2007
![]() | インシテミル (2007/08) 米澤 穂信 商品詳細を見る |
モニターたちはさまざまな思惑を持って応募した。波乱を期待した者。小遣い稼ぎのつもりの者。記述が真実か確かめるつもりの者。そして…。
結城理久彦はコンビニでアルバイト情報紙を見ていた。そこへ声をかけてきたのは、浮世離れした美人の須和名祥子。彼女もバイトを探したいというので、一緒に調べていると、あるモニター募集に目が留まった。
年齢性別不問。一週間の短期アルバイト。ある人文科学的実験の被験者。一日あたりの拘束時間は二十四時間。期間は七日間。外部からは隔離する。拘束時間には全て時給を払う。時給、十一万二千円。
須和名祥子は、本当に時給十一万二千円のアルバイトが存在すると信じて応募した。
結城理久彦は、誤植だと思いながらも車が欲しくて応募した。
集まったモニターは全部で十二人。彼らは「暗鬼館」と名づけられた地下施設で、七日間にわたって、二十四時間モニタリングされることになった。
ミステリ読みのためのミステリといった作品です。前半部分は、施設の案内やルール設定の説明なんかが多くて、中々ストーリーが進展してくれない。その部分を軽く紹介すると、十二人それぞれにある武器が渡されて、人を殺した者や、人を殺した者を指摘すると、ボーナスが出るから好きにやってくれと言われる。結城の場合は火かき棒で、須和名は毒、といった物を手に入れる。その上、あてがわれた部屋は鍵がなくて、いつ進入されるかわからない、という恐怖感を登場人物たちに与える。
そして実験終了は、七日間が経過した場合、隠し通路を発見した場合、生存者が二人以下になった場合、と教えられる。
後はお決まりのサバイバルが始まり、誰かが殺されることで緊張感が高まっていく。そう、ワクワクどきどきが始まります。誰が自分を狙っているかわからない。次は自分の番かもしれない。そこで見られる人間たちの心理描写が面白い。チームを作ってリーダーになる者、リーダーの腰ぎんちゃくになる者、頭の良さを信じて行動する者。猜疑心のカタマリになる者、ただ脅えるだけの者。そしてある含みがある者。様々な人間模様が繰り広げられる中、また一人、殺されてしまう。
悲鳴が聞こえ次は誰だという緊張感、当然出てくる疑心暗鬼、誰がどんな武器を持っているのか、ルールに乗っ取った納得のいかない多数決、敵対視するグループ。
そんな中で、どこかのん気で緊張感に欠ける主人公の結城。ふわふわとして、何を考えているのか捉えることができない須和名。彼らが丁度良いバランスを保っていて、怖くなりすぎないけど雰囲気がある作品、という世界が作られていました。
この作品はラノベの延長ではなく、本格ミステリというジャンルです。だからこれまでのユルイ作品だと思って読むと、エライ目に遭う可能性があります。しかし、ジャンルを知った上で読むのなら、ある作品群を思い出し、懐かしさを感じさせてくれる作品だろう。だけど今の若い子に、「火かき棒」なんてわかるのかな、などと少し思ったけれど、一時期熱中したミステリ読みとしては、面白く読む事ができました。
これまでの米澤さんとは違う、新たな米澤穂信さんが堪能できた一冊でした。
おまけ。またサイン本をゲットしました。

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