「TOUR1989」中島京子
2007年09月26日 (水) | 編集 |
ツアー1989ツアー1989
(2006/05)
中島 京子

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かつて、迷子つきツアーというものがあった。いわゆるパッケージツアーだが、迷子と呼ばれる客が一人いて、一緒にツアーに参加したのに気がつくといない。迷子の役割は、現地で迷子になることで、ツアー参加者に様々な余韻を残すこと。そして迷子になった客は、少しばかり遅れて無事に飛行機に乗せられる。しかし15年前の香港ツアーで迷子になった人物だけ、ほんとうに戻ってこなかった。

架空のツアーで姿を消してしまった青年。その印象の薄い青年を巡って3人の記憶が交錯し、1人が追います。これは連作になるのかな?

まずは「迷子つきツアー」では、15年前に書かれた香港からの手紙を、凪子は今日受け取った。差出人にさっぱり心当たりがないが、相手の男は凪子のことを知っていて、自分に対して手紙は語りかけている。

「リフレッシュ休暇」では、失職した男が妻の実家への引越作業のさなか、過去の日記を偶然見つけた。そこには15年前の香港旅行について綴られているが、男はほとんど覚えていない。だけどそこに書かれているある青年に心がひっかかって、落ち着かない気分になる。

「テディ・リーを探して」は、お遊びでかつての恋人の名前をネット検索した女性が、自分しか知らないことが書かれているブログを発見する。それは15年前に添乗員をしていた、香港での女性自身の体験談を綴ったように読めるのだが、途中からはまるで記憶にないことが語り始めているものだった。

最後の「吉田超人」は、ノンフィクションライター志望の男が凪子宛の手紙を香港で託されて、凪子だけでなく、その手紙の差出人である迷子になった男の足跡を捜していく。そして全てが明らかになる。

他の中島京子さんの作品が面白かったので、本書を予備知識なく手に取りました。簡単にまとめると、自分の知っている過去と、微妙に違う過去が突然現れる。それは記憶違いではなく、自分しか知らないはずの過去が何者かに歪められている、という居心地の悪さというか気持ち悪さというのでしょうか。そんな「ずれ」みたいなものが全体的に蔓延していて、それらと直接関わりのない男が興味を抱いて調べてみると、不特定多数によって作られた都市伝説みたいなものが現れる、というお話です。

かなり思っていた系統の作品ではありませんでしたが、中々深みがあって面白かったです。ただお薦めはしにくい作品だとは思いました。他の中島さんを読んだ上で、違う雰囲気を楽しみたいのであれば、本書を手にとってみてはいいかも、ぐらいですかね。

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