2007
![]() | 渋谷に里帰り (2007/10) 山本 幸久 商品詳細を見る |
食品会社に勤めて十年になる峰岸稔は、「はあ、まあ」が口グセの冴えない営業マン。そんな稔が、やり手の坂岡千明女史が寿退社することになり、彼女が担当していた渋谷エリアを引き継ぐことになった。しかし稔にとって渋谷は鬼門。小学校卒業まで住んだ街だが、友達に引越しすることを打ち明けずに渋谷を出てしまい、それ以来、故郷を売った裏切り者と見られるのが怖くて、二十年間近づかなかった。
稔は坂岡の仕事を引き継ぐために、彼女の顧客を一緒に訪問するのだが、そこで彼女に対する信用の厚さが尋常ではないさまを見て、自分には無理だと判断するが、彼女の仕事に対する一生懸命さに触れるにつれ、あきらめずにやってみようと決意する。
これら稔の成長がストーリーの主流になりつつ、鬼門というわりに故郷に毎回郷愁を感じ、向かいに建つビルの屋上に現れる八時半の女に恋をし、椎名課長と子供のようなやり取りをする。内容的には大きな出来事が起こるわけではない。だけど、前向きな姿が気持ち良かったり、惚れた女性を思う姿が愛おしくなる。
そして本書で外せないのが、坂岡の顧客である「ホットパンツ」というお店。最初から最後まで「ホットパンツ」が何らかの形で絡んでくるのだ。他の顧客であったり、再会した同級生であったり、父であったり。こういったユニークな狙いは結構好きだ。でも個人的にはデカチチは好みじゃない。(聞いてないって?)
本書は主人公が普通に仕事をして、普通に恋をして、ただ毎日を精一杯過ごすだけだ。だけどこういう普通は好きだ。汗をかいて働く姿に、知らないうちに元気をもらっているようで、自分も頑張ろうと思えてくる。特別な何かが起こらなくても、ストレートな物語なだけに、読者に自然と清々しさが伝わってくる。
この作品は特別にどこが良かったという部分はないのだが、全体的に面白おかしく読む事ができた。それに、山本作品を読んで文句を書かなかったのは本書が初めてで、すごく良かった。だけど記憶に残るかは別だけど。ははっ、最後の一言は余分だったかな。
この作品を読んで、山本さんのマイベスト作は本書に更新なのだ。そういえば、長編を読むのはこれが初めてかも。
ポチッとお願いします。その一つが励みになります。




comments