2007年11月24日 (土) | 編集 |
![]() | 夜が闇のうちに (1996/12) 楡井 亜木子 商品詳細を見る |
前作「チューリップの誕生日」で迎えた結末と直結しているので、未読の方にはネタバレになってしまいます。よってご注意を。
ライブハウスのオーナーである三原さんの一言で、触れたこともない楽器を買い、バンドを組んだこともないのにオーディションを受け、大人たちに混じって仕事と学校の二束の草鞋をはくことになった、十五歳のユーリ。夏休みに入ってから一緒に暮らしていたフジシマに、年齢を明かしたことでユーリは男のアパートを突然追い出された。行き先のない夜を過ごすことになったユーリは、何時にかけてもかまわない、お袋が起きてるから、と三原さんに先ほど渡された名刺裏の手書き番号に頼ることにした。
ユーリは思う。何度か、彼はあたしの進む道を決めている。あたしの前に伸びているレールが彼にだけ見えているように、簡単にポイントを捻ってあたしの生活を変える。今日渡された名刺も、彼が握っているポイントのひとつなのだろうか。そうだとしたら、あたしはどう変わるのだろう。彼は新しい事実をあたしに示し続ける。彼の自宅や、血の繋がりのない母親や二歳の息子や、自分の病気を。深夜に訪れた三原さんのマンションには、別れた妻の義母である日向さんと、彼の息子である慧が暮らしていた。
良い。とにかく良い。カリスマとして一線を越えてはならない三原さんと、大人としてみんなから扱われる女子高生のユーリが、徐々に結びついていく。そして彼の息子や義母とも仲良くなり、マンションへ通うようになる。彼女が持つ感情は恋なのだろうか、憧れなのだろうか。それにユーリの一人称ゆえに、はっきり見えてこない三原の感情も想像するしかないがピュアなのだ。この作品は続編だし、ユーリの心の揺れや二人の関係、突然起こる悲劇によって壊れてしまうあの人、とはっきり書けない難しさがある。それらを伝えられないが、痺れるような時間の流れがすごく心に沁みて、ぐらぐらと心を揺すられてしまった。
ラストは唐突に終わってしまったような印象を持ったが、それゆえに、その後が気になって、あれこれと推測するような余韻が残った。だけど大人っぽいといってもユーリは女子高生。その後にどうなったか、というサービスがもう少し欲しかったのが本音だ。全編は面白かったが、そこだけは消化不良だった。惜しいな〜。
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