2007
![]() | サクリファイス (2007/08) 近藤 史恵 商品詳細を見る |
サイクルロードレースでのアシストの仕事はチームのエースを勝たせること。若手の白石誓は、エースの石尾豪を勝たせる六人のアシストの一人に選ばれた。そしてもう一人。若手ながらも実力二番手の伊庭和美は、石尾の座を狙ってレースに向う。レースは各地を転戦して行われる。白井は大阪・奈良とアシストに徹してエースの石尾をサポートする。しかし第三ステージではチームが立てた作戦が仇になり、飛び出していた白井は先頭集団で孤立。最後は自力勝負の末に優勝してしまった。その結果、ステージ優勝どころか、総合でもトップに立ってしまう。その番狂わせのせいで、チームは新人二人が上位に残り、エースの石尾は二十位以下の異状な状態になってしまった。その頃から、白石の耳に石尾に対する不穏な噂が届き始める。石尾は自分以外のエースを認めない。そのためにはライバルを容赦なく潰すと。
この作品はいくら内容紹介をしても、本を最後まで自分で読まなければ、良さが伝わらないだろう。石尾の過去の噂や、尊敬する石尾を信じたい、と心が揺れる白石だが、レースになれば、石尾の勝負へのこだわりに感動を覚えるし、アシストとしての役割に気持ちよさを感じる。
本書は、アシストの役割が理解出来なければ、熱くもなれないし感動も出来ない。だからエースとアシストの関係に触れてみたい。アシストの最大の役割は自己犠牲。風除けになったり、ガードをしたり、アシストは、勝利をエースに託している。途中で疲れて力尽きてもかまわない。リタイアにならない程度の順位でゴールすればいい。エースがパンクすれば、アシストはホイールを差し出す。それがロードレースの定石だ。逆にいうと、エースは非常にアシストを使い捨て、彼らの思いや勝利への夢を喰らいながら、勝利を目指すという重い責任を背負って走る。
これらを踏まえた上で本書を読むと、読者はとてつもなく大きな衝撃にガツンとやられて、本書のすごさに気づいて興奮を覚えるだろう。これ以上は読んで確かめて下さい。ロードレースに掛ける熱い思いと共に、深い感動が心に沁みてくる。とてつもなく壮絶な一冊でした。お薦め!
文庫本にサインをいただきました。

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