2007
![]() | ホテルジューシー (2007/09) 坂木 司 商品詳細を見る |
大学の卒業旅行に備えてまとまったお金を手に入れたい柿生浩美ことヒロちゃんは、友人のサキちゃんと、大学の図書館でアルバイト情報紙とにらめっこしながら、この夏休みのバイトを探す。そこでヒロちゃんの目に飛び込んできたのが、石垣島のプチホテルで一夏働いてみませんか、の文字。結論から言うと、宿の仕事はヒロちゃんに向いていた。しかし、幸せは長く続かなかった。オーナーが世話になった那覇のホテルが人員不足で、ヒロちゃんが応援に行くことになってしまう。そしてたどり着いたのは、コンクリート打ちっ放しの古い雑居ビル。一階にはくたびれた喫茶店兼バーと何かの事務所、それにチラシのベタベタ貼られた旅行社が並んでいる。その何かの事務所に見えた所が、ヒロちゃんの働くことになった、ホテルジューシーだった。
ホテルで働く人たちは、調理を担当している比嘉さんに、掃除係のクメばあとセンばあの双子のおばあさん。そしてヘビメタのような長髪で、昼はまったく頼りにならないが、夜になるとマトモになるオーナー代理。実質的にホテルを切り盛りしていたバイトの松谷さんは、ヒロちゃんの石垣島のリゾート話を聞いて旅に出てしまった。そんな中、大家族の長女でしっかり者ゆえに働き者であるヒロちゃんは、風変わりな宿泊客たちに出会い、お節介を焼いていく。
かつて子供を連れて旅をして、各地でお花見をしたという山本さん。言葉遣いやマナーがなっていない、今風ギャルのユリとアヤ。骨董やアンティークを扱っているという、わけありの田中さん。旅慣れた風を装いたい、自意識過剰の矢田さん。口当りのいい雑誌の文句のような考えで沖縄で屋台をするが、食いつぶしてしまったヤスエさん。当たり前の夫婦の形じゃないが、お互いに愛しあっている久保田さんご夫婦。彼ら宿泊客と接しながら、ヒロちゃんは世間の理を知り、成長していく。
作品のゆっくりした時間の流れは良かった。オーナー代理といい、双子のおばあちゃんといい、信じられないほどいいかげんで、おおらかで、時間がスローな沖縄タイムを過ごしている。それに比嘉さんの美味しそうな沖縄料理や、オーナー代理の昼夜のギャップは面白い。ただ、ヒロちゃんがよくプリプリと怒ってばかりなのが、読んでいて疲れるんだ。人のグチを聞かされるのって、迷惑でしんどいんだよな。これが本書のマイナスポイントかも。
あと、やっぱり比べてしまうのが、ヒロちゃんとサキちゃん。男目線になるが、ここはサキちゃんに軍配かな。もりもり頑張るヒロちゃんも悪くないけど、頼り気ないサキちゃんタイプに男は弱いんだよ。(騙されるな!と声が聞こえそう) それに文句タレはやっぱ嫌。
なんだかんだとヒロちゃん同様に文句をいったが、面白く読めました。だけど個人的な好みは、やっぱり姉妹篇の「シンデレラ・ティース」でした。
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