへ出た。そんな兄と久方ぶりにパリで再会したことから、二人の兄妹の人生の歯車が狂ってしまった。
「奇妙な旅人」
外の世界にバブルの風が襲った頃、聖マリアナ学園にも新たな風が吹き荒れた。とつぜん資産を増やした新興成金の娘三人が転入し、色つき扇子を片手に、権力を一手に握る生徒会に対してクーデターを起こしたのだ。しかし旧態の制度を望む生徒会OGの動きで、彼女たちはあっけなく破れ、三人は行き場を失い読書クラブへ亡命してきた。
「一番星」
読書クラブが一番大人数を誇った頃、部長の加藤凛子を慕っていた、赤面症の山口十五夜が突然変貌。クラブを飛び出したのちに、伝説のロックスター、ルビー・ザ・スターとなって学園中を席巻したのだ。人気が翳りだしたルビーこと十五夜は、これまで慕っていた凛子を中傷した歌詞を歌いだし、さらに爆発的な人気を得た。
「ハビトゥス&プラティーク」
来年には男子校と合併し、少女たちの花園であった学園にも最後の年がやってきた。その最後の読書クラブ員は、ビルが老朽化のため閉鎖され、流民の民となった肥満体型でぬいぐるみのような五月雨永遠ただ一人だった。その永遠が愛読書を真似て、スポーツ感覚で教官室に侵入し、生徒の没収された品物を取り返しては、スリルを楽しんでいた。それがいつの間にか、「ブーゲンビリアの君」と、少女たちの英雄として噂が一人歩きをしていた。
西の官邸と呼ばれ、選ばれし者が権力を一手に握る生徒会。東の宮殿と呼ばれるのが、花形の演劇部。北の新校舎の隅でたむろしているのが、インテリヤクザの新聞部。そして廃墟のビルに巣くう読書クラブは、南のへんなやつ等。とまあ、こんな感じの組織図の中で、聖マリアナ学園で起きた正史では語られない暗黒の歴史が語られる。誰かが主人公というのでは無く、聖マリアナ学園が主人公ともいえる作品。「赤朽葉家」が一番近い作品かも。
読み始めは正直にいって取っ付きにくかったです。ここに出てくる少女たちの話し方が、「ぼく」といった男言葉が普通に使われているからだ。それに読書クラブの部員たちを再三、異端者たちと説明されるが、彼女たちの方が普通であって、その他大勢の方がおかしな存在だから。まあ、この設定には慣れてしまえばいっさい問題は無くなり、存分に桜庭ワールドを堪能するだけ。
閉鎖された乙女の園。そこで起こるのは、女子だけが集まったために発生する、特有の華やかさと陰湿さの数々。これが面白く無いわけがない。特に男性には摩訶不思議な世界が新鮮で、そんなアホなと突っ込みながらも楽しめることだろう。
それに移り行く時代によって、少女たちの考え方や持つ小道具にも当然変化が現れる。そこらも中々リアルであって、読み見応えがある。桜庭一樹は少女を描くのが上手いのである。本書を読むことでまた再確信したのである。それにおもろい。
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