2007
![]() | 初恋よ、さよならのキスをしよう (創元推理文庫) (2006/09/20) 樋口 有介 商品詳細を見る |
柚木草平は元警視庁の刑事だったが、ある事件をきっかけに退職し、現在は刑事事件専門のフリーライターとして生計を立てる一方、探偵としても活動している。妻の知子とは三年前から別居状態なので、一人暮らしというのも、「侘しくて、案外にいい」と気ままに過ごしている。妻の元に引き取られた娘の加奈子とは、月に一度顔を合わせる約束になっているが、その約束はほとんど守っていない。
前作「彼女はたぶん魔法を使う」で娘の加奈子と約束した、カモノハシを見にオーストラリアへ行く代わりに訪れたスキー場で、柚木は高校時代の初恋の人・実可子と二十年ぶりにばったりと再会する。かつての柚木は同級だったとはいえ親しく口をきくこともなく、男たちに囲まれている実可子を遠くから眺めるだけだった。彼女は以前と変わらない美貌のまま、高級雑貨店のオーナーをしていたが、それから一ヵ月後、柚木は実可子が何者かに殺害されたことと、彼女がスキー場から帰ってすぐに、「自分になにかあったら柚木さんに相談するように」と、柚木の名刺を娘の梨早に渡していたことを、彼女の姪の佳衣から聞かされた。彼女はそういうことが起こるかもしれないと、一ヶ月前から予測していたのか。柚木は佳衣の依頼を引き受け、かつて実可子と仲良しグループだった同級生たちと、久しぶりに再会することになった。
一言二言多いのではなく、三言四言と余計な口をきく柚木。彼が美女にうつつを抜かしながら活躍するシリーズ二冊目です。シリーズ物の感想は、前作と重複する部分が多いので難しい。いい女とのむふふな会話や、お年頃の娘とのやり取りなどは、前作のところで書いた。だから本書に限っての部分に触れていきたいと思う。
本書のヒロイン・佳衣は、大型のマシン(バイク)を乗り回す二十七歳の女性。大学でサンゴの研究をしている助手なのだが、前作のヒロインほど色気を感じなかった。まあ、個人的な好みですが。柚木との絡みも少なめで、あまり印象に残らなかったのが残念。
今回柚木が追いかけるのはかつて憧れだった同級生の死で、彼女と付き合いのあった同級生四人を疑って捜査していく。だから当然青春時代の思い出を振り返ったり、柚木の過去にも触れる。同級生たちは、大成功している者もいれば、身の程をわきまえて細々と暮らしている者がいる。そんな彼らのいつも中心にいたのが殺害された女性で、この二十年の間に彼らの生活に何があったのか、彼女に対してどういう思いで付き合ってきたのか、という、知っているがよく知らない人物の暗部を探っていく。それによって、表面しか知らなかった人物の裏の顔や、どろどろした内面が見せられていく。自分の中で美化した思い出を、自分の手で崩していくのはかなり怖いことだ。それらを表したのがタイトルの意味だろう。
本書は派手さはないが、自然な流れで読者を飽きさせることなく、最後まで読ませてくれる作品だ。そしてラストには、柚木と娘の加奈子とのとっておきのやり取りが待っている。出番の少ない加奈子ちゃんだが、とても爽やかな余韻を与えてくれる。娘が妻に似た仕草をするのって、父親はどんな思いで受け止めるのだろう。そんな事を思いながら楽しい読書が終わりました。
柚木シリーズ
「彼女はたぶん魔法を使う」
「初恋よ、さよならのキスをしよう」
「探偵は今夜も憂鬱」
「刺青白書」
「夢の終わりとそのつづき」
「誰もわたしを愛さない」
「不良少女」
「捨て猫という名前の猫」
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